祝うべき人が逝って最初の誕生日、寿司を喰う

ss counterL1240208今日は父の誕生日。
祝われるべき人がいなくなってはじめての今日。
父の好きだったものを食べて今日を祝おう…、と、それで寿司清。
新宿、伊勢丹会館の中にあるほどよく上等な寿司の店。
お盆休みはまだ終わってないというコトでしょうか、新宿の街はいつもに比べて静かでそれで、カウンターが開いていた。
偶然ながら父と最後に一緒に来たとき、座った席と同じ席。なんだかじみじみうれしくなった。
冷たいお茶をお供にもらう。ココでは冷たい緑茶のコトを「アラスカ」という。それを知って「アラスカください」と一度言ったら、それは粋じゃないからやめなさいと父に注意されたこと。おあいそだったり、むらさきだったり、お店の人の身内言葉を知ったかぶりして使うのはお客様としてののりを超えた無粋なコト。いろんなコトを教えて貰った…、ってニッコリします。

ss kairuiまずは貝を食べることにする。
今日の回の品揃えは?と、聞いたらいろいろ。
いちいち覚えるのも面倒くさく、「ひとおりくださいな」って注文。
片っ端から食べることにする。

まずは赤貝、それからつぶ貝。ネロンでクニュクニュ。食感なめらかな赤貝に、ゴリゴリ砕けて噛むととろけるつぶ貝と、貝のおいしいパレードはじまる。
それからホタテ。
分厚い柱を横にではなく縦に切る。切った形は長方形で、それをキレイに寿司に仕立てる。歯切れが良くなる。横に切るとネットリ歯茎にまとわりつくけど、縦に切ると貝の繊維がザックリ歯切れる。同じ貝でも切り方次第で食感、味が異なるたのしさ。
今日一番のおすすめが「イシガキ貝」。
トリガイの仲間なんだという貝で、ツルンとスベスベ。しかも甘み、旨みが強くてビックリ。

ゴリゴリとしたミル貝の軽い渋みにウットリしつつ、北寄貝の酸味を帯びた苦味と旨みに舌鼓。
それからアオヤギ。
田舎じゃずっとバカガイと読んでいた。バカみたいに採れるからだとか、バカみたいにいつも口をあけて舌をベロンと出してみたいに見えるからとか。あるいはバカがハマグリと勘違いして喜ぶからとか、名前の由来は散々で、けれどアンモニアっぽい独特の香りと豊かな歯ざわり、そして味わいはバカ独特のオキニイリ。大きめ、しかも粒の揃った小柱の軍艦巻きは口の中を転がるたのしさ。海苔の香りもまたおいしくて貝ひととおりをしめくくる。

ss edomae貝を堪能したあとは、江戸前の部(笑)。
マグロの赤身をにぎってもらう。
表面を波型にきり、口の中に触れる表面積を最大にしたマグロの赤身はネットリ。
軽い酸味とさっぱりとした上等な旨みが口にひろがっていく。
マグロは赤身に限るというのが、父の口癖。トロの脂はおいしすぎるから粋じゃないな…、と。
何事にもすぎるというのが嫌いな人で、けれど「食べる量」に関してだけはいつも過ぎてた。寿司を二人で食べに行くと20貫目くらいからやっと寿司を食べてる気分になったもの(笑)。
今では随分、控えめ量になりました。

それからゆでダコ。噛めば噛むほど味わい強くなっていく。若い時には好きじゃなかった。けれど最近、どんどんおいしく感じるようになった寿司ネタのひとつでもある。寿司ネタだけじゃなくてそういう料理がたくさんあるなぁ…、歳と取るとはおもしろきこと。
今日のコハダはシンコがちょっと大きくなった程度のサイズ。むっちりとした歯切れ感と、ムワッと喉がいがいがするようなとろけ感。弱めの酢締めがコハダ自体の味をおいしくしてくれる。

ss ebiss anagoココにくると必ず食べてた父の好物。
大きなエビを茹でてもらってにぎってもらった。
頭のついた大正海老で、ついさっきまで活きていた。それを茹でてしばらくやすませ粗熱をとる。
殻をむき、お腹を割いて開きのばしてシャリと合わせてギュッとまとめる。
海苔で帯をつけたらスパッと2つにきりわけ、どうぞとやってくる。
ムチュンと歯切れる。
歯ごたえ頑丈、たくましく、噛めばじんわり甘みが広がる。シャリはほんの少しの分量でだからただただ、茹でたエビを味わっているような感覚。ウットリします。

それから穴子。塩とタレで一個づつ。
こんがり焼いてやってくる。
塩の方にはゆずの皮をおろし金でおろしてたっぷり。タレは甘み控えめのさっぱりとした醤油だれ。
口の中でほどける味わい。ポッテリとしてなめらかで、シャリと混じってトロリとろける。塩のにぎりは穴子の脂の旨みを感じ、タレの穴子は香ばしさ。同じ素材が味や風味でこれほど違った料理に感じる。オモシロイなぁ…、オモシロイ。

ss susi他にも気になるネタをあれこれ。
今日は不思議と食欲満点。ショーケースの中の魚をみんなもれなく食べ尽くしたくなる衝動にかられてしまうほどにゴキゲン。

そうそう、ズワイの足を握ってもらうのが好きだったんだとそれもたのんだ。
ボクはあんまり執着しないネタのひとつ。
カニの季節にはこれに味噌を塗ってもらって食べてたなぁ…。甲殻類が好きだったから、医者にあんまり食べちゃいけないと言われても隠れて随分食べていた(笑)。バッサリ口でほどけるカニの繊維の食感。海の旨みに塩の味わいとやっぱり旨い。

薄切りにしてそれをかさねて握ったしめ鯖。強めの酢締めでシャリとからんでスッキリ、多めのわさびがツーンっと鼻から抜けて甘みに変わってく。
イカをにぎってもらったら、これがとても丁寧な仕上げ方。
細かく包丁をいれて炙った松かさ作り。ネットリとして甘みタップリ。これほどとろけるイカはかなりのひさしぶり。そろそろ〆にいたしましょうか。

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赤貝の紐とキュウリでヒモキュウ。それから中トロを芯にして巻いてもらった中トロ鉄火。
どちらも父と一緒に寿司を食べるときには〆に食べてたオキニイリ。
トロを刺身や握りで食べるのが好きではなかった父も鉄火は別物で、ドッシリとした脂の食感、味わいは海苔でくるんでこそおいしい。しかもキュキュッとキツ目に巻いて、だから口の中でバッサリほどけて一瞬散らかりそれがゆっくりひとつにまとまる。
お腹の中で父がよろこぶお昼でござった…、甘い卵焼きでお腹に蓋して席を立つ。

 

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コメント

  1. すうさん

    お父様のお誕生日は16日ですか?
    私は15日なんです。この時期飲食店はお休みが多くて、お寿司や和食は特に・・。だから絶対やっているホテルのレストランでお食事になってしまいます。ホテルも楽しいですけどね(^^♪

    • サカキシンイチロウ

      すうさん
      どこで食べるか、何を食べるかよりも「誰と食べるか」が大切な食事ってありますものね。
      父が横にいてくれるようなそんなたのしい食事の空間。しみじみたのしみました。

      獅子座の生まれでらっしゃるんですね。正義感が強くて情熱的。夏のような性格の人が多いといいますよね。父もそういう人でした。

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