人形町から大手町へと芳味亭

人形町の芳味亭が支店を作った。
しかも場所は大手町の新設オフィスビルの地下。悪い予感に行かねばならぬと、仕事の合間にやってくる。
下町老舗が支店をビルの中に出すということに関して、いい思い出、あるいはイメージがあまりない。
例えば同じ洋食の香味屋さんは劇場の中や百貨店の中にお店を次々出して、けれど結局、根津の本店ひとつに戻ってしまった。
老舗というのはその場所にあってこそ、実力全開となるモノで、支店となるとたよりない。
しかも支店の場所が本店のそれとまるで違ったビルの中。よそよそしささえ感じてしまう。そういう立地をものにするには今までずっと育んできた料理作りや接客の技術、経験などとは違った何かが必要となる。だからちょっとハラハラしました。

ビルの地下にキレイに造り込まれた立派なお店。
80席くらいはあるでしょうか…、この大きさかぁ…、とドキドキする。
ワクワクじゃなくてドキドキ。
大きなお店は気持ちが行き届かないことがあったりする。
どうなんだろう…、と思って料理をたのんで味わう。
結果は「杞憂」でありました。すべてにほどよき、いい状態。

スープとサラダがまずやってくる。
サラダ野菜はシャキシャキとした食感さわやか。温度管理がしっかりしてます。
スープは魚介類の出汁がしっかりきいたクリアなコンソメスープ。飴色をした玉ねぎがたっぷりそこに沈んでて、熱々。自然な甘みがおいしい。お腹をやさしくあっためて、メインの料理に気持ちがたのしく向かってく。
オーダーをタブレットから入力をして厨房に飛ばす仕組みに、ちょっとギクシャクしているようで、結局、口頭で注文を伝えるところになんだかホっとする。新しいコトがなんでもいいとはかぎらない(笑)。

メインはお弁当を選んでたのむ。本店でも人気の商品。お弁当箱が本店のとは違って楕円で、少々小さめ。分厚い塗り。しかも独特の色に塗られたオリジナルの弁当箱はさすがに数を揃えることができなかったのでありましょう。まぁ、しょうがない。
二段重ねで、蓋をあけるとまず料理。そして下にはご飯がキレイに収まっている。蓋を開けた途端にフワリと立ち上がるデミグラスソースの香りがまさに芳味亭。長い歴史の中で生まれたゴチソウソースがココ大手町にもやってきた…、って思うとウットリ。

お弁当箱の中にきっちり、色とりどりの料理が収まる。
トロリと黄身がとろける茹でた玉子が半分。
黄身に塩がパラリと少々。黄身の甘みがひきたつもてなし。
玉子の下には細かく刻んだキャベツで作ったコールスローが敷き詰められていて、シャキシャキしっとり。軽い酸味が玉子をおいしくしてくれる。
玉子の向こうにはポテトサラダ。これまたシットリ。
レモンにトマトが風味を添える。

お弁当箱の反対側にはミートボールとビーフスチュー。シチューではなくスチューというのが歴史の粋です。
弁当箱の真ん中にフライがふたつ。クリームコロッケと白身魚のフライでそれを仕切る自家製ロースハム。本店のお弁当と同じしつらえにニッコリします。
フライはクシュッとパン粉衣が儚く壊れ、ベシャメルソースはなめらかで白身魚はスベスベとろける。ハムはむっちり、思わずビールと言ってしまいそうな味わい深さ。オゴチソウ。

牛肉を細かくひいて丸めて作ったミートボール。口の中ではらりとほぐれる。デミグラスソースでジックリ煮込まれ肉汁と一体化して舌の上でとろけて消える。
このミートボールとデミグラスソースをパスタにかけたミートボールのスパゲティーが本店にはないココ限定のランチの商品。さぞおいしいに違いないと思いながら、トロトロに煮込まれたスチューとご飯にからめて食べる。
肉も脂もトロトロで、ネットリ舌にからみつく。ソースをまとったご飯もポッテリ、まるで違った食べ物にしてくれるのがおもしろきとこ。大人の値段もさもありなんと思って食べる。時間をかけてココで新たな歴史ができるといいなと思う。また来よう。

 

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