ディナーとしてのイタリア料理を考えてみる

alzo2alzo1つくばに移動で試食の仕事。アルゾーニというイタリアンレストランで、新たなメニューの模索中。

勢いのある若いシェフががんばっている。
気軽なお腹いっぱいを約束していた大型レストランでも働いていた。
その後、小さな高級レストランでも経験を積み、半年ほど前にこの店にきた。
だからいろんなお客様の気持ちがわかる。
調理人として「料理を沢山しってること」より、「お客様の気持ちがわかること」の方がよい経験でよい資質。
特にこの店…、地方都市の郊外立地にあるお店。
けれどつくばという街は、東京のような消費を好む人たちが少なからず住んでいて一筋縄ではいかぬ街。だから一層、彼のキャリアが活かせるように感じてちょっと力を入れる。

昼はご婦人方で大にぎわいで、けれど夜はいささか苦戦。ディナータイムのコース料理がかた苦しいと思う人たちにもアピールできて、しかも気軽に楽しんでもらえるような料理をと、今日の試食となった訳。

al cakesここに限らず、今の外食産業は夜の集客に苦労をしてる。
時間をかけてじっくり食事をたのしんでいただく。
それでこそお客様に対する「おもてなし」の発揮のしどころがあるはずで、飲食店の花形タイムはやはりディナータイムであるはずなんです。
まず来てもらう。
来てもらえなきゃ、どんなに技術を磨こうが、どんなにお客様のコトを想って準備しようが報われる確率が低くなるから、なんとか夜に魅力的なメニューをまずは整えましょう…、とそれであれこれ。

料理が整うまでをまずは季節のケーキの味見。
1時間ほど前にアップルパイを食べていたのに、これも別腹?(笑)。
ズッとフェミニンな食感のふっくらケーキを得意にしていたパティシエーヌたちの、ちょっと趣向を変えたドッシリしたケーキたち。悪くないなと感心します。
抹茶を練り込んだモンブラン。ピスタチオのしっとりとした生地にフランボワーズのバタークリーム。上にナッツを散らしたケーキ。
コレ以外にもザバイオーネのグラタンだとかどっしりとした味わいのケーキあれこれ。存分に甘いケーキはやはりおいしい。

al pizzaal riso肉や魚の料理がおいしいのは当たり前のコト。
でもおいしい肉が食べたければステーキハウスや焼肉の店を選んでしまう。
おいしい魚が食べたければ、居酒屋に行くのが一番いい…、ってお客様はしっている。
だからディナーのメインにふさわしいピザやパスタが揃っていてこそ、地方都市のイタリアンレストランは人気をちょうだいできるのですね。
それでディナータイムにしか作れぬピザやパスタを試す。

水牛のお乳で作ったモッツァレラチーズでマルゲリータを作ってみる。
おいしい。
ただチーズから水がにじみ出てきてピザのソースを水っぽくする。チーズ自体を味わう方がいいだろうから、ソースを使わずビアンカで…、って、作ってもらうと、これがおいしい。
料理を構成する、何にスポットライトを当てるかで料理の印象はガラリと変わる。これも差別化のひとつでしょう…、と、ブラッシュアップして売り物にする。

リゾットも、リゾット用のイタリア米を使って貝にエビをたっぷりのせる。こういうパスタはよくあるけれど、なぜだかリゾットで具だくさんなものは少ない。お米の料理というよりも、魚介類をたのしく食べる料理として再構築。
あと何度か試食をしながらアイディアを出し、それをまとめてツユどきまでには新たなメニューがデビューする。

 

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コメント

  1. 匿名

    夜の集客に苦労するということは、ディナーは家で家族と食べる人が増えている、とも考えられる。これはいいことだと思います。まあ日本が全体的に貧乏になったこともありますけど。

    昼は親は仕事、子どもは学校、専業主婦も有閑マダム集団でどっかに食いに行くわけですから、ディナーを考えるよりランチに全力も出して平日の夜は休むくらいでいいんじゃないか、と最近思っています。家族で外でディナーを楽しむにしても平日はまず無理なわけだから。

    いっそ、夜の営業は21時から3時みたいに、ディナー時間を外し深夜営業にしたほうが、残業や夜の仕事の人たち用に客が入るんじゃないか? とすら思う今日このごろ。
    私も仕事で遅くなることが多いのでたまに思うのですが、深夜は「ちゃんとした食事」がほぼ不可能。コンビニは寂しいし、居酒屋だけじゃ定食のようなバランス取れた食事は厳しい。
    差別化として、そういう店があってもいい気はしますね。居酒屋ではなくレストランとして。

    ま、これ言っちゃオシマイなんですが、そもそも健康的にも(濃い味付けや脂過多というだけでなく、添加物の観点からも)コスト的にも自炊するのが一番なわけで、本当は外食なんてしないにこしたことはないのです。

    もともと文字通り掃いて捨てるほど飲食店だらけの日本が異様なだけで、これは決して「食文化を大切にしてる」というわけではない、と個人的には強く思ってます。むしろ、その逆ですね。

