東京にあって仙台な利久

東京駅の利久で牛たん。朝ご飯。
駅の丸の内側と八重洲側をつなぐ地下通路。人通りの多いメインストリートからちょっと入った脇道的な通路に面した小さなお店。昼以降はいつも行列。でも朝食時間はのんびりしていて、すんなり入れる。
手軽な値段の朝専用の商品もある。麦とろ定食であったり、玉子かけご飯やカレーとどれも牛たん焼きとは直接関係のない料理ばかりで、グランドメニューの牛たん定食をたのむ人も少なからずいる。
東京駅という場所柄でしょう…。インバウンドの人たちはかなりの確率で牛たん定食。今朝はボクと続いてやってきたおじさんが続けざまに「極み定食」をたのんで厨房が朝からいきなり大忙し。

そのおじさんが質問します。
利久は仙台のどこにあるの…、と。
どう答えるんだろうと聞いてたら、創業のお店は泉って街にあるんですよ。仙台駅からはちょっと遠い郊外の街。
駅から近いお店だと仙台駅とか名掛丁とかにもあるんですよ…、と。
答えたのはいつも朝に見かける女性のスタッフでした。
あぁ、仙台出身の人なんだなぁって思った。
もしかしたら、仙台からこの店に派遣されてる人かもしれない…、って興味津々で聞いてたら、おじさんが具体的な地名を言って、そこの近くにもあるんですか?と突けます。
すると、私も仙台出身じゃないものですから詳しくはないんですよ…、と店舗リストが書かれたリーフレットを持ってきてお客様と一緒に調べる。

おやおや、東京で現地採用の人だったんだ…、とまずはビックリ。しかもその人、店舗リストを説明しながら、こう続けます。「いつか仙台のお店で牛たんを食べたいな…、って暇があると見てるんですよ」となんとステキな受け答え。こういう人が働く店ってステキだなぁ…、って思わずニッコリ。

チェーン店だから基準がしっかりしていてどこで食べてもほぼ同じで当然。
けれどあくまで「ほぼ」であってお店によってばらつきはある。
そのばらつきが個性であれば人間味のある支店経営ということになり、今の利久はそういうチェーン。
仙台の店はどこもが見事に個性的。
お店、お店でメニューを決めてお店巡りをしてもいいほど多様で多彩。

東京にある、名古屋にも大阪にも、九州にだってあるけどそれらは利久の魅力の一部があるだけ。阿武隈川を超えるに超えられぬものがあるでしょうね。だからこのお店のスタッフさんも、いつか仙台にいっていろんな利久を体験できるといいなと思った。おもしろい。

さて「極みの6切れ定食」。
分厚い。
そして見事に焼けてる。深く入れた切り目が熱でめくれるように仕上がって、いかにもおいしげ。
ただ焼かれているのじゃなく、「焼き上げられてる」って力強さが食欲さそう。
食べればザクッと歯切れてねっとりとろけて、口の中を肉汁まみれにしてくれる。

風味づけに一味唐辛子をパラリとお皿の縁に飾って彩りとする。たっぷりつけても辛さを感じぬほどに牛たんの旨味は強烈。
青唐辛子の仙台味噌漬け、南蛮味噌の突き抜けるような辛味すらも牛たんの旨味に疲れた舌をビリリとリセットさせるやさしいお供。
見た目以上にたっぷりのキャベツの浅漬けのパリパリシャキシャキした噛み応えとみずみずしさが和風のサラダのようにふるまう。

出汁とろろを追加でたのむ。ぽってりとしてなめらかで、麦のご飯をスベスベさせる。ご飯にかけずそのままドゥルンと飲み込むと喉からお腹に一直線にかけおりて、山芋独特のむせかえるような土の香りを残して消える。滋養に満ちた山のごちそう。
今日のテイルスープはの大きなテイルがゴロンと二つ。ネギと一緒に口に含めばテイルはばっさり、繊維がほぐれてとろけてきキュッキュッとネギが軽い音たてとろけに混じる。塩でほとんど味が決まって、胡椒をかけるとそれが甘味に変わっていくのがおもしろい。
最後の二口分ほどのご飯にちょこんと南蛮味噌の尻尾をのっけ、テイルスープをかけてサラサラお腹におさめる。満ち足りる。

 

関連ランキング:牛タン | 東京駅大手町駅二重橋前駅

コメント

  1. いにしえ

    サカキさま、
    仙台、泉の本店。仙台いた頃、すぐ近所に住んでおりました! 牛タンも美味しい居酒屋さんという風情で、牛タン以外のお料理も美味しかったですね。牛タンの専門店とは思っておりませんでした。その後東京進出の時に専門店になったのかな。
    今、泉のお店はどうなってるのだろうと懐かしくなりました。

    色んな地方のお話し、ありがとうございます。
    縁があった場所に想いを馳せています。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      泉本店は今でも昔のまま。
      泉北には5店舗ほどの布陣となってらっしゃいます。
      確かに仙台の利久さんにいくと、店それぞれに独自の居酒屋メニューが用意されていて、ランチタイムでこそ牛タン定食の店として使われていますが、夜は居酒屋ですよね。
      東京にやってくると、本場とは違った差別化が必要となるのでしょう…、仙台の利久に行きたいなぁ…、って思いました。

  2. いにしえ

    泉の本店は変わってないのですね。嬉しいです!
    何だか、利休で宴会するだけのために仙台に行きたくなりました。
    よく職場の仲間と宴会していたもので。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      日本酒も豊富に揃い、三陸の魚もおいしい仙台の利久。そういうお店が近所にあればいいのに…、ってしみじみ思います。

いにしえ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。