手打ちで手切りの志な乃の冷や麦

お昼ご飯に涼しい料理をたのしみましょう…、と新宿御苑の「志な乃」に来ます。
民芸調の鄙びた風情が心地よい、小さいながら風格のある蕎麦の店。
場所柄、夜は静かでけれど昼はさすがにほどよくニギヤカ。決して安くはない店なんだけど、おいしい店には人が集まる。まずはけんちん汁をたのんでお腹を温める。

ちなみにココのけんちん汁は人気の一品。今日も野菜たっぷりで味わい濃厚。
比較的、体にやさしい印象のある蕎麦屋というのは野菜の料理に乏しいメニューのお店。せいぜい天ぷらの中に野菜が混じる以外は薬味。その野菜不足を補うように野菜たっぷり使った汁に人気が出るのは、さもありなん。今日もけんちん蕎麦を注文している人が多くてビックリします。

ボクのお目当ては冷たい冷麦。
夏の間だけの特別メニューでこれが普通の冷麦じゃないのです。
普通、冷麦は小麦を練った種を伸ばして細くする。
ところがここのこの冷麦は、手打ちで鍛えた生地を薄く引き伸ばし、包丁で切って仕上げる、つまり蕎麦の作り方で作った冷麦。
だから一本一本、角が立っていて断面四角い。

実はココは蕎麦のみならずうどんも名物。腰があってなめらかで風味豊かなうどんと蕎麦の合盛りせいろが一番人気。
そこの冷麦となると期待が否応なしに膨らもうモノ。
しかも大きな鉢にたっぷりの水。
大きくぶっかいた氷の塊が浮かんでて、目にも涼しげ。周りの温度がちょっと下がったような気すらするうつくしさ。
それにしてもいかにも手切りしましたといわんばかりに太さに若干ばらつきがあり、けれどどれもが見事に細い。観察すると淡い飴色。とてもなめらか。氷と一緒に水の中でユラユラ揺れる儚い様がうつくしい。

水気を切って器にうつすせいろやザルと違って水の中にある。
つまり水気もタレの器に一緒に持ち込んでしまうというコトで、その分タレがたっぷり徳利にはいってきます。
表面張力一歩手前の大盤振る舞い。
透き通って色は薄い。けれど味は強めで出汁がしっかりきいてる。
そば猪口に冷麦たぐってちょっと入れ、タレを注いで猪口に口つけタレと一緒に麺を口へと送り込む。
スルンと口に滑り込み噛む暇もなく喉の奥へと流れ込む。極細の麺が果たす役割はただただおいしい出汁を口の中へと誘うまるでストロー。胡麻に大葉、生姜にワサビに大根おろしに白いネギ。薬味たっぷり、さまざまで風味をかえてスルスルお腹におさめてく。

冷麦とはよく名付けたもので、口の中を冷たくさせるまさに冷たい麦の麺。口から喉、喉からお腹を涼しくしつつ、けんちん汁でほっとする。
そうだ。けんちん汁に冷麦を浸して食べたらどうなるだろう…、って思って浸す。味噌の風味とごま油の香りが口に広がって、冷麦の麺に軽く熱が入ってネットリとろける食感となる。
けんちん汁のやさしく、ホっとさせてくれるこのおいしさ。たっぷりはいった大根、ニンジン、ネギや豆腐の芯まで味が入ってて、特に豆腐のとろけるほどに柔らかいこと。ウットリしました。お腹も満ちる。オキニイリ。

 

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