    • サカキシンイチロウ

      たしかにそのような飲食店も多いでしょう。
      けれど、そういうさみしい飲食店だけではないのが外食産業のステキなところ。
      お好きな飲食店はありませんか?
      贔屓にしたいと思う人やお店はありませんか?
      もしそうしたお店にまだ巡り合われていないのならば、それはとてもさみしいこと。
      ボクは、飲食店で食事もしますし、それと同じ愛情と熱意をもって料理を作ります。
      自炊の料理がおいしくできるのも、飲食店という先生がいてくれるからこそ。
      その先生からすっかり卒業してしまうことが果たして文化的でシアワセなことなのか。
      ボクは違うと思います。

  2. 匿名

    内容が内容だったのでまさかお返事を頂けるとは思っておらず驚いています。ありがとうございます。

    実を言うと、全国中のチェーン店を排除すれば大半の問題は解決する、と安直に思ってる超過激派です(笑
    掃いて捨てるほど、というのはそういうお店を指していったつもりでした。言葉が足りませんでした、申し訳ない。

    ただ、やはり飲食店に限らず、今の日本の「食」は私にはどうしても危険物取扱に近い考えでおります。
    チェーン店の料理は言うに及ばず、店によっては個人経営の店すら、
    いったいどこの素材でどういう添加物を使ってどういう料理の仕方をしているのか本当にわからない。

    そもそも飲食店は、法律で使ってるものを明記する必要がないのですから完全なブラックボックスです。
    まだコンビニやスーパーの弁当や惣菜のほうがマシ。パッケの裏に「これでもか!」と危険物が書かれてるから。
    つまり、ハナから買わなければいい。しかし大半の飲食店はそんな記載はありませんからバクチです。
    で、それらをちゃんと明記している飲食店だけで食べようとすると、かなりの出費を覚悟しないと不可能ですよね。

    サカキさんは、「そうしたお店にめぐりあえて無いのは可哀想」、と仰る。
    しかし私は貧乏なのでそういうお店ばかりで食べれないし、庶民的な値段のお店に行ったとして、
    まさか店主に「あなたの料理は安全ですか」なんて聞けないでしょう。「自炊の料理がおいしくできるのも、
    飲食店という先生がいてくれるからこそ」というのもわかりますが、味じゃなく、それ以前の問題なんです。

    そして、それらを判別できるのはサカキさんのような職業柄「中から見れる」人だけであり、
    大半の一般人にとっては手段がない。残念ながら、私はまだそういう素晴らしい店を見つけられていません。

    なぜなら、その方法がわからないから。あまりに膨大な店の数を前にして、佇んでる状態です。
    チェーン店を全て外しても、です。膨大な数の店を一軒一軒しらみ潰しに探すなんて物理的に不可能です。
    サカキさんのブログは、そういう意味で素晴らしい指針になるのでいつも拝見しておりますが、
    私はまったく別の土地に住んでいるので、いつも羨ましいなあと思いつつ読んでいます(笑

    昔は、その土地にあるものでしか料理ができなかった。変な添加物も変な農薬もなにもなかったから、
    逆に余計な心配をせずに普通に食べれていた。懐古主義なのはわかっていますが・・・
    そもそも、食文化を「自由資本主義経済」に組み込んだのが全ての間違いだった。もう後の祭りですが。

    そういう意味もこめて、店の数ばかり増えて、効率ばかり重視して、そのせいで良心的な店がどんどん消え、
    生き残るためには「ヤバイ素材、ヤバイ調理」をする必要も出てきて、それをしなければ高価な店になる
    ・・・そんな日本の食に対し、「掃いて捨てるほど店がある=食文化の崩壊」と書いたわけでした。
    ブログを汚してしまってすみません。
    いつしか、日本もサカキさんがいつも行ってるような素晴らしい個人経営の飲食店だけになるといいなあ。

    • サカキシンイチロウ

      ボクも日本の外食産業のコトを考えると、ため息がでてしまうことが多くなりました。
      お客様を喜ばせるコトよりも、お金を儲けることに一生懸命になってしまっている産業の人たちや、おいしければいいんだ…、とばかりに、お客様の気持ちをほったらかしにして、グルメ気取りに血道を上げる人たちや、本来の飲食店の王道にいない人たちが目立ち、ほめられるような風潮も好きじゃない。
      自分が好きなものが、どんどん台無しになっていくのを見せつけられるって、なんて不幸せなんだろうと思うこともあります。
      でもそれに負けないように。
      どこかに純粋に飲食業が好きでガンバっている人たちがいるんだと思って、外食をたのしむことにしています。
      個人経営の人たちが報われるような世の中にしたいですね
      そして、その個人経営のステキな人たちに負けないようにとチェーン店の人たちもがんばってくれるような日本になると、ため息をつかずに済むのになぁ…、と思います。

  3. 茶碗交番

    ワタシは「贔屓の引き倒し」が好き!(笑)

    • サカキシンイチロウ

      茶碗交番さん
      引き倒される側もたのしいでしょうネ(笑)。

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