白河そばでぶっかけ中華、豆腐飯付き

思い立って「白河そば」。牛込柳町という街にある店。
家の近所といえなくはない。けれど電車の路線がことごとく外れていこうと思うとかなり時間のかかる場所。
1時間に一本程度のバスを待つか、歩いて行くか。
実はこの店の近所に住んでいたことがあった。当時は交通の便が本当に悪いエリアで、最寄り駅までもれなく15分ほどかかってしまう。でも最寄り駅が5つあるという陸の孤島で、今では地下鉄の駅が近所にできはした。
でも便利というには程遠く、あるのはお寺と昔からある住宅ばかり。こんなところでよく商売をしようと思った。しかも立ち食いそばという「ついで衝動」に対応するのに適した業態。はじめてきたときはびっくりしました。

親父さんが一人でやってる。
白髪に髭。長い髪を後ろに束ねた強面なんだけど陽気でやさしいおじさん。
朝早くからお客様でにぎわっていて、タクシーの運転手さとかルートセールスの営業マンとか。なるほどお店の前の通りはかなり忙しい生活幹線。移動のついでにふらりと立ち寄るのに便利な場所ではあるのでしょうネ。

ぶっかけ中華に豆腐飯。
麺は並盛り、豆腐飯のご飯は小さなサイズでたのんで朝のたのしいひと揃え。
ぶっかけ中華には何かトッピングしましょうか?って聞かれてならばと「きざみ」を選ぶ。
中華麺を茹がいてザブザブ、冷たい水で洗ってしめる。
ザルで水気をちゃっちゃと切ったら丼の中に移して上に具材をはります。
まずは刻んだ油揚げ。わかめをたっぷり、出汁をとったあとの昆布を細く刻んだきざみ昆布。そこにペットボトルの中に入れ、氷に沈めて冷やしたタレをとくとく注いで、最後に天かす、きざみ海苔。
ひんやりとしてバッサリはぎれ、ザクザクバサバサ、口の中を散らかるようにする中華麺。唇を撫でて口に飛び込んでくる勢い良さとツルツル感は蕎麦にもうどんにもないたのしさで、ずっとちゅるちゅるしたくなる。

肉そばや牛丼がおいしい店でもありまして、そのため炊いた肉の煮汁に漬け込み煮込んだ豆腐もうまい。
ご飯にのっけて山椒の粉をたっぷり降る。刻んだ海苔にゴマをぱらりと散らした豆腐飯。
小さいサイズで作ってもらう。
「小」とは言え、お椀の中にギッシリご飯が詰め込まれ豆腐もどっしり。うれしいボリューム。

豆腐を割ると中までしっかり煮汁の味が染み込んで芯まで色黒。
水気をかなり吐き出してサイズ以上にどっしりしてる。舌に重たく噛んだ感じも肉々しい。
料理を受け渡すところの横にたくわん、小梅に紅生姜とおいしくたのしむお供が用意されている。その紅生姜をのっけて食べると、不思議なほどに牛丼みたいな味がするのがまた面白い。
ちょっと酸っぱく、カリカリ奥歯にたのしいたくわん齧りつつ汁をごくりゴクリ味わう。

汁は和風の出汁と塩、風味づけの醤油で仕上げたさっぱりとした味わいで、鼻から抜ける小麦の香りや麺の食感は中華そば…、なのに味は日本そば的不思議な味わい、おもしろい。
カウンターにラー油が置かれて、それを数滴垂らしてやります。すると途端に冷やしたラーメンみたいになって、人間の味覚のほとんどは匂いで決まっているのかもな…、って思ったりする。甘辛味のキツネではなく、茹でて絞った油揚げを細く刻んだきざみに汁が吸い込み味が整うステキ。油の風味がオゴチソウ。味のノリが悪い中華麺に味をしっかりのせるためかなぁ…、ちょっと味が強くって全部飲まずにちょっと残した。心残りな朝のこと。

表にでたらちょうどできまで行くバスが近づいてくる。
それに乗る。
市ヶ谷経由、新橋に向かって走る小さなバス。
車窓の景色がなつかしい。

そういえば、近所に住んでた時には知らなかった。
当時はご近所さんを大切にせぬ、新しもの好きな外食スタイルで生きていたから。

そこを引っ越すその日の朝。牛込柳町生活最後の朝食をここでたまたまとったときに「なんでもっと早くこなかったのか」としたたか後悔させられた。これからずっと大切に…、って思ったりした。晴れの朝。

 

関連ランキング:立ち食いそば | 牛込柳町駅若松河田駅早稲田駅(メトロ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。