大人のゴチソウ、神田まつやに甘味のおかめ

matsumatuya昼をそばで軽く仕上げる。
側で軽くじゃなくて、蕎麦で軽くなお昼でござる。

秋葉原からちょっと歩いて淡路町。
ついさっきまで、ギラギラとした電脳街にいたとは思えぬしっとりとした風情の町並み。
その町並みに溶けこむしおれたような建物。
まわりはひっそりしております。
暖簾をくぐってガラリと戸を引く。
すると中はおどろくほどにニギヤカで、ランチがはじまったばかりというのにもうすでにほぼ満席という盛況ぶり。
老若男女なお客様。しかもすべての人が大人のふるまいを忘れぬステキが、空気を凛々しくしてくれている。

こちらへどうぞと案内された場所はなんと、厨房の前。
左手には蕎麦があがって配膳台へとそれが向かっていく臨場感。
目の前、正面には蕎麦の打ち場がガラスの向うに広がっていて、前を次々料理が運ばれ消えていく。
舞台の下手から役者が出てきて、上手にはけていっている。
そのニギヤカさにワクワクします。
客席ホールが上手に広がり、お店の中のほとんどすべてを見通せる、一等席をもらってニッコリ。なんとステキな昼ご飯。

横長のちょっと大きなテーブルで、先客ひとり、いらっしゃった。明るい色のサマージャケットを粋に着こなし、ネクタイ姿も凛々しい、年の頃、70手前というところでしょうか。お銚子片手にのんびり時間を潰してらっしゃる。

matu nihonshuあてには昆布の佃煮。
お銚子の中のお酒をほんの少々、おちょこに注ぎ、クイッと軽く煽って飲む。
その度、お酒の甘い匂いがやってきて、まるでボクまでお相伴に預かってるような気持ちになれる。
背筋がしゃんと伸びていて、飲んでも姿勢が崩れない。
本もいらない。
もちろんスマフォの画面を見るような無粋もしない。ときおり右の客席ホールを眺めてみたり、目の前を運ばれていく料理の匂いをニッコリしたり。
お店の様子を酒の肴に、ユックリ、のんびり。
ひとつのリズムを守ってお酒を飲んでは昆布の佃煮をつまんでぼんやり。ボクの料理が届いた頃に、やっとお酒がひと段落。せいろを一枚いただきましょう…、と。
こういう蕎麦屋の楽しみ方を、いつになったら自然にできるようになるんだろうって、なんだかかなりうらやましい。

さて、ボクの注文は天南蛮そば。
ココで一番のオキニイリ。温かいそば。白いネギの芯の部分だけをトロトロに煮たモノをあしらい。エビの天ぷらが三本いかだに並んで浮かぶ。

matu nanbanmatu soba大きなエビを一尾天ぷらにするのではなく、ほどよきサイズのエビを三本。
衣をたっぷりまとわせながら揚げて最後に三本ひとつにつないで一枚に仕上げて使う。

エビではなくて衣を味わう。
それが蕎麦屋の天ぷら。だって衣の脂がツユをおいしくしてくれるんだから…、と、納得できる粋なもてなし。

エビは新鮮。だから尻尾までカリッと揚がって香ばしい。
熱々の汁の中でユックリ熱が入った蕎麦は、ネットリとろりと喉越しなめらか。醤油の風味が力強いツユをたっぷり吸い上げ口へと運んでくれる。
熱い汁そばに蕎麦湯がつきます。湯桶の中の蕎麦湯を注いでツユを薄めて飲むと不思議…、それまで影を潜めてた出汁の香りや風味が顔をのぞかせて、かえしを押しのけやさしい旨みを主張する。お腹の芯から体あっため、次に向かってさぁ、移動。
隣の紳士は、目がさめるような音を立てつつ蕎麦をたぐってらっしゃいました。粋でござんす。大人的。

 

