夏の大庵、鱚天せいろ

昼、蕎麦が食べたくそれで大庵。実は昨日、訪ねた。けれど月曜はランチタイムだけが定休。それで代わりにビアレストランでランチをとった。今日になっても「蕎麦を食べたい熱」はまるでおさまらず、それで改め今日の昼。
人気の店で開店と同時に続々お客様がやってくる。落ち着くテーブル席と、厨房を眺めるカウンター、それから街路樹越しに街の景色を眺めることができるカウンターという客席構成。通りに面したカウンターの気持ちよさは格別で、その一等席に案内されて熱々おしぼりで汗拭きながらホっとする。
明るい外から階段上がって店に入ると、間接照明の暗い店内にフッと空気が変わって背筋がしゃんと伸び、表を眺めるカウンターに近づくにつれ再び明るくなっていく。さっきまでいた通りがちょっと遠くになったような気がするオモシロサ。

ゴクゴク飲める程度にぬるいほうじ茶。
料理を注文するとそば猪口、ツユの入った徳利、薬味の入ったランチサービスの小鉢が次々ならべられる。
器それぞれがうつくしく、趣向を凝らしているというのが粋でよい。
おいしいモノがやってくるための景色が整う。腹がなる。

冷たいそばを2種類たのむ。
ひとつは季節の冷たいそば「キス天せいろ」。もう一種類は辛味大根の冷たいせいろ。
天ぷら用の天つゆとそば用のツユを注ぐためのそば猪口、天つゆに沈めるための大根おろしとおろし生姜。
辛味大根はザクザク、鬼おろしにされたっぷりと…。長方形のせいろが二段重ね。
断面、ほぼ正方形という几帳面に仕立てられたそば。みずみずしくて、せいろの上でつやつやひかる。ウットリします。
新宿という街には飲食店がたくさんある。ありとあらゆる種類の店がひしめきあっていて、けれど当たり前のものが当たり前においしい店が少ないというのがなやましいとこ。特に蕎麦屋の不毛地帯でこの店、スゴくアリガタイ。

まずせいろをそのまま。ツユにトプっと浸して味わう。
薬味は使わず、そばのみずみずしい味わいとバッサリ口にちらかる食感。
風味豊かなツユの旨みと風味を味わう。
それから辛味大根をパラリとちらし、タレを注いでズルリとたぐる。奥歯でカリカリ、辛味大根が砕けて辛味を吐き出しそばと混じり合う。
夏の辛味大根は辛味控えめ。それでもそばの甘みが引き立ち、口の中がみずみずしくなる。
それからツユに天ぷら浸して、天ぷら油の風味をタレに移して味わう。油の香りはこうばしく、細い麺にからみつき口の中を旨みで満たす。組み合わせるものがほんのちょっと変わるだけで、そばもツユも印象をガラリと変える。シンプルで飾り気のない料理だからこその楽しみ。ニッコリします。

それにしてもキスの天ぷらのおいしいコト。身厚のキスで衣の中でふっくら蒸されたように仕上がる。サクサクとした衣の食感がそのふっくらを引き立てて、おいしくさせる。風味豊かで、その触感や溶け心地は穴子のようでけれど蛋白、とても上品。オゴチソウ。
野菜は茄子にかぼちゃにしし唐。どれもカラッと揚がってて、食べてくうちに天ぷら衣が懐紙の上にちらかっていく。それをさらってタレに入れ使わずにいたネギとワサビを加えて蕎麦湯を注いでゴクリ。不思議なコトにタレをそのまま味わうよりも、蕎麦湯でちょっと薄まるだけで出汁の旨みを強く感じる。お腹を温め、気持ちもおいしくあったまる。気がすみました…、オキニイリ。

 

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