宮川本廛、中入れ丼に茶碗蒸し

うなぎをどうにも食べたく思う。朝からお腹がおいしいうな丼に向かってグーグー、吠えるよう。
かつてならば双葉というオキニイリのお店が新宿駅の西口地下街にあって何も迷わずそこに直行すればよかった。
残念ながらそこは閉店。
どうしようかと思案して、しょうがないから伊勢丹の食堂街にある「つきじ宮川本廛」にした。
10店ほどのお店がならぶフロアで人気があるのはイタリア料理に鮨にとんかつ。それらは長い行列で、二番手グループが天ぷら、そしてこの鰻屋さん。開店と同時を狙ってすべりこむ。
目当てのうな丼が到着するまでうざくと鰻の茶碗蒸し。むっちりとした鰻の蒲焼と蛇腹のきゅうり。お酢がスキッときいたうざくはお腹の入り口ひらくおいしさ。茶碗蒸しの中に蒲焼がひと切れまじる。プルプル、しっとりした玉子と出汁。ネットリとした鰻が一緒に口の中へとやってくるのがおゴチソウ。

お待たせしましたとうな丼が来る。
オキニイリだった双葉もそうだけどうな重よりもうな丼派。
丼を手に持ち上げたときの充実感。
器の縁に口をつけ、箸でご飯をかきこむ感触。
あぁ、食べているって感じがしてくる元気な料理。

うな重も上等な感じでいいのだけれど、あれは「鰻を食べる」料理でうな丼は「鰻とご飯を食べる」料理って感じがするのがオモシロイ。
蓋付きの丼。白に藍の絵付けの器で蓋を開けると中に入った蒲焼の色がきれいに映えて見える。閉じ込められた蒲焼のおいしい匂いがパッと花咲くように広がる。腹がなる。

関東風に蒸して仕上げた鰻だけれどボロボロになってしまうほど深蒸しじゃなくほどよく硬さが残ってる。甘さ控えめのスッキリとしたタレをまとってこんがり、ふっくら。鰻自体の香りや旨味がしっかり残っているのが旨い。
テーブルの上にはタレと山椒が入った器。山椒パラリとふりかける。
実はボクの父は若い頃に鰻の専門店を経営していて、鰻の焼き方、食べ方には一家言をもっていた。よく下準備され丁寧に焼き上げられた鰻はそのまま食べて十分風味豊かで、山椒なんてかけるのは邪道なんだとずっと山椒はかけずに食べてた。けれどあるとき上等な生の山椒を挽いたのをかけてあまりのおいしさにぶったまげ、これを食べずに死ぬとこだった…、ってそれからしばらく「マイ山椒」を持ち歩いてた(笑)。

よい山椒は臭み防止と違った役目を果たすのですね。
軽い痺れが鰻の脂やタレの甘みをやさしくさせる。
しかもご飯の甘みがふくらみ、お腹を重たくさせることもない。
今日の山椒も上等で、鰻もおいしい。
ちなみに「中入れ丼」をたのみました。ご飯の上に鰻が二切れ。食べてるうちにご飯の中からもうひと切れが顔を覗かす。ご飯の中の蒲焼は蒸気をたっぷりふくんでとろけ、ご飯と混じってまるでまぶしのようになっていくのがオモシロイ。
タレを自由に追加できるところもうれしい。サラサラとしてスッキリとした味わいでたっぷり追加。ハフハフザブザブ、ご飯を味わう。
肝吸い、それから漬物で舌の状態、食感をかえあっという間に丼の中は空っぽになる。満たされる。

 

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コメント

  1. いにしえ

    サカキさま、
    ちょうど土曜日の同じころ新宿近辺で猛烈に鰻が食べたくなったのですが、東京流のふわふわ系じゃないお店が思い浮かばす断念しました。伊勢丹の宮川、覚えておきます!
    ここのところ人生色々ありまして、こんな時は鰻で元気にならないと。鰻を食べると、なぜだかいつも、私の人生も悪くないんじゃない?と、不思議な気持ちが湧いてくる食べ物であります。
    丼派です。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      ボクもふわふわ系はちょっと苦手で、東京で…、となれば銀座の「ひょうたん」さんに頼る他ない状況。宮川さんの鰻はぎりぎり我慢できる硬さで、重宝します。
      ちなみに、今、名古屋にいるのですが明日は絶対に鰻だなぁ…、と今からお腹をすかせております。ひつまぶしでなく断固丼です。

  2. いにしえ

    名古屋で鰻とは羨ましい限りです。たくさん美味しいお店がありますが、サカキさんはどちらでお召し上がりになるのか楽しみです!
    ひつまぶしではなく、お重ですらなく、丼!

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      ひつまぶしの名店はたくさんあるのですが、うな丼となると選ぶべきお店は数店舗。
      中でも比較的入りやすくしかも駅から便利な場所となりますと「まるや」に尽きるかと存じます。木箱に入った独特な提供の仕方も品質もボク好みで今からワクワクしています。

  3. いにしえ

    サカキさま、
    名古屋はやっぱりひつまぶしが優勢ですよね。
    まるやさんの投稿、うーん美味しそうとお腹が鳴りました。焼き方もたれもパキッとしていて、鰻食べてるなーと感じるお味で好きです。初めてのときはあの箱での登場には驚きました。
    新御園座にできたお店が丼も出していてなかなかと、鰻友達(鰻党同士)から聞き、行ってみなくちゃと思っています。
    中京で鰻を食べられる機会をつくらなくっちゃと画策中。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      「鰻党」!結成したいですね(笑)。
      中京地方に定期的に出張しながらも、鰻を食べる機会がそれほど頻繁ではないことに若干の悔しさを感じつつも、おゴチソウは食べたい気持ちを蓄え、蓄え、ここぞとばかり満足させるべきものと思うことにいたします。

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