日曜日、新宿・龍の巣、焼いて鍋して腹満ちる

日曜の夜に新宿に出る。
野暮用すませてちょうど夕食の時間帯。
「龍の巣」に来る。
去年以来、発見してたちまち気に入ったお店のひとつ。気軽でしかも元気があって、料理提供がテキパキしてる。なにしろ客席の真ん中に厨房があって注文するとすぐに対応してくれる。
ラーメン屋さんみたいなムードで、なのに焼肉。しかもメニューは絞り込まれて、にもかかわらず魅力的。人気もあって今日も予約でずっと満席。カップル、若い人たちのグループ客に外国からのお客様たち。新宿という街の雑多なムードがそのままココに凝縮されているような雰囲気たのしい。

入り口近くのカウンターをもらって乾杯。
焼き物たのむと、ニュッと厨房の中から四角い炭鉢がやってくる。
肉がやってくるまでを前菜料理で飲んで待つ。

白せんまいはココで必ず食べる一品。
表面ザラザラのせんまいをキレイに洗って掃除して、真っ白にしてそれから刻む。
手間を惜しまぬお店の証拠。
塩とごま油で食べるのだけど、ザクザクとした歯切れ感。クニュクニュずっと奥歯の間で居座る感じ。そしてほのかな内臓臭とどれをとってもお酒が進むおごちそう。

生キムチという発酵させない浅漬けキムチ。サクサクとした白菜のみずみずしさがそのまま味わえ、しかもお替わり自由というのがアリガタイ。サラダの代わりにサクサク食べる。赤唐辛子の辛味ストレートで、酸味よりもアミの旨みが強いところがオモシロイ。

まずは牛タンがやってくる。厚切り牛タンで、お皿の周りに散らかるほどにたっぷりの塩。甘みを帯びた焼き塩でそれをたっぷりまとわせて焼く。
脂ののった牛タンで、焼いてるうちに滴り落ちて炭に当たって煙になる。ツヤツヤとしたタンの表面に煙の香りがまとわりついて、こんがり焼けてく。ザクッと歯切れて口の中をみずみずしくする。塩と旨みが混じり合い噛むとネットリ。とろけてく。
続いてハラミ。これも塩でこんがり焼いてく。軽い内臓臭のする部位で、炭が香りをおいしくさせる。旨みは強く、これも脂がのっておいしい。ひんやり唇が脂で濡れて、なのに口に入ってくるのは熱々の肉。ウットリします。

それに続いてホルモン類。
ココはこのホルモンが売りで、中でも小腸。
だからそれを焼く人たちの網の上から火柱がメラメラ上がって、そこらじゅうで小さな火事がおこってる。

ボクも昔は小腸が好きだったけど、最近焼かなくなりました。
代わりに焼くのはレバーにミノ。
ハチノス、ハツがここしばらくの定番でした。
今日もそれらをたのんだら、ハツだけ欠品。残り3つを焼くことにする。

ハチノスはずっと炊いて食べるモノ…、って思ってた。
ところがココで焼いて食べることもできるんだ…、ってわかってそれからハマって虜。
脂がクニュクニュ。香り豊かで蜂の巣状になってる部分はフガフガ、ちょっとスポンジみたいな食感がある。他にないこの食感がなんとも旨い。

ミノはコリコリ。噛むとネットリ。まるで貝のような食感。癖も少なく味わいも貝のごとき旨味の強さ。ざっくり歯切れる潔さもまたおごちそう。
ココのレバーはいつも感心するほどしっかりしてる。ブリブリ、弾力しっかりしていて焼くとカチッと表面固まる。ほどよき加減で焼いて食べると中はトロリとなめらかで香りもたのしい。体の隅々に力がみなぎるような味。

ココのもう一つの売り物が「カス」。
脂を落とした小腸を刻んで揚げたものでスカスカとした食感独特。
甘みと旨味。
そして風味も独特で、そのカスを使ったうどんが名物。
多くの人がそれを〆に食べている。

