まだまだ続くよ、とんかつ鈴新

ランチを四谷三丁目。家の近くのオキニイリのあの店でしようとやってきてみる。ところが満席。しかも行列。小一時間は待ちそうな気配があってあきらめる。
そのまま通りをテクリと歩き、「鈴新」というとんかつ専門店に気持ちを移した。
公園の角にぽつんとある小さなお店。カウンターだけ。中に厨房。カウンターからっ客席側に出るときはお勝手口から一旦、店の外に出て正面玄関から入ってこなくちゃいけない。それほど小さく、店の中にはギッシリ厨房、椅子が置かれているお店。

地元に根ざしたお店で、ときおりお店の中で寄席を催したりする。
お客様も地元の人が中心で、今日は満席。
ちょっと待つ。
最近、四谷三丁目の荒木町エリアは町ごと人気のようで、通りにもそぞろ歩きの人多数。

ラードを混ぜた油で揚げる、昔ながらのとんかつ屋さんです。
ロースにヒレ、エビフライやコロッケ、メンチ。アジのフライと定番メニューはしっかり揃う。
けれど一番人気は「かつ丼」で、しかも3種類。
カツを出汁で煮込んで玉子でとじた「煮カツ丼」。揚げたとんかつをご飯にのせて上から出汁で固めた玉子をのっける「かけかつ丼」。
味付けはおなじなんだけど、カツの食感が違ってまるで別の料理のように感じてオモシロく、いつも大抵、どちらか食べる。
今日はもう一種類の「おろしかつ丼」を食べてみようと、初挑戦。
他のかつ丼は陶器の丼。これは塗りのお重でやってくる。蓋の裏側には「鈴新」とお店の名前が箔押しされてて、かつて真剣な専門店の器というのはそういうものだったんだよなぁ…、ってしみじみ思う。

ご飯の上に千切りキャベツ。一口大に切り分けたロースのカツにウスターソースをかけまわし、上にたっぷり鬼おろし。シンプルなんだけど、これがおいしくビックリします。
ウスターソースがいいのですネ。旨みと酸味、辛さと風味が独特でラード油で揚がったとんかつの甘みをひきたてさっぱりさせる。とんかつソースのように甘みがないのが、肉や衣の味をはっきりしてくれる。
ウスターソースってどこか醤油に似たところがある。洋食向きの醤油=ウスターソースかもしれないなぁ…、なんて思ったりもした。
ザクザク壊れて、口の中をみずみずしくする鬼おろし。キャベツもザクザク。熱々ご飯の熱で徐々にしんなりしてきて、甘みがやってくるのもたのしい。

出汁がしっかりきいたとん汁。
豚バラ肉がたっぷりはいって、溶けた脂が蓋をしている。だから熱々。
フウフウしても唇焼いて、舌焼いて、喉も焼きつつお腹に入る。その熱々がずっと持続するのもステキ。

追加でカキフライを揚げてもらった。一個単位でたのめるというので、どんなんだろう…、って思って待って、来たのがどっしり、大きな牡蠣。細かなパン粉をびっしりまとわせ、かなり頑丈に仕上がっている。
レモンを搾ってマヨネーズ。カプッと噛むとザクッと衣が歯切れて壊れ、中はトロリと牡蠣がとろける。これだけ大きな粒の牡蠣だけそろえてフライにするというのが立派と思う。冬の味。マカロニサラダもまた旨し。

友人は煮カツ丼を選んで食べた。
甘めのタレ。
玉子を完全にときほぐさずにとじている。
だから白身の部分はプルプル。
黄身はふっくらと玉子の違った食感がたのしめるのがいい感じ。
玉ねぎたっぷり。
それがシャキシャキ、出汁がしみたご飯もおいしい、オキニイリ。

ところでこの店。ご主人、奥さんの2人でずっと切り盛りしてた。
5年ほど前、二代目さんがお店で働きはじめたときは、「後継ぎが出来ました」とお店の中に貼り紙出すほどご主人、奥さん、喜んでいた。
ところがいつしかその息子さんの姿が見えなくなっちゃって、どうしたのかなぁ…、とちょっと心配しておりました。
そしたら今日。その後継ぎさんがお店に戻ってお父さんと交代で料理を作っているではないの。「うちの新しい社長ですから…」と、おなじみさんに紹介をするお父さんの声にハリのあるコト、そしてそれ聞くおかぁさんの笑顔の明るいことにニッコリ。
新しい料理やお店を発見するより、新たな跡継ぎさんに遭遇することがむつかしい今の時代にあってステキな出来事。これからも贔屓にしようと思う昼。

 

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