珈琲アロマ、浅草尾張屋で松茸そば

寒暖差激しい秋の入り口。浅草に来る。
今年のはじめに出会って忘れることができぬ魅力に、今日も惹かれて「珈琲アロマ」。
カウンターだけの小さなお店。
背筋のちゃんと伸びたシニアマスターが笑顔で中に立っている。ご機嫌な浅草マダムや下町ダンディーと洒脱な会話をたのしむ空気に、地元に根ざしたよき店を感じてニッコリ。
珈琲アロマという店名ではあるけれど、昔からここに通っているという友人にジュースがおいしいから絶対飲んで…、と教えてもらっていちごジュースを選んでたのむ。ブレンダーミキサーにイチゴに砂糖、ミルクに氷を入れてジャジャッと作ってくれる。ぽってりとした飲み口はとても贅沢。甘みほのかでイチゴの酸味がおいしく飲むごとにお腹がすっきりしてくるステキ。

お供にチーズトーストを作ってもらう。小ぶりの食パンをトースターでこんがり焼きます。途中でポンっと取り出してひっくり返して焼きムラなきよう仕上げる配慮。焼きあがったらバターをたっぷり塗り込めて、チーズをのせて出来上がり。
お腹を満たすためではなくて、飲み物をおいしくたのしむためのスナック。130円という値段も粋です。
マダムとマスターの会話があまりにたのしくて珈琲たのんでぼんやり時間を無駄遣い。酸味控えめでサラッと飲めるやさしいコーヒー。お腹にポッと火を灯し、この小さな宇宙のような空間をずっと守って来た人たちの人生思ってあったまる。

 

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秋の気配を感じると思い出すのが「松茸そば」。
東京でも数軒しか扱う店はなくって、例えば淡路町の神田藪が有名だったりする。松茸を焼いてすだちと一緒に味わう蕎麦前も用意されていたりして、それは贅沢。でもオキニイリはここ、浅草の「尾張屋」のもの。
中秋の名月の頃にははじまるはずで、それでどうかとやってきてみる。
お店の前のショーケースに、今年も「松茸そば」のサンプルを見てウキウキしながらお店に入る。
本当に単純な料理です。熱々のかけそばの上に薄切りにして出汁で軽く煮た松茸をのせただけ。
器は分厚い蓋つきで、蓋をとった瞬間にフワッと松茸の香りを鼻をくすぐってもうそれだけでしあわせになる。

甘めのつゆです。
松茸に自然に味がのってサクサク前歯で繊維が切れる。熱が入ると若干ねっとり表面がして、軽い渋みが出汁の旨味のコクになる。
蕎麦はスルンとなめらかで、そのなめらかが松茸の繊維の歯切れを引き立てる。
出汁の酸味が口はすっきりし続けて飽きず松茸の風味を存分、たのしめる。

修学旅行の生徒さんたちが次々、お店にやってくる。学校の先生に浅草にいったらお江戸の蕎麦を食べてらっしゃい…、と言われたようで、これも大事な文化の学び。お勉強。どこから来たのかお国言葉で推察しようとしたのだけれど、訛り少なくわからなかった。東京の街で緊張し標準語を使っているのか…、それともお国言葉をしゃべる若い人が減っているのか。多様なことは素晴らしいこと…、なんだけど。

あっという間に器の中は汁だけになり、それをゴクリ、ごくりと飲んで余韻をたのしむ。刻んだネギはせっかくの香りを壊してしまいそうで使わず仕舞いで食事を終えた。
初物を食べると長生きすると、昔の人は言うけれど季節のものには特別な力があるという以上に、季節を意識した生き方自体に長生きさせる何かがあるに違いない…、って思ったりする。いつごろまで松茸そばはありますか?って聞いたら、これだけはお天道様と市場次第で明言できず、でも今年は例年よりも長く楽しめるかもしれませんね…、ってうれしい返事。機会をみつけて松茸丼を食べに来なくちゃ…、にんまりとする。雨が降る。

 

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コメント

  1. 食欲

    シンプルなチーズトースト、すごくおいしそう。こちらは何のチーズなんでしょう?ハードタイプなのか、それともプロセスチーズなのか。この溶けてない感じがいいです。サクッとふわっとしたトーストと歯ごたえのあるチーズ、絶対おいしい組み合わせ。
    日本にいた頃は大人になってから出会った、溶けるチーズやら、カマンベールチーズやら、クリームチーズやらをありがたがっていたけれど、いわゆる昔からある6Pみたいなプロセスチーズっておいしいですよねー。のりで巻いたらビールのお供に最高!
    でもこれアメリカにはないんですよねー。基本ナチュラルチーズで、プロセスチーズといえばアメリカンチーズという名の、オレンジ色のスライスチーズ。よくハンバーガーに挟まって溶けかかってるやつ。サカキさんはご存知だと思いますが、これまずいんですよね。なんとなく甘味があって、原材料を疑う感じのできあがり。。。
    日本は今や空前のチーズブームのようですが、あんなに何にでもに溶けるチーズを入れておいしいのかしら、といつも思って見ています。量も多ければ多いほどいい、みたいになってますが塩からくないのかしら。何事もほどほどがいいのにね。

    • サカキシンイチロウ

      食欲さん
      昔懐かしいプロセスチーズでした。
      噛むと前歯に貼り付くような食感で、熱々のトーストの上で若干、やわらかくなるものの溶けたりしない男気あふれる頑丈さ。
      おっしゃるようにアメリカンチーズはいかんですね…、ケミカルな感じがする。もったりとしてずっと口の中に居座る感じ。多分、お腹の中でも最後まで消化されずに残っているんじゃないかと心配になっちゃったりします。
      プロセスチーズは偽物で、ナチュラルチーズじゃないと駄目…、みたいな風潮も厄介だなぁって思います。ロッピーチーズの磯辺巻き。ひさしぶりに食べたくなっちゃいました。

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