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甘味処にて夜をとる今日…、有楽町の交通会館の地下にある「おかめ」という店。鄙びたビルの鄙びた店が集まる鄙びた地下の食堂街になんの違和感もなくたたずんでいる…、つまりきれいに鄙びた甘味処。

okameお店で働く人たちも、落ち着いた風情の人たちばかり。
厨房の中にひとり調理をしている男性スタッフがいる以外、基本、女性だけで運営している。

昼間はおばさま的なる女性が集まる女子の花園。
銀ブラ帰りか…。
あるいは観劇前後と言った風情のお客様が主要なお客様。
空気華やか。
ガールズトークにはなを咲かせるにぎにぎしさに、一緒にこちらも笑顔になってく、明るいムード。
さすがに夜は若干控えめ。
いつもシットリしてるんだけど今日は2組。
大人カップルが片寄せあって食事をしてる。

それぞれ2人の関係性はわからない。
けれど女性の笑顔がやわらかで、シアワセそうにみえて、なんだかみているこちらまでもが気持ちがホッコリしてきたりする。
甘味処でデートができるってなんてステキなおじさんたちだろう。だってオトコが夜に甘味処に行く理由は何一つないワケで、女性のコトを思わなければ選択肢には挙がらない。
女性想いをこういう形で表現できる。意図してであってもなくても、こりゃスゴいぞって感心します…、大人の勉強いたします。

okame tableそれにしてもこもお店。
テーブルが塗装をしないテーブルを使っているんだけれど、これがスベスベ、手触りなめらか。
角のところを見れば磨かれ、薄くなってるようにも見える。
磨き込んでいるのでしょう。
寿司屋に入って一番最初にすべきコトはそっとカウンターをなでてみること。その手触りがなめらかならば気合いの入った正直な店…、とボクは思っているけれど、そんな上等な寿司屋と同じここは上等、ウットリします。

夜のお食事デートができる。つまりすなわち甘味だけじゃなく食事も充実してると言うコト。種類豊富なきしめん類。それとお弁当がここの名物。

弁当たのむ。
おかめ弁当と言うここの一押し。扇型の弁当箱にギッシリ料理が詰め込まれている。その組み合わせが面白くって、とてもユニーク。

okame bentookame mesiru甘味処のご飯の定番、赤飯。
それから出汁で炊いた茶飯が半々。
そこにソース焼きそばがつく。
堂々たる炭水化物パレードで、おかずがおでん。
はんぺん、竹輪にごぼう天、それから大根…、どれもに出汁が染みこんで噛むとじゅんわり、口の中が出汁でみずみずしくなっていく。
練った芥子もビリッと鼻から抜ける辛さで本格的。

ソース焼きそばもシットリしあがる独特で、モヤシにキャベツと具材も豊富…、麺の料理というよりも野菜炒めに極細中華麺が混じってるって感じでご飯をおいしくさせる。

実はワタクシメ、赤飯があまり得意ではないのだけれど不思議とココのお店の赤飯はあんまり嫌じゃないのであります…、小豆の存在感をあまり感じなくてすむと言いますか。
塩加減が絶妙で、もち米のネチネチとした食感がおでんと一緒に味わうとスベっと奥歯がスルーしてくれるような気がしてそれで食べられる。
コリコリとしたタクワンと昆布の佃煮もおいしくて、何よりお汁。花の形のお麩が浮かんだオスマシが、きっぱりとした塩の風味がおいしくて口から喉を潤して、お腹をポカッとあっためる。ほどよき量で、気持ちもやさしくなるようなよき晩御飯…、さぁ、帰ろ!

 

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コメント

  1. tawawa

    一人、美しく飲む、って高等技術だと思います。
    40歳、くらいには身につけたいです。

    • サカキシンイチロウ

      tawawaさん
      周りでみていて、ステキを思われるような飲み方って、なかなか身につかないですよね。
      しかもバーでなくて蕎麦屋。
      自分を耐えず客観視できる、本当の大人にならないといけないのかもしれません。

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