マクドナルドは何を映しているんだろう…。

新宿のバスターミナルから出発の朝。
早朝ということもあってマクドナルドで朝食をとる。
ひさしぶりのことでござんす。

日本にやってきて50年近く。「豊かなアメリカ」を飲食店という形にすることで人気を博した。
やってきた当初はセルフサービスなのになんでこんなに高いんだろう…、と思ったけれど気持ちの良いサービスと空間付きで、しかもおいしくアメリカの人ってこんなたのしい食事を普通にしているなんて羨ましいなぁ…、って思ったものです。
半世紀たち、かつて日本で最高水準の「豊かな体験」を売っていたマクドナルドは、日本で最も安い食事を提供している場所となる。
安い食事で浮いたお金で、別の豊かな体験を買う。

日本の豊かが多様化したんだと思えばそういう新たな豊かに貢献している立派な会社…、と言えなきゃないけど飲食店の相対的な価値を貶めた張本人…、と思うと、そこにノコノコやってくるボクという奴に腹がたつ(笑)。
勉強ですからと言い訳しながら店に入ると、ひんやりしてます。

長い通路の両側にカウンターがあり、壁に向かって食事する人。
テーブルにいる人たちは背中を丸めてスマフォを見つめ、食事をするのは二の次で、そんな通路の一番奥に注文をとるカウンター。
無表情で作業をするのに必死なスタッフが注文を聞き、お金を受け取り商品並べての繰り返し。
つまらなそうな仕事に見える。
そう言えば入口脇にスタッフ募集の告知ボードが立っていた。
業種業態、規模の大小、地域を問わず飲食店は働く人に困っている。だから手を変え品を変えリクルーティングに工夫をこらして人材募集に力を入れる。けれど、最大にして最高で、しかもコストのかからぬリクルーティングの手段が現場。

そこで働く人が笑顔でかっこよく、たのしそうに働いていればそこで働こうという気持ちも湧く。
にも関わらずこのぼんやりとした暗さがおそらく、働きたい人を寄せ付けぬ結界的な役割してると、彼らは気づかずひたすら働く。大変だなぁ…、朝からため息、思わずついた。

ソーセージマフィンを買ってセットにし、飲み物としてミルクを選んだ。
そしたら「サイドの料理はハッシュポテトでいいですか?」って聞かれてびっくり。不意打ち的なる質問でした。
メニューを見ればアップルパイやナゲット、サラダが選べるようになったのですね。
客数を増やしてやろうとメニューの選択肢を増やすことを、顧客目線のサービスと考えるのか、品質の充実を犠牲にしながら目先を変えて客を呼ぶ…、と感じるのか。
その判断は微妙なところ。
本来、メニューはシンプルであればあるほどいいはずだから、こういう施策は好きじゃない。
こんな工夫をする前にハッシュブラウンをもっとおいしくすればいい。

チョイスを聞かれてハッシュブラウンとキッパリ答える。
ボクにとってココの朝はハッシュブラウンの朝と同義で、だからキッパリ。
そしたら若いスタッフが、「ハッシュポテトでいいですね!」と訂正しながら念をおす。マニュアル主義め!とちょっと笑った。しょうがない。

ソーセージマフィンもハッシュブラウンもかつてに比べてふた周りほど小さくなって、大きなトレイがスカンスカン。
そう言えばミルクのパッケージからマクロナルドが消えたんですね。
当然クイズもなくなった。あれをたのしみにしていた子どもたちも少なからずいたろうに…、ってしんみりします。
それにしてもソーセージマフィンが塩辛い。舌をさすような辛さに体が拒絶反応をおこして結局、ほとんど残してしまう。

包装紙でくるんでちょっとビックリしたのが「Sausage McMuffin with EGG」という表記。ソーセージエッグマフィンをたのんだわけじゃないのにこの包み紙。
間違ったのか。
それともそもそも合理化の故、ソーセージマフィン用の包み紙がないのかどうか。
こういうところに会社の魂がでるのに勿体無い。

そしてしみじみ、マクドナルドで食事をするって、こんなに貧しい気持ちになるんだってしんみりしました。
かつてマクドナルドは、日本の生活を豊かなものにするために店を増やそうとがんばった。がんばり、がんばり、日本中に豊かのタネを蒔いたつもりが、育ったモノは当初イメージしたものとかけ離れたモノになっていた。
がんばりすぎるとロクなことはない…、と考えることもできるでしょう。

けれど何より飲食店というものは、世間のムードを映す鏡のような存在で、日本のムードが今やどんどん貧しくなってる。だからぼんやりしていると貧しいムードが店の中まで映り込む。
とは言え必ずどこかに豊かなムードはあるもので、鏡の角度を上手に変えて豊かなムードを映す鏡にならなきゃいけない。…、とそんな戒め。思う朝。

コメント

  1. かっち

    確かに、世相を映しているようなお写真ばかりですね。
    大勢が背中を丸めている風景の写真を拝見して、予想以上に暗い気持ちになりましたので、反面教師にします!
    これからも不景気は続きますし、背中だけでも綺麗にして、前を向いていたいものですね。

    • サカキシンイチロウ

      かっちさん
      今の人たちって、自分たちも景色の一部だという意識が低いように感じます。
      否応なしに見られている。
      どうせ、見られているんだからステキに見られたい…、という気持ちがファッションやマナーを産んだに違いなく、だから今、その両方が絶滅の危機にあるのかもしれません。
      背筋を伸ばし、胸張って笑顔で毎日すごしたいですね。

  2. kiko

    あぁ・・・という言葉しかでません。
    30年以上前になるでしょうか。ほのぼのとしたアトラクションもまだ健在だった当時のディズニーランドに行く前にマクドナルドで朝食を食べたのを思い出します。
    スクラブルエッグやパンケーキを、プラスチックのフォークとナイフでいただいた記憶があります。
    現在のほうが多様で豊かな朝食をいただけるのでしょうが、その時のウキウキワクワク感は今でも鮮明です。
    外で食事をする時は特に背中に意識を集中させます。サカキさんの教えです。(笑)

    • サカキシンイチロウ

      kikoさん
      1970年代から80年の半ばまでが日本の外食産業のピークだったような気がします。
      お店の人たちも、お客様も夢をもとめて飲食店の見つめて、接していた時代。特に今、チェーン店には夢がないですね…、夢を見ているのは経営している人たちやお金をつぎ込んでいる人たちだけ。それも「お金がみる夢」。
      もしかしたら飲食店だけじゃないのかもしれないと思うと、なんだか惨めな気持ちになっちゃう。だから背筋を伸ばしてキリリとしましょう。ひとりでも多くの人の背筋が伸びれば、まだまだ日本は大丈夫。

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