すかいらーく製、喫茶店の皮をまとったレストラン
朝、むさしの森珈琲にやってくる。
すかいらーくグループが運営する喫茶店業態で、岐阜のお店は22日にオープンしたばかり。
以前、居酒屋があった建物を居抜きで借りて、にもかかわらず以前の名残が一切残らぬほど徹底的に改装をした、まるで新築みたいなお店。
気合のほどをしみじみ感じる。
彼らのこの業態への期待はそれほどスゴイものなんでしょう。郊外型のファミレスは安売り業態として延命するしか方策はなく、その一方でコメダ珈琲のようなお店が繁盛してる。未来に対する危機感と、新たなライバルが羨ましくってしょうがなくそれでカフェ業態に事業の軸を移しはじめてる。
ただお店の造りはファミレスです。
キッチンと客席の関係性やホールレイアウト。トイレの位置から微かに見える厨房機器までほぼすかいらーくのなぞりです。
本来、天吊式の空調設備が設置されるはずの場所にカヌー(のような物体)がぶら下げられてて、だから冷房効率が著しく悪いところが、もの悲しい。
喫茶店じゃなくてレストランである証のひとつが、料理を作るのはキッチン。飲み物を作るのは客席側のパントリーという役割がココでも明確に守られていること。
トーストを焼いて茹で卵を添えるくらいの作業はパントリーでできる。そうすれば朝の時間は厨房を動かさなくてよくなって、人件費を減らすことができるのに、それを頑なにしないところに、レストラン屋の意地を感じる。
その分、スタッフはたっぷり、多めに配置してます。
ネクタイしめた社員然とした管理職も2人はりつき、全部で10人ほどが働いている。いまどきこれほどスタッフのいるお店は少ない。びっくりします。
しかも沢山スタッフがいるにもかかわらず食器の片付けが行き届きません。忙しくしているかというと、厨房の前でスタッフ同士がおしゃべりしたりしてるんだけど、お客様がいなくなったテーブルが散らかったまま。
ネクタイ管理職も見てみぬふりで指示も出さない。
熱いコーヒーをたのんだら、ピッチャーに入ったミルクの他にガムシロップがやってきて、にもかかわらず角砂糖が入った器が置かれてる。
オープン前、2周間近くもロールプレイングをしていた…、っていうのだけれど、一体何を教えていたのかわけわからない。
提供されるブレンドコーヒーが大きなマグでやってくる。
メニューをみるとマグの下にソーサーが写っているけど、目の前のマグの下には何もない。
ネクタイくんを呼び止めて、この写真って嘘なんですか?って聞いたら、「そうです」と眉毛一つ動かさず当然のように言い放ったのにはびっくらこいた。
びっくりついでにびっくりするのが、サービスをしゃがんでするコト。
オーダーを取るのもコーヒーや料理を提供するのも全部、しゃがんで行う。
この過ぎたうやうやしさをよいサービスと思う人もいるだろうけど、ボクはあんまり好きじゃない。
人の前にしゃがむというのは、余程目上の人に対してか、かなりきっぷの良いお客様の前に限って行う破格のサービスで、それに値するほどボクはお金を払ってないもの。
最近、居酒屋なんかでもすぐしゃがむ。しゃがみさえすればサービスがいいって言われると思ってすぐにしゃがむけれど、そういうコトを考え、教える人たちってよほどキャバクラみたいな店が好きなんだろう…、って思ってしまう。コーヒーキャバクラって新しい(笑)。
朝ご飯メニューは複雑。
飲み物をたのむと朝食時間帯なら無料でついてくるセットがある。
名古屋式とかって言われるコメダ珈琲もやってるサービス。
ただ、それだけじゃなく、朝食用の料理メニューが多彩に用意されていて、なるほど結局、厨房の中に何人ものスタッフを置かなきゃいけない理由がここにある。
やってくる人たちの6割くらいは無料サービスの朝食セット。
ボクらは無料のサービス。
厚切りちょっと手前の厚さのトースト少々。それにに一個、ゆで卵。無料のサービスなんだからこんなくらいの量で十分でしょ?って感じの分量。
トーストにはバターが十分染み込んでいて、パンの表面をしっかり焼き切った焼き加減もなかなのモノ。
「温かい」というのが売り物の茹で卵は、手にしたときにはたしかに冷たくはないのだけれど黄味は冷たい。あらかじめ沢山茹でてウォーマーの中で保温していたのでしょう…、だから黄身がバサバサしてる。
追加メニューがいくつか用意されている。ロースハムのサラダっていうのがおいしそうで、たのんでみると大正解。
加水少ない上等で大きな白ハム。ハーブ野菜の上にのっけて上にたっぷり粉チーズ。トーストの上にのっけて食べるとオープンサンドのようになる。
ちなみに朝食メニューのメインはパンケーキとかエッグスベネディクトとか。あるいはなめらかに仕上げたスクランブルエッグであったり、つまり「ビルズ」のやり方です。
うらやましくてしょうがない店が沢山あって、大変です(笑)。
単品メニューで1000円前後という値段。
それに飲み物をつけると1200円を超えてしまうという値段。
開業直後。
しかも夏休みという今は結構流行っている。
けれどいつまでこの値段やシステムが好意的に受け入れられるんだろう。
朝食セットがたのめる時間が10時半までというのも、モーニング王国のこの界隈では中途半端で、この地方にはこの地方なりの営業の仕方が本当はあるのにね…、って、隣の普通のお客さんたちが心配そうに言っていた。
