プラスチックのおもてなし

羽田から出発する朝。久しぶりに「HITOSHINAYA」に寄ってみる。
鉄とガラスの塊の空港ビルの中に日本家屋が建ってるような不思議な空間。
カウンターだけ。羽釜があって調理人が黙々と料理を作る様がとても印象的で、出来たときにはビックリしました。
料理もほどよく、しかも朝早くからやっている。
カウンターに座るとまず、湯呑みに出汁が注がれストンと置かれるサービスも粋でうれしい。
今日もまずはゴクリと飲む。…、といささか味の趣が変わったようで、あれっと思う。香りひ弱で最後の酸味がかすか。味の輪郭がぼんやりしてる。なにより湯呑みが冷たくすぐに出汁の温度が下がる。

おかゆの定食をたのみます。大きな塗りのお椀にお粥。べっ甲あんがタップリついて、木箱におかずが5点。お粥の薬味が3種つき、そして漬物。
あら、いけません。漬物の向きが前後逆ではございませんか。些細だけれどこういうところにこだわってこその日本料理、そしてもてなし。
菜っ葉のおひたしの出汁は確実。菜っ葉自体より器に残った出汁を飲むのがたのしくなるような味わい深さ。豆腐の上には出汁のジュレ。大根おろしも酢を混ぜた出汁で味わう。何を食べても統一感があってホっと気持ちが和む。
ただ梅干しに添えられた昆布が出来合いの塩昆布。ここに本来あるべきは、出汁をとった後の昆布を煮込んだものであるはずで、あぁ、出汁がおいしくはあるけれど、ココで作ってるわけじゃないんだ…、としみじみ思う。

そしてメインのお粥であります。
茶碗に椀からうつそうと、茶碗を持ち上げるとびっくりするほど軽いのですね。
白い陶器の器かと思ってもったらなんとこれがプラスチック。
手に冷たくて唇つけると絶望的なほど貧しい感触。
忙しい店だから壊れることを恐れたのか…、と思うも他の食器は陶器や漆器。なのにメインのおかゆをよそおう器がプラスチックというこの感性。あぁ、ダメだなぁ…、としんみりしました。
目は騙せても手は騙せない。
手をごまかせても唇は絶対騙せぬ…、にもかかわらず手で持ち上げる機会がほとんどないであろう漬物皿や大きな鉢は本物というこの馬鹿らしさ。
「日本のもてなしを世界に」と大ぼらを吹いたこの店。効率のためならプラスチックを使って平気な、たしかにそれが今の日本のもてなしレベルって教えてくれた。皮肉なコトでござります。

 

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出発までをコーヒー飲んでぼんやりしようとイセタンストアのカフェに来る。
客席レイアウトが変わっていました。まず客席の数が減らされ、テーブルがみんな滑走路の方に向かって並んでる。客席が少なくなればいつもガラガラの印象が薄まる。それに飛行場のレストランに来る人はみんな飛行機を見たがるに違いない…、という浅はかな考えに笑ってしまう。
ちなみに窓際の席はベンチシートです。ほとんどの人は座りやすさを優先して窓に背を向けて座ります。結果、窓側にむいたテーブルに座った見ず知らずのおじさんとお見合いをするハメになる。
目論見は往々にして空回りするもの。コーヒーを乗せたトレーを見ると上にロイヤルグループ共通の紙おしばりが置いてある。なるほどオペレーションが変わったんだネ。空回りする工夫が今やロイヤルグループのお家芸。しょうがないなと思って酸っぱいコーヒーを飲む。

 

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コメント

  1. Comfort

    (以下、榊様が窓際のベンチに着席されている前提で記述します。間違っていたら御免なさい。)

    恋人二人連れが窓際のベンチでない椅子に座り二人で飛行場を見て語り合う、、、素敵です。
    (目の前のベンチシートは荷物を置くのに便利です。店内中央だと窓際に客がいたら邪魔だし。)

    羽田は日本で最も賑わう空港ですから例えば、友人の結婚式で東京に着た女性二人連れ、
    空港で偶然幼馴染と数十年ぶりに出会った初老の紳士達二人、とかが
    「お茶でも飲もうよ」とイセタンストアのカフェに入るかも。
    で、、、どの席がお勧めでしょうか?
    窓際の4人席?(厚かましく二人で使う?)
    それとも、店内中央?(二人並んで飛行場を見て語り合う?)
    謎です。

    榊様>空回りする工夫が今やロイヤルグループのお家芸
    経営陣にも考えがあっての事と思いますが御客様(一般人:素人)の思いと剥離してなければ良いのですが。

  2. サカキシンイチロウ

    Comfortさん
    窓際のベンチ席の中で、人気の無いテーブルがひとつあります。
    四人がけのテーブルでキッチンのカウンターがすぐ近くまで迫った壁際。一旦座るとちょっと出入りがむつかしい、四人席なのに二人で座ることを想定して作られたようなテーブルです。
    そこに二人、対面で座るのでなく並んで座る。そのときは厨房を背にして滑走路の方に向かって座ると、ほぼ完璧なプライバシーを味わえます。天気が良ければ目の前に富士山。会話をかわさなくてもゆったりとした時間の流れを感じることができる。そもそも人気のない席ですから、長居しても申し訳なく感じないのもいいところ。
    ただ、居心地良すぎて呼び出しのアナウンスで自分の名前を呼ばれてしまう可能性あり…、というのがたまにきず。

    …、と、すっかり頭のなかにお店のレイアウトが刷り込まれてしまうほど、やはりこの店が好きなんでしょうね。
    文句を言いながらも付き合ってくれるお客様のことを大切に思う気持ちがまだこのグループにあれば良し。
    へんてこりんなマーケティングのプロや声高に自分を主張する人たちの言うことばかりを聞くようになったとしたら、未来は儚い。
    微妙なところと存じます。

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