銀座のウエスト

ボクが住んでいる四谷三丁目から丸の内線に乗れば銀座のウエスト本店。
都バスにのると青山の店とどちらも乗り換えいらずの便利な場所ではあるのだけれど、丸ノ内線は3、4分おき。一方の都バスの方はというと一時間にせいぜい一本。気軽にいける銀座のお店を贔屓にしていた。
とはいえ青山のお店の特別は特別。都心と思えぬ緑豊かな環境と、ゆったりとしたサロン仕立てのお店のしつらえ。おだやかさとうやうやしさに満たされた、ここでなくては味わうことのできない贅沢をたのしむためにワザワザたまにやってきていた。
実は先日、丸一日ノースケジュールの日があって、しかもバス停にちょうど青山行のバスがやってきた。車窓の変わる景色をながめていたら、テラス席で食べたパンケーキのことや、ガラスのポットの中で踊るハーブティーのこと。ごきげんな仲間にいつも必ずいてくれたタナカくんのことが次々思い出されて、結局乗り越し折返し、家に帰って早く寝た。

青山サロンの思い出に心置きなく身を任せるにはもうちょっとだけ時間が必要。代わりに銀座にやってくる。
ソファのカバーもテーブルクロスも眩しいほどに真っ白で、パリッと糊がかかって手触りもよい。いらっしゃいませの笑顔と一緒に氷の入ったお冷のグラス。グラスの上にお店のトレードマークの天使が舞います。竹を編んだカゴに分厚いタオルのおしぼり。いつも通りがいつものように守られてることにホッとする。さぁ、ココロをキラキラはずまそう。
アイスコーヒーとサンドイッチをお願いしました。
ススっと伸びたグラスに天使の箔押しが舞い、銀のマドラー。クリームとガムシロの入った器には磨くときについた細かな傷がびっしり。

サンドイッチはBLTを選びました。
よく焼ききれた表面がカサカサになったトーストブレッド。
分厚いベーコン、ちぎったレタスに熟したトマト。
名前のとおりベーコンレタストマトでできたサンドイッチ。調味料は薄塗りのマヨネーズだけで、あとは素材同士の持ち味で十分味が整うステキ。
特に今日のトマトはおいしくびっくりしました。酸っぱく甘く、すっぱすぎず甘すぎず。みずみしいけどみずっぽくはない。パンに挟まれ他の素材と一緒になってソースのようにふるまう感じがなんとも贅沢。おごちそう。搾り器に挟まれたレモンは、皮の黄色い部分が丁寧に剥かれてて、ギュッと搾っても皮の苦味が出てこない。普通の店なら「ただの付け合せのレモン」でしかない月切りレモンまで料理になって出てくるところにまたうっとり。

アイスコーヒーのクリームは乳脂肪分たっぷりで、これまた上等。
そっと注ぐと氷の上にのっかってしばらく漂う。それがゆっくり自分の重さで沈みつつ、コーヒーとゆっくり混じる。せっかくだからミルフィーユを作ってもらって〆とする。
お皿の上にサクサクのパイ。カスタードクリームをたっぷり絞って上にパイ。粉糖をかけできあがり。ホイップクリームといちごをサイドに添えて彩りうつくしい。パイにそっとナイフを当てる。脆そうにみえて崩れずサクッと切り分けられて口に運ぶとバターとバニラの香りがフワッと鼻から抜ける。
粉糖がシュワッととけて口の温度が瞬間あがる。噛むとザクッと壊れて崩れ、口の中にパイが散らかる。ぽってりとしたクリームが崩れたパイのかけらを集めてゆっくりとろける。パイの上にホイップクリームにいちごをのっけてパクリと食べると、口の中で小さなナポレオンパイが出来上がるのが、またうれしい。

 

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