五代目下町天丼秋光…、というビジネスモデル

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北に向かって移動の途中、途中下車を浅草でして気になるお店に立ち寄った。
下町天丼秋光という店。名前の通り天丼、天ぷらの専門店で開店したのは去年の3月。一年以上経っても未だに人気が持続しているお店。
実はこの店。吉原大門というかつての花街の入口。今ではすっかり町外れになってしまった場所にありつつ、連日わざわざやってくる人の行列途切れぬ名天丼店、「土手の伊勢屋」の五代目さんがやっている。それが人気のきっかけでもある一風変わった生い立ちがちょっと気になっていたのであります。

godai-tendong-siru場所は浅草ROX-3D。
インバウンド向けのテナントが入った商業施設。ちなみにお店の隣は一風堂で、狙いすました感があります。
入口脇。通りに面したところに揚げ場。
それから穴子を活かした水槽が作ってあって、そこで写真を撮る人多数。
天ぷらが揚がるところも、穴子がクネクネ、水槽の中で泳ぐとこも外国の目でみると同じくエキゾチックなのでしょうね。
ただ白人系の人たちは穴子が怖くてお店になかなか入ってこない。
痛し痒しなエキシビション(笑)。

お店の中は作り込まれたモダンな日本。
床がカーペット敷きというのにちょっと驚いた。
掃除しづらく、しかも匂いをため込みやすい。だから油を扱う天ぷら屋にはあまり向かない床材で、どうしてだろう?って、おじさんちょっと悩んでしまう。
厨房の中は若い人たち。
天ぷら屋というより人気のラーメン屋って感じがするのがおもしろく、かつての常識が役に立たない異次元レストランって感じかなぁ…。

メニューはシンプル。
土手の伊勢屋でおなじみの「い」「ろ」「は」とここの特製数種。それぞれ天丼、天ぷらが選べるようになっていて、まず昔からの一番人気の「ろ」をたのむ。友人はここの名物「五代目特製」。それぞれ汁を追加する。

godai-ro穴子の天ぷらが名物で、その穴子がついた天丼で一番手軽な値段のメニューが「ろ」なのです。
エビの天ぷら一本にイカのかき揚げ、シシトウがつく。
エビはふかふか。加水をしてはいないのだけど、ムチュンと歯切れる食感が無い。イカのかき揚げは薄衣すぎて、食べてる間に衣が剥がれ、イカの素揚げになっちゃうんです。
ムチムチとした食感、甘みは強くてそれはそれでいいかとまぁ、我慢(笑)。
ただ、穴子の天ぷらは見事です。
噛むとジュワッと油がにじむ。肉はふっかり。やさしく歯切れてとろけてく。旨味上品。脂ののりも見事なもので、口の中が満たされていく。
ご飯を一緒に食べるのがもったいないほどのおいしさで、もしかしたらここの天ぷらは、丼じゃなく定食で食べた方が、その実力をはっきできるのかもしれないなぁ…、って思ってしまう。存在感。

五代目特製にはこれ以外に、季節の魚がいくつか加わる。
今日はハタハタ。感じで書くと鰰で、木に神さまの榊くんには同族的に思えてちょっと手が出ない(笑)。実はボリボリネトネトとした卵が苦手で食べられない。それから牡蛎と子持ち昆布。どちらも食感独特で、やっぱりこれらも天ぷら定食で食べたい天ぷら。思わぬ実力、発見す。

g-kakig-kazunokoちなみに四代目さんは元気に本店「土手の伊勢屋」を守ってる。
老舗の繁盛店だから家賃もかからず、十分食っていけるだろうけど、そこで幸せにできる人の数には当然限りがあって、とはいえバリバリ、店を増やすタイプではない。何より暖簾を守るというコトと、事業拡大は相容れないコトでもあって、だから未来の大部分を若くてリスクを恐れぬ人に託したのでしょう。

屋号はやらぬ。けれど実力があるものに、五代目は襲名させよう。
本店に縛られぬことがない場所で自由にやんなさい。君らにとって世界は全てフロンティア…、って感じなのかもしれません。
それに答えて、五代目秋光。続々、世界に出店してる。暖のれん分けじゃない新たな方法。事業継承の一つの方法…、って思ったりする。感心です。

 

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コメント

  1. あや~ん

    カーペット…
    確実に滑らないですね。杖をついてる人間にとって、天ぷら屋さんとかとんかつ屋さんとかに限らず、油を多く使うお店って、たまーに床が油で滑って怖いんですよね。ステーキとか、ハンバークの専門店なんかもそうかも。そういう場所はいつもより気をつかって歩くのですが、カーペットだと絶対に滑らない安心感があるなぁ…と、ぼんやり思ってしまいました。

    • サカキシンイチロウ

      あやーんさん
      かなり毛足の長いカーペットでした。しかもまだ新しく見えたので、定期的に貼り替えているのかもしれません。
      だとしたらかなり贅沢なお店です。

  2. 通りすがり

    伊勢屋のHPでは、2015年に4代目を継承、5代目は現在修行中という事になっていて、五代目秋光は認めていないようですよ。
    2004年に五代目になり、2014年に経営者になったのに、4代目復帰で店を出る、というのも不自然な感じです。
    真相は相当複雑で表に出せる話では無いでしょうけど。

    • サカキシンイチロウ

      通りすがりさん
      そうなんですよね…、事情がなかなか複雑なようで。
      事業継承において、例えばお免状のようなものがでるわけでなく、口約束であるとか、思い込みであるとかで「そんなつもりじゃなかったんだけど」というようなコトがままあったりする。
      真相は闇の中ですね。
      秋光さんは海外事業展開に一生懸命なようで、ある意味、同根でありながら向かう場所を異にし、結果、どこかで伊勢屋の味が生き残るのであれば、それもよしなのかもしれません。

  3. ふみふみ

    通りすがりでコメント失礼します。
    こちらの秋光さんですが伊勢屋さんの5代目として営業されていたのは間違いありませんが、かなりきわどい事情があったと聞いています。
    裁判沙汰にもなったとか・・・
    事実、今現在の秋光さんの公式㏋には「土手の伊勢屋で5代目を襲名」といった文言は消されていますしね。
    お客様からしたら味が美味しければどうでもいいというかもしれませんが、長年地元の老舗に親しんできた身からするとあまりいい印象は受けないというのが正直なところです。
    ちなみにこれらの情報の出どころは伊勢屋さんのご主人(若林さん)からうかがった話です。

    • サカキシンイチロウ

      ふみふみさん
      私もそのような話を直接伺いました。
      ただ、他の筋からの話では、たしかに一度、襲名させてしまったという事情もあったようで、喧嘩両成敗だったのかもしれません。
      幻の五代目さんは随分やんちゃな方。しかもかなりエネルギッシュな方でもあって、おそらく土手の伊勢屋のブランドがなくともある程度の成功をおさめることができたに違いないとは思えます。
      どちらにしても「ブランドに頼るようではダメ」というコトなのでしょう。

  4. TOMIT

    秋光ってENグループの天ぷら業態のようなんですが、谷原秋光氏が売却したのか、あるいは元々ENグループがスポンサーだったのかわかりませんが。
    http://en.com.hk/main/index.php/locations/akimitsu/?lang=ja

    • サカキシンイチロウ

      TOMITさん
      ありゃりゃ、これはへんてこりんなお金がついちゃったみたいですネ。

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