雅味近どうで、静裡乾坤大冬の夜

岐阜に来て「雅味近どう」。
何度来ても飽きないお店。地元の人が「今日は無難なお店を選んじゃいました」と恐縮しながら車で到着。
こういう無難は大歓迎。
季節を感じる料理を食べて、師走の気持ちを整理しましょうとウキウキしながらやってくる。

座敷に上がってまず前菜。
四角い陶器のお皿に並んだ小さな壺に、料理が入ってやってくる。
いつも前菜は趣向を凝らした器でやってくることが多かったけど今日はシンプル。
冬の美味をしみじみ味わうのによい趣向。
大きな壺には湯葉豆腐。ねっとりとした食感でとろけながら湯葉の香りや旨味がにじむ。
プチトマトの出汁漬けが彩り添えて、小さなブロッコリの緑も鮮やか。クリスマスカラーだねぇ…、っていってツルンと食べる。
河豚の煮凝り。ミズダコを炙ったモノに青菜の胡麻和え。茹でた牡蠣を醤油に漬け込み仕上げた料理と、どれも味がミッチリ濃厚。体の中に染み入るゴチソウ。冬の味。

お椀が来ます。
水を霧吹きで吹き付けた蓋。
開けると中に黒い蓮根が姿を表す。
鉄鍋の中で焼いていくと、鉄鍋のアルカリ分と鉄分に蓮根が反応して黒くなるんだというのですね。
素材に色をつけるのじゃなく、素材の色を引き出す調理。
オモシロイなぁ…、と思ってカリッと。味は蓮根、噛むと軽く粘っていくのがオモシロイ。

下の四角い豆腐は海老真丈仕立て。
口に含むとエビの香りがフワッと広がる。シットリとした食感なめらか。
柚子の香りに青菜の彩り。薄切りにしたニンジンに分厚いしいたけ。塩の輪郭がハッキリとした汁がおいしく、お腹あったか。
お腹があったまってくるとどんどんそれが食欲になっていく。食べる準備が本格的にできあがる。

刺し身が来ます。
これまた四角く深い器に刺し身が並ぶ。
河豚を炙ってちり酢をかける。紅葉おろしと刻んだネギで彩り、風味を添えて味わう。
ゴリゴリとした食感に強い旨味にうっとりします。
カレイの刺し身。
ムチムチとしたエンガワに、ブリブリ、たくましい噛みごたえがおいしいカレイ。
中トロを炙ったものの三点盛りで、わさびたっぷり。脂の強い魚をおいしく食べさせる。
料理をすべて食べると書が描かれている。「静裡乾坤大(じょうりけんこんだいなり)」と、菜根譚の一節でしょうか。静けさの中にある別世界。乾山省春と続いてかかれて乾山焼きなのかしら…。こういうことが不勉強にて、料理を学ぶと同時に食器も学ばなくちゃな…、って思ったりする。

あんかけ饅頭。
ココの名物料理のひとつ。
柚子の香りをつけた芋の饅頭の中にカニのほぐし身を入れ、屑のあんをたっぷりかける。熱々。あんがとろけて、饅頭自体もとろりとろける。
体も気持ちも、とろけるおいしさ。
それにしても出汁がおいしいって日本料理においては大切。
あんが口の中でとろけてユックリ出汁に戻っていく。その瞬間に香りや風味がハッとするほど強烈になる。ゴチソウです。味わい深い。

続いて焼き物。焼いたサワラの周りに料理をちらした吹き寄せ風。
さつまいもの蜜煮にくわい。カリッと揚げて芽から味わう。
くわいと言えば、おせち料理くらいでしか食べない食材。一足先に正月がやってきたような肝心パクリ。ボソボソとした食感と軽い渋みに年末感じる。
酢漬けの蓮根。もずくの酢もので口をスッキリさせてやる。焼いたサワラはねっとりです。皮もねっとり、身もねっとり。サワラ独特の海の香りを味わい、食べる。

小鍋の準備ができてきます。固形燃料の器が置かれ、紅葉おろしにネギにレンゲ。とんすいが来て、鍋が到着。
すでにほとんど出来上がっていて、蓋は熱々。
固形燃料に火をつけ蓋をとると、中はあんこう鍋でござんした。

どっしりとした白味噌の汁。中にあん肝が混ぜ合わされていてあん肝独特の香りや旨味が味噌と一緒になって濃厚。
ふっくらとしたあんこうの肉。ヒレの周りはブルブルとしたゼラチン質と皮がとろけて、唇同士が貼りつくおいしさ。骨を摘んでしゃぶってたのしむ。
クタクタに煮たネギはあまくてスベスベツルン。あん肝がぽってり舌にのっかってとろけていくのもまたオゴチソウ。

小鍋が濃厚味だったからでしょう。〆は土鍋ご飯に汁、そしてお新香とシンプルに。
ココの〆といえば炊き込みご飯や雑炊、あるいはアオサのあんかけご飯と多彩。どれも趣向を凝らしたモノであるのだけれど、今日は白飯。ズッシリとした分厚い土鍋をテーブルの上にドンッと置き、おかわり自由でたのしんでという、気軽な感じもいつもにはないオモシロさ。
…、で、土鍋ご飯が惚れ惚れするほどおいしかった。スベスベしていてシットリで、ところが口の中で蒸気が取れていくとパラリとちらかり、香りや甘みを吐き出していく。ご飯自体がおいしければ、おかずはいらない。ただただそれだけ食べてお腹を満たしたくなる。悪くないなぁ…、と思ってお代わり。季節の果物でお腹に蓋して夕食終える。寒い夜でもあったかい。

 

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コメント

  1. 岐阜に来て見えたのですね!
    「雅味近どう」と言う店は知りませんでした・
    機会があれば一度行きたいですね!
    近くに職場がありましたので地理は分かります!

    • サカキシンイチロウ

      市さん
      お昼は気軽な値段で日本料理が頂ける店。もう何度も通っていますが、いつも満足させてもらっています。
      岐阜は月一で伺っていて、東京の次にもしかしたら詳しくなっちゃったかもしれません。

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