マダムでシニアなとんかつの店、匠庵

昼、新宿伊勢丹の食堂街のとんかつ専門店で昼食をとる。
とんかつ和幸ってチェーン店がやっている「匠庵」という上等ラインナップのお店であります。
とんかつ和幸といえばファミリーやサラリーマンにやさしい大衆的なとんかつ店です。伊勢丹の食堂街に集まってくる客層にはいささか不似合い。シニアのお客様やご婦人方のちょっと背伸びすれば届く贅沢を提案できる店じゃなくちゃと、この場所向けに作ったブランド。
一人客用の大きなカウンターの中にオープンキッチンがあって、調理する人たちの姿も凛々しい。
このムードに負けぬ上等な工夫があります。
料理を注文するとすかさずやってくるのが生野菜に漬物4種。調味料もソースに醤油、生野菜用のゆずドレッシングにごまドレッシング。塩に芥子と多彩でそれらを全部いちいち説明していく。それをじっと笑顔で聞いてると顔が疲れてしまうほど(笑)。

ちなみに生野菜は2種類あります。ひとつはとんかつ専門店では当たり前の千切りキャベツ。もう一種類は野菜サラダ。野菜サラダが選べるというのは野菜をたっぷり食べたいと思う女性や健康志向のお客様にはいい工夫。
だって、千切りキャベツだけだとどうしても飽きるもの。食感が単調でどんなにみずみずしいキャベツもレタスのみずみずしさにはかなわない。ただたのんでやってきた野菜サラダが半分ほどは千切りキャベツで、生野菜入り千切りキャベツ…、って感じがするのがちともったいない。
漬物はセロリの浅漬け、大根の醤油漬けに柚子大根。それに昆布の佃煮とご飯のおかずにほどよい感じ。茶碗蒸しと大根おろしがついてみんなこれらを食べつつメインのとんかつがやってくるのを待つ趣向。

ただこの選べるということを、ありがたいと思う人と、面倒くさいと感じる人がいるようですな。
ボクの隣のおじさんは、まず千切りキャベツか野菜サラダを選んでという段階で心が折れて、調味料の説明を受けてる途中で、「とんかつなんてソースがあれば十分だから」ってギブアップ。
ただただもくもくと漬物食べてお茶飲んでいた。

百貨店の食堂街というのは「都会的」を絵に描いたような場所です。
そこに溢れているのは、目がくらむばかりの選択肢。
多彩な品揃えと多様な提案が用意されているというのが、都会で生活することの最大メリット。
そしてそれを好むのは男性でなく女性なんでしょう。
男はたいてい「○○でいいや」といいます。
女性は同じシーンで「○○にしようかしら」と答えます。前者はあきらめ、後者には好奇心とさらなる欲求が含まれている。つまり、都会的であることを心おきなくたのしめるのは「心の中の女性的な部分」であって、つまり「都会化は女性化」であろうと思ったりした。

選んだのは「夏膳」という今の一番おしの料理。ひれかつ一枚、オクラ巻カツにコロッケ、それからエビフライ。どれから食べようかと迷うたのしみに溢れた料理で、つまりこれも都会的。女性的なる料理のよそおい。

ロースカツでなくヒレカツというのがこの商品をたのんでほしい人にアピールする特徴。脂がすくなくさっぱりしていて、サイズがほどよくしかも上等なとんかつを食べたという気持ちになれる。ひれかつとエビフライの組み合わせは、おそらく自熟年女性に対する最終兵器のようなもの。
ボクもまんまとそこにのります(笑)。しかもそこにコロッケ。これがジャガイモコロッケならば男性向けで、ココはなめらかなカニクリームコロッケですからますますマダム仕様に向かっていきます。
野菜押しです…、だからオクラの巻カツがある。けれどこういう野菜を芯にして薄切りの肉で巻いて仕上げたカツは歯切れが悪くて頑丈。近くのマダムがこれを噛み切るのに難儀していた。これが薄切り肉じゃなくって、ひき肉でまとめた棒メンチのようなものだったらなおさら良かったかもしれないなって思ったりした。ご飯と豚汁でひとそろえ。熟年世代の気持ちがわかる、いいお年頃と自分を褒めた。お勉強。

 

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コメント

  1. すうさん

    お漬物、生野菜、内装が菩提樹(かつ吉)に似ていますね。。(‘ω’)

    • サカキシンイチロウ

      すうさんさん
      まさにそれ。あのお店は業界の人たちのあこがれのひとつ。でもあの贅沢さは真似しようにも真似できない何かがあるのでしょうね。水道橋にいってもっと勉強してらっしゃい…、って思いました(笑)。

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