御苑のベンチ、鰻丼に蕎麦
新宿御苑。
家から歩いて10分足らず。たまにふらりとやってきていた。
特に花見の季節は必ず来てた。ボクらの春は新宿御苑からはじまっていた。
ただ今年はコロナのせいで閉園になるんじゃないかと早めに出かけた。
まだ肌寒く、花もちらりほらりなさみしい雰囲気。
それでも彼は来たがった。
池の周りにベンチがあって、そこに座って写真を撮るんだ…、といってズンズン、芝生を突っ切り池に向かった。
ところが感染予防にとベンチが移され、あるはずの場所にみつからない。座りたかったのにと、怒ることがほとんどなかった温厚な彼にしては珍しいほど悔しがるから、なぜ?って聞いた。
そしたらこう言う。両親を新宿御苑に案内したら、都会にこんなところがあるんだなぁ…、とよろこんだ。
大きな公園を歩き回ってちょっと疲れてあそこのベンチに座った親父が写真を何枚も撮ってたんだ。
うれしそうでね。
あんなうれしそうな親父の顔は初めてだった。
だから同じところに座って写真を撮って、お袋に送ったら喜こぶだろうなと思ってどうしても座りたかった…、っていった。お父さんと同じところで写真を撮りたい。そんな小さな夢を叶えず逝てしまった。
悔しかっただろうな、と代わりにベンチの写真を撮った。
落ち着いたらまた来ればいいよ、とそのときにした約束も果たせず、そういやそのときが最後の新宿御苑だった。
昔はよく来たんだけどなぁ…、そのためにピクニックバスケットを買ったくらいで、でもここ数年はそんな余裕を失っていた。丁寧に、丁寧に生きると言うことをもっと大切にしてればよかった。ごめんなさい。
新宿御苑に来たら近所で蕎麦を喰う。
それが二人の間の約束事で、けれどお盆の休みでどこも休業。
それでも蕎麦を食べたくて自転車に乗り新宿「大庵」。
ちょうど開店と同時の時間で、座り心地のよいカウンターの一番端の好きな席につく。
夏だけの限定商品。
鰻丼とせいろ半分のセットがあってご飯半分でそれにする。
揚げたそばが昼のお通し。ビールでも飲もうかなぁ…、と思うも外は灼熱地獄。電動とは言え自転車だから我慢しながらお茶をのむ。
鰻を焼き上げるのに少々時間がかかって到着。半量のそばといってもこれがなかなかたっぷりで、ご飯半分とお願いをした鰻丼の器はどっしり。鰻一尾がまるごと入った景色が贅沢。お腹がすきます。
ほどよく蒸された鰻の蒲焼き。お腹の部分は脂がのってふっくらやわらか。尻尾に近づくにしたがって焦げてバリバリ、歯ごたえよくなる。自分の脂で揚がるように仕上がった尻尾の先はボクの好物。エビの天ぷらも尻尾が一番おいしいよね…、とそれを知っててタナカくんは必ずそこをボクの分だよって残してくれた。痛風がひどくなってエビを食べるのを控えてたときも、尻尾だけならいいんじゃない…、って尻尾はボクの分だった。
肝吸いに茄子に白菜、柴漬け、からし菜と漬物たっぷり。角がキリッとたったそばはみずみずしくてタレをたっぷりまとわせわさびと一緒にスルン。鰻の脂を拭って口をすがすがしくする。ネギを落としてそば湯で割ったタレを味わい、表を見ると晴れの空。
さかきさんのストレートな表現、丁寧に生きればよかったと。失って気づくことあります、だから丁寧にって思うんだけど、通り過ぎてしまってる。本当に丁寧に豊かに生きたいです。
いつも、いままでも、これからもかわらぬさかきさんで
かげながら応援させてください^^
かよこさん
お盆というこの時期。その意味はずっとわかっていたつもりなのだけれど、本当に身近で大切な人をなくしてはじめて、こういう期間を人が必要とするのだなぁ…、としみじみ思いました。
ボクは今「言葉で弔う」ということをしているのだろうと思います。まだまだ弔い切れません。まだまだ元気でいなくては…、と思う毎日。温かいコメント、ありがとうございます。
サカキさん
朝起きてぼんやりサカキさんのブログ
あっちを読んだりこっちを読んだりして
ここにたどり着きました
私も生前、父が東京に遊びに来た時に御苑に連れて行って
植物が大好きだったので
御苑のスケールの大きさにすごく喜んでいた事が思い出されて
また今度行こうねって言って
叶わぬままに逝ってしまったのですが
サカキさんの文章に重ねて思い出し
ちょっとしんみりしてました
ちょうどコロナで帰って墓参りも行けず
思い出してよ
って言ってるのかもしれませんね
これも巡り合わせですかね
チキタンさん
先週の週末から気持ちがザワザワして、よく眠れなかったりする夜が続いています。
まもなく半年の月命日なんです。
病院に行かなきゃいけないのに、コロナが怖いって行けなかった。本当はこんなに早く逝っちゃう人じゃなかったはずなのに、残念で仕方がなくて。
こうしていろんなことを思い出し、思い出してはブログに書いてコメントを頂戴できることでなんとか彼の弔いがちょっとづつ出来ているような気がします。
どうもありがとうございます。
サカキさん
半年ですか
まだまだ整理つかないですよね
普通なら、お通夜とかで故人の思い出を語り合ったり
そんな段取りもなくですもんね
まぁそれがあっても辛いのは同じとは思いますが
でもこうやって文章にするのは、おっしゃる通り
弔いにもなり、自分の浄化にもなるのではないでしょうか
沢山書いて、沢山思い出して、それで良いんではないでしょうか
チキタンさん
時節柄、お通夜もなく葬儀もボクひとりで執り行わなくてはならず、ご遺族にも不安な思いをさせてしまいました。
まだまだ時間はかかるのでしょう…、胸を毎日痛めています。
サカキさん
サカキさんの心中思うと安易な言葉もかけられませんが
辛い気持ちはどんどん我慢せずに出して下さい
そして美味しいもの食べてください
新参者ですけど
サカキさんのあったかくて美味しい文章のファンの1人として
これからも読ませて頂きたいです
チキタンさん
悲しむことにも、食べることにも我慢をしないでのんびりと。
よろしくお願いいたします。