同じカスを使ったモツ鍋も人気でそれを作って味わう。
ハイカロリーのガスコンロ。
上に小さな土鍋が置かれて、火をつける。
もやしにキャベツ、ニラに小腸、モツにカス。にんにくの醤油漬けをどっさり山盛り。
鍋から溢れ出しそうで、けれど野菜がしんなり縮んで山はどんどん小さくなっていく。それと引き換えに鍋の推移は上がりはじめて、クツクツ、フツフツ。スープが煮立って湯気が出る。
噴きこぼれぬよう火加減しながら煮込んでいくと、鍋の具材はぺしゃんこに。細かな泡が野菜を洗ってしんなり煮上がり食べ頃となる。

牛骨スープにカツオの出汁を混ぜたスープ。そこに野菜の甘みやモツの風味、なによりカスのコクが混じってなんとも旨い。
スープを吸ったカスはプルプルすき通り、それにくわえて小腸のブリブリ脂が多くてキレイでツヤツヤすること。ウットリします。キャベツの上でプルプル震えて、食べてと足踏みするようでパクリと食べるとトロンと脂がとろけて消える。半分ほどを堪能したら辛味噌くわえて辛鍋にする。この辛味噌が辛いだけじゃなく風味豊かで、不思議なほどに野菜やモツの甘みが引き立つ。汗をかきつつハフハフ食べる。

鍋の中にある固形物がなくなったらば〆の準備。
浮いた脂をキレイにとる。
かなりの量の脂がとれて、スープは半分ほどになる。
そこにご飯を入れて余分なスープをすくう。ご飯全体がひたひたに沈む程度にスープが減ったらそこにキムチを入れて強火でフツフツさせる。
ざっくり溶いた玉子を注ぐ。
白身が固まり始めたらおたまでヒックリ返して強火でバチバチ、鍋のスープを蒸発させる。蒸発しながら旨味はご飯の中にはいって炒めごはんのようになる。ネギを散らしてあとはハフハフ食べるだけ。
スープに溶けた素材の旨味。スープ自体の味わいと辛味噌由来の辛さと香り。玉子の甘みが口に広がり腹満たす。オキニイリです。また来よう。

 

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コメント

  1. めるば

    私も先日こちらに伺いました!料理はとっても良かったんですけど店長さんのメンタルだけで何とか保ててる危なっかしい店という印象でした。。。お通し出し忘れでもしっかり請求されるのはご愛嬌ということにしておきます。

    • サカキシンイチロウ

      めるばさん
      日によって状態が随分違うようですね。
      それにしてもおっしゃるようにココの店長の働くこと。料理を作りながらホールにでてサービスもし、予約の電話も受けるという、もしかしたらこの人ひとりでできるだけの規模のお店を作ってあげたら、どれほどの名店になるだろう…、って思うほど。
      今の外食産業の縮図のようにも感じます。

      • めるば

        そうなんです!あの店長さん、厨房のゴミ箱がいっぱいになったら取り替えるのも自分でやるし、冗談飛ばしてお客さん笑わせるのも忘れないし。
        飲食店ってただ「食べる場所」ではない、っていうことが濃縮還元されてるような方というか。

        偏った見方であることを承知で言えば、あの店長さんを見るとやっぱり大阪は食の台所というだけあって(店長さんは岸和田のご出身とのこと)、「食べる」っていうことに関しては東京はどう頑張っても西の右には出れないんじゃないかと思ってしまいます。

        • サカキシンイチロウ

          めるばさん
          飲食店はたのしんでもらってなんぼのもん…、というサービス精神。
          おいしいのは当たり前。
          お値打ちなのも当たり前。
          それ以外のことで、なにかお客様の気持ちに残ることをしてあげたいって思う気持ちはやっぱり上方文化なのかなぁ…、って思いますね。
          応援したくなっちゃいます。

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