笹巻けぬきすし総本店

朝の仕事が昼ご飯にはちょっと早めの時間に終わり、せっかくだから「けぬきすし」によってみましょう…、とやってくる。
正式な名前が「笹巻けぬきすし総本店」。いささか仰々しい名前ではある。けれど創業なんと1702年。元禄15年というから赤穂浪士の討ち入りの年。しかも江戸前の寿司の原型ともいわれる「毛抜き寿司」を今に伝える由緒正しい店でござんして、店の構えもさすがの風格。
朝早くからやっていて、やってきたらすでに折り詰めがカウンターの上にズラリと山高く。それをとりにくる人たちが引きも切らない忙しさ。

魚を寿司にするにあたって、小骨があると粋じゃない。
それで小骨を毛抜きで一本、また一本とキレイに抜いて仕上げるさまをこりゃ、風流と。
それで「毛抜き寿司」となのるようになったという言われ。
冷蔵庫などない時代。
なるべく長持ちさせようと、ネタは酢じめでご飯も酸味を強くきかせて防腐効果をもつ熊笹の葉っぱでくるんだ。それで「笹巻」。
お江戸の知恵がいまでもこうして脈々と受け継がれているところに日本の食の凄さをしみじみ感じる。

テイクアウトの商品も、お店の中で食べる料理も基本は同じ。
ランチタイムにはばら寿司のような特別料理もあるけど、今日は一番一般的な盛り合わせ。
寿司が7巻。
汁がお供についてきて、ランチ用に炊いたんですがと煮物の小鉢がサービスできた。笹の葉っぱの青い香りがすがすがしくて、外の暑さを忘れるステキ。
汁の入ったお椀の蓋を開けると目が合う。
キラッと光る鯛の目でした(笑)。こんがり焼いた鯛の頭の風味と旨みを味わう趣向の潮汁。豆腐がトゥルトゥル、喉を滑るようになめらか。出汁もしっかり聞いていてお腹をなでるようなおいしさ。

寿司のネタは鯛、おぼろ、卵、海苔、海老、光り物、白身魚というのがおきまり。
季節によってちょっとずつネタは変わるけど、鯛とおぼろ、玉子、海苔巻き、エビは季節を問わずおんなじ。
今日も酢でしめられて真っ白になった鯛の身。
ムッチリとした立派なエビに甘いおぼろと次々味わう。

砂糖をほとんど使わずお酢と塩で仕上げたシャリがかなり酸っぱくて、でもただ酸っぱいだけじゃなくてネタの旨みをしっかり引き立てる。
実は若い頃にこの店にきたとき、「なんじゃ!」とビックリしました。
酸っぱいだけでやっぱり昔のままじゃ料理はダメなのかな…、って思ったんだけど、年をとるとこういう料理がおいしく感じるようになる。

ひと味足りない。だから足りない味を一生懸命探るのです。探った先に酢じめの鯖の脂の甘みや、エビの旨み。鯛のコクを感じて欠けてる味を頭のなかで組み立てたのしむ。だから食べてて飽きることがない。
卵焼きの玉子の匂いは鮮烈で、2つの海苔巻きの一つはアサリ、ひとつはかんぴょう。どちらも塩が強くて汗をかいた体の薬…、って思って味わう。笹の葉の香りも鮮やか。魚を食べているのにまるで魚臭くなく、食べ終わった後の指を匂ってみても不快な匂いがまるでない。お江戸の粋にウットリしました。おごちそう。

 

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コメント

  1. nt

    うわぁ 丁度 重松清氏の「ファミレス」という小説の中に出てきて、どんなものなんだろと思ってました。だから サカキサンのBlogはダイスキです。

    • サカキシンイチロウ

      ntさん
      なんと、そうなんですね。ひさしぶりに来てみようと思って、その空気感やしつらえ、そしてなにより商品が変わっていないコトに感心しました。

  2. あや~ん

    けぬき寿司のおぼろと卵と甘くないかんぴょうは大好物です。無限ループのように食べられます(笑)
    できてから7時間経ったくらいが一番おいしいと思うので、お出かけ前に買って、出先で食べようと思うのですが、その前にお腹の中に入っちゃいます。お寿司の箱を立てて持ち歩いても型崩れしないので、そこもまたいいなぁ、と思ってしまいます。

    • サカキシンイチロウ

      あや〜んさん
      無限ループのようなおいしさ…、わかります。志乃多寿司の干瓢巻を食べ慣れていると、まるで違った料理のようで、一瞬口がビックリしますが、たしかに無限に食べられちゃいます。
      7時間はガマンできないですねぇ。
      この日は20人前をお土産でかい、それが整うまでご自身はしっかり一人前を食べてかえられたカクシャクとしたおじぃさまがいらっしゃった。かっこいいなぁ…、と思いました。

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