バーフバリ:王の凱旋

ものすごい映画をみました。
「バーフバリ・王の凱旋」というインド映画。
2015年にインドで公開された「バーフバリ・伝説誕生」という映画の後編。前編をDVDでたまたま見たのが昨年の夏。
前知識も何もなくTSUTAYAの棚をみていたら「インド歴代ナンバー1」という札が貼られたジャケットに「一人vs王国」という勇ましい文字が踊って、なんじゃこりゃ…、って思って借りた。
そしたらそれがスゴイ作品。
こってりとした映像で紡がれるこってりとした愛憎劇。

一つの王国に王子が二人。
一人は名君と讃えられた今はなき国王の息子。母も亡き、つまり王子にして孤児。もう一人は国王なきあと国のすべてを任された「国母」と呼ばれる国王の義理の姉の子。
つまり二人の王子はいとこ同士でありながら、兄と弟のように育つ。
弟がバーフバリです。
国母は二人の王子にひとしく愛情を注ぎ、成人の後、どちらかすぐれたものを国王に任命すると約束します。
兄は野心家に、弟は慈しみ深い大人に育つ。
国母は弟、バーフバリを国王に任命するのだけれど、なぜだか彼は殺されるのです。しかもバーフバリを殺したのが「王家の犬」とまで言われる忠実なバーフバリの家来であった!

…、という父の生い立ちを、自身の父を殺した「王家の犬」から聞かされたバーフバリに生き写しの息子が本当の仇をとるべく立ち上がる。というのが一作目のあらすじ。
二作目の冒頭に前作の総集編的フィルムが流れるのだけれど、5分たらずのそのあらすじをおいかけるだけでお腹いっぱいになるほどこってり。
続編のテーマは「なぜ、忠実な家来がバーフバリを殺さなくてはならなかったのか」というもの。妬みと陰謀、ありとあらゆる策略が渦巻く王家のドロドロがこれでもかって、洪水のごとく押し寄せる。
正義に誇り。
豊かで深く、故に愚かな母性のいたずら。
あぁ、なんて人間って業が深くておろかしく、けれど愛おしい存在なんだろう…、って物語の中にグイグイ引きずり込まれてく。

それにしてもバーフバリ、あるいは生き写しの息子の強いコト。
冷静に考えるなら、それはないだろう…、ってほどで、例えば大木を片手で引っこ抜いてブンブン振り回します。
重力を完全に無視して飛ぶ、舞う、回る。
そのさまを描く映像が極彩色。スローモーションが効果的に使われているから、「動く紙芝居」をみているような不思議な気持ちにさせられる。二時間半の上映時間、ずっと何かが起こっていて没頭感も半端ないから疲れる、疲れる、肩がこる。
でも一瞬たりとも見逃すまいかと、目が乾くほどずっと見ちゃう。スゴイです。

男か女かわからぬようななよなよしたヤサオトコはただ一人として出てこない。
栄養失調なんじゃないかと心配させられるヤセギス女もいやしない。
神々しくて思わず手を合わせたくなるような映像に、心揺さぶる見事な音楽。踊りうつくしく、しかも画面の隅々にCGではない本物の人がいて演技をしている。CGが甘くなってしまうことがあるけれど、それもあまりにリアリティあふれる物語を、これはファンタジーだと現実に引き戻してくれる薬のようなモノだと思えばいいかもしれない。
これぞ映画。映画館で観るべき映画だと思うのだけど、残念ながらほぼ単館…、というのがなんだか悩ましい。

コメント

  1. はっち

     本当だ!これは映画館で観たい映画です。
    ゾウがこんなに沢山出演しているのもすごいし、どこまでCGかわからないくらいすごいアクション。スケールの大きさが、さすがインドだなあと思いましたよ。インドにも行ってみたいなあ。

    • サカキシンイチロウ

      はっちさん
      スゴイ映画でしたよ。こんな映画を見ちゃうと、日本の映画ってどれもテレビの延長線上にしかないんだなぁ…、ってがっかりしちゃいます。

  2. りんご

    男か女かわからぬような・・・以下、同意しすぎて膝を打ちまくりました。
    びっくりするくらい目が大きくて、顎が小さくて、背は高いのに、「何食べてるんだろう?」と考えてしまうような細身の男性や女性が増えましたね。
    試着室で冷や汗をかくことなんて一生ないんだろうなぁと羨ましく思うこともありつつ、何とも言えない違和感も感じてしまいます。
    ・・・試着室での冷や汗は、かかないに越したことはございませんけども!

    • サカキシンイチロウ

      りんごさん
      試着室で冷や汗どころか、脂汗をダラダラ流してしまう私めでございます(笑)。
      なんだか人間がどんどんアニメのキャラクタのようになっていってしまう日本のこれからって、大丈夫なんだろうか?って思いますよね。確かに、アニメぐらいしか日本が誇れる映像コンテンツは見当たらなくはありますが…。

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