今日はお昼の、雅味近どう
昼、雅味近どうにやってくる。
いつもは夜に来る店です。しっかりとした仕事を感じる季節の料理がおいしい店で、昼には気軽なコース料理がたのしめる。お店は満席。座敷の個室をもらったけれど、客席ホールからさざなみがひいてはよせるかのような明るい笑顔とご婦人方のおしゃべり声がきこえてニギヤカ。
夜も昼もご主人一人で料理を作るお店です。
にもかかわらず、遅れることなく料理がしゃんとでてくるところ。下ごしらえと手順がいいからなのでしょう…、味わう前からおいしく感じる。
まずは前菜料理がやってくる。涼しい料理がうれしい季節。グリーンピースのピュレで作った豆腐に出汁で炊いたトマトをひんやり冷たくしたのがまず一皿に。どちらの料理も舌にやさしく、キュッとお腹を目覚ます感じ。
それから刺し身。
鯛の切り身に生のとり貝、マグロの赤身の三点盛り。
大根のつまのようなあしらいはなく、使われてるのは薬味野菜に大葉だけ。
いろどりキレイで、しかも立体的に迫ってくるような盛り付けが目にうるわしい。
昼のお腹にやさしいように余分はモノはなるべく使わず…、という配慮なのでありましょう。
豆腐を食べた後の器に桃太郎。まだまだ五月、端午でござんす。先日、熊本に行ったときには端午の節句を遥かに過ぎてまだ鯉のぼりが泳いでた。5月の間はずっと流しているんだと…、節句がすんだらすぐしまわれるお雛様とは大きな違い。オモシロイ。
お椀が続きます。日本料理の花形料理のひとつ…、おすまし。
魚のすり身でふっくら仕立てた真丈をお椀に沈めて、上にニンジン。木の芽と青菜をあしらってお椀の蓋をとった瞬間の目がまずよろこぶ。
鰹節の出汁と塩だけで味がこれほどしっかり整う。見事だなぁ…、とウットリします。
それからココの名物料理、あんかけ饅頭。枝豆をすりおろして作った饅頭の芯の部分にカニのほぐし身。上にたっぷりのあんをかけてこれが熱々。ポッテリかなり強く粘った出汁の旨味で味わう饅頭。フウフウしながら食べてくうちに体が芯からあったまり、汗がでてくる。これを食べると、あぁ、近どうに戻ってきたんだ…、ってしみじみ思う、しみじみした味。
さてメイン。
塗りの箱の中に吹き寄せ。
趣向を凝らした様々な料理が並ぶ。
その並び方が散らかるようでいて、けれど一定のリズムをもっているのが見事。
しかも箱の手前に料理を置かず奥に向かって徐々に高さを増していくように料理が配置されてる入念。
食べ手の目線からうつくしく見えるように計算されて、しかもすべての料理がキレイに見渡せるようになっているのがなんともおいしげ。
魚の麹漬けをこんがり焼いたもの。甘エビの天ぷらはザクザク、殻と天ぷら衣が一緒に崩れる感じがなんとも痛快。出汁巻き玉子にすっぽんの出汁で炊いたおから。フキの煮付けに煮たイイダコ、三つ葉の白和えとどれもやさしく味が整っている。
揚げたレンコン。右手前にある青梅か…、と思った物は大きく育つ前の桃。香りも味も食感も確かに桃でビックリします。
いくつか料理を食べたところで、ご飯と汁がおいかけてくる。このご飯がおいしくまたビックリ。炊き上げ蒸らし上がったばかりのご飯でしょう…、みずみずしくて食べてるうちにみるみるうちに蒸気を吐き出しかっちりとした食感になる。
甘い、なにより香りがよくて丁寧に仕上げた料理と引けを取らない味わい。だからご飯を心置きなくたのしめる。
おいしい料理だからじっくり時間をかけて味わいたい…、と思うもおいしい料理はスイスイお腹に収まっていく。あっという間に甘味の時間。自家製の白ごまジェラートを食べてお腹に蓋をした。