ミツコシトクショクヒラメのボンファム

日本橋の三越本店、特別食堂にヒラメのボンファムを食べに来る。
日本橋の三越自体が特別な百貨店です。三越駅前って駅があって中に入ると大きな吹き抜け。パイプオルガンが鎮座している百貨店のまさに王様。
その7階に特別食堂があってここが特別極まりない。
お店の名前は日本橋。ゆったりと配置されたテーブルには布製のテーブルクロス。ナイフフォークも分厚くずっしり、キラキラしてる。洋食と和食に寿司が用意されてて、お店の一部は旭鮨総本店の寿司カウンター。
洋食は東京會舘が担当していて、週末にはローストビーフのワゴンサービスがあったりもする特別な店。日本のフランス料理や上等な洋食における東京會舘の存在感は特別でもあって、基本に忠実。手間を惜しまぬ料理をいつでも味わえる。

改築前の東京會舘が好きだった。新しくなってから新しい料理を売りたがるちょっと面倒くさいムードになってて好きじゃなくなった。それでもっぱら交通会館の回るスカイラウンジに行ってたんだけど現在そこは閉鎖中。それで、日本橋の特別食堂を選んだ次第。
まずコンソメで気持ちとお腹をあっためる。
白い器を黄金色に染め、芳醇な香りと共にやってくるコンソメ。一口飲めば力強い旨味が口に広がって、スッキリとした酸味が後口ひきしめる。
透明でスプーンですくうと銀色だったスプーンが黄金色に輝きはじめるうつくしさ。サラサラしていてなのにドッシリ濃厚で、牛肉の旨味や風味、そして滋養がギューッと凝縮されているのをしみじみ感じる。

飲んでるうちに唇同士が張り付きはじめるんですネ。
牛骨由来のゼラチン質。
体の疲れをお腹から修復してくれるに違いない、カップ一杯で気持ちも満ちるオゴチソウ。

そしてメインの到着。今日のお目当ての舌平目のボンファムです。
お皿はソースで満たされてその中央にこんもりヒラメの切り身。ソースの中にはホワイトマッシュルームの薄切りがたっぷり入って、こんがり焦げ目がついている。
お皿に顔を近づけると、マッシュルームの香りにむせる。ヒラメはふっくら。切り身の形は崩れぬように、けれどしっとりなめらかでソースと渾然一体となる。ヒラメの煮汁にワイン、小麦粉、バターがひとつに混じり合い見事に乳化したなめらかにしてぽってりとしたソースの濃厚なこと。ヒラメを食べてもたっぷり残り、パンで拭って食べるとパンのボンファムの出来上がり。

ヒラメと一緒に食べるよりパンにソースをたっぷりまとわせ食べたほうが、ソースの味わいを思う存分たのしめる。フランス料理ってソースの料理なんだなぁ…、ってしみじみ思う。
思いながら一口、そしてまた一口とパンで拭ったソースを食べたらお皿が洗ったようにキレイになっちゃった。
それにしてもサービスがよいことに感心します。厨房から近いわけではないテーブルに熱々の状態で料理を届けようとかなりのスピードで歩くてくる。なのに急いでいるようにみせぬ優雅な歩き姿や、テーブルの上の状態を絶えず見守る気配り、気遣い。
お水だけでなく緑茶が提供されるところがまた特別。東京會舘ではありえぬサービス。満足しました。オキニイリ。

 

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コメント

  1. batten

    流行も悪くは無いですがきちんとした仕事の料理は安心で美味しいです。
    ただ、昔の仕事は見栄えが悪くても下準備が多いから、今時の子は魚料理ならカットして焼くか蒸してソースですから。
    私のところのレストランも魚はただポワレなのに、焼きあがってからの手が多すぎで冷めた温製。
    これは、雑誌などが悪いのです。フィニッシュに一皿二人のロブション仕事を真似できるはずがない。
    そう、スープをメニューから外す店も増えましたね。

    • サカキシンイチロウ

      battenさん
      顆粒のコンソメをお茹でといたようなスープを出されてしまうのであればむしろメニューに無いほうがホッとできますよね。
      ポタージュもレトルトであることが当たり前になってきましたし…。
      お客様の知らぬところでする仕事。その丁寧と徹底こそが料理をプロの料理にしてくれるのですけれど、そこにお金を払ってくれるお客様が少なくなった。
      もったいないことです。

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