チェーンストアの限界でしょう。
それにしても、料理という「モノ」ではなくて時間や空間という「コト」を売らなきゃいけないと作ったはずの喫茶店で、結局、料理を売ってしまう。
それが差別化と思い込んでしまっているのがすかいらーくという会社に刷り込まれているDNA…、って思うとなんだか切なくなっちゃう。朝のコト。
せわしない朝だったのですね。
すかいらーく系列は何故かここ数年行ってないけど、サカキさんと同じものを見に行ってみようかしら、と思っております。
そして厚かましいご報告をば。
いつも思うことは、サカキさんの苦言は上品だということ。
サカキさんの文章力への憧れにも背中を押されて私も実名でブログ始めました。
まだ1記事しか書いていませんが・・・。
サカキさんさえ宜しければ、URLお送りします。
興味がおありでなければ、さくっと流してくださいませ。
かっちさん
どんな状態の飲食店でも、そこに働く人がいて、その店を必要としている人がいる限り、嫌いになることができないんです。
だから愛情をもって意地悪になってやろうと心がけています。
ブログ、できれば拝見したく存じます。
客の前にしゃがむのって、あれホントなんなんでしょうね・・・最初遭遇した時、なんだなんだ、なにか勧誘でもされるのか? とかなり慌てたのを覚えています。
居酒屋だけかと思ってたらファミレスやカフェでもやり始めましたか・・・本当にやめてほしい。「ご注文はこれでよろし『かった』ですか?」なみに気落ち悪いというか。なんでこんなことになってしまったのかなあ。
最近は、この国にあまりにモンスタークレーマーが増えてしまったから、バイト敬語とかいうワケわからないものまでこさえて先手で執拗にへりくだるよう店側が自衛してるってことなんだろうなあ・・・と、むしろ同情するようにもなりましたけどね。もちろん飲食業界に限った話ではありませんが。
卵と鶏どっちが先か本当のところは知りませんけど、やっぱり結局は、「どっちもどっち」だからなんだろう、とは思います。
kokuさん
テレビを見ていても、敬語に敬語を重ねたような丁寧過ぎる言葉遣いが増えました。
何着とも「過ぎる」ということは、見苦しかったり聞き苦しかったり。ほどよきコトで互いが満足できる社会になるといいのになぁ…、って思います。
それにしてもあのしゃがむ行為。
この歳になると戒めでしかなくなります(笑)。サービス業に充実するために足腰の筋トレをしなくちゃいけないのか、それとも自然にスクワットができる年齢の人しかうちで働くことはできないよというメッセージなのか。どちらにしても面倒くさくてしょうがないですね。
ありがとうございます!
http://foolishandweak.hatenablog.com/
です。
お願いしたのは私自身なのに、何故か恥ずかしいです(笑)
かっちさん
URLありがとうございます。
勉強をたのしめる人生ってステキですよね。ボクもおいしいモノを食べながらいろんな勉強ができるのがうれしくて、だから食いしん坊になったんだろうなぁ…、って思います。
サカキさん、こんにちは^^
このところ戻り梅雨のようなお天気ですね~サカキさんがお元気そうで、しっかり召し上がっていて、こちらも元気をいただきました♪
それにしても、コーヒーキャバクラって新しい業種ができそうで、ブログを読みながらケラケラ笑ってしまいました。
ちょうどいい距離感の接客って難しいのかしら^^
Noteさん
人と人との関係って、重ねるごとに近づいていくもの。それをいきなりグイーッと近づいてこられるとビックリしちゃいますよね。
仕組み、仕掛けで人の距離を一足飛びに近づけようとするコトって、やっぱりしちゃいけないんだろうなぁとも思います。
やっぱり、コーヒーキャバクラってありですよね(笑)。
度々失礼いたします。
私のブログにもコメント頂き、ありがとうございました!
自分の人生に少し自信が持てました^^
サカキさんの食いしん坊は見ていて気持ちがいいです。食べることへの愛着を、これからも思う存分わたしたちにお裾分け下さいませね。
かっち(山中繭子)さん
こちらこそ、よろしくお願いします。あるがままで、あるがままにたのしみましょう。
いつも楽しく拝読しています。
アメリカのレストランに行くと、
お客とお店が対等で、
それがお店の雰囲気を作っていて、
アメリカの外食はすごいといつも思ってしまいます。
お客様は神様ではなく、
お客様とはお互い様でサービスする
そんなお店がもっと増えてほしいなあと
サカキさんのブログを見ていつも思います。
しゃがんでサービスを受けると、
自分がお殿様になった気分で、
自分は違和感を感じます。
外国人相手なら、そういうテーマのレストランもありなのかなと思ったりもしますがね。
もう一人の食いしん坊さん
「お客様とお店が対等」。
それこそが、ボクが理想と感じる飲食店の姿なんです。
そもそも人と人との関係の中で、もっともたのしく刺激に満ちたモノが対等な関係性。互いが互いのためになろうと思う気持ちが呼応しあって膨らんでいくことを、友情であるとか愛情であるとか呼ぶのだろうと思いますもの。
おっしゃるように、「お互い様」で満たされたレストランがもっと増えるといいなぁ…、って思います。