ダレノセイデモナイノダケレド…。

ぽっかり時間に隙間ができて、モスバーガーに寄ってみた。お茶でも飲もうと寄ったのです。
そしたらびっくり。カウンターの中に誰もいないのですね。
「すいません」と声をかけるもうんともすんとも答えがなくて、ひとりで営業してるのかなぁ…、人手不足ももう「業界内」の問題じゃなく、お客様の目に見えるようになってしまった。大変だ…、って思って気長に待つことにした。
レジ前をこれだけ長く空っぽにして心配のない日本の治安に感心しながら、待つこと3分。もう来ないからな…、とかなり立腹した表情のおじさんが階段降りて店をでて、おじさんのあと追うように降りて頭を下げるスタッフは、色の浅黒い外人スタッフ。クレーム処理をしてたんでしょう。

大急ぎでカウンターに入ってボクの注文をとる姿勢。言葉遣いが至極丁寧でしっかりしているところになんだか切なくなった。

カフェオレたのんで、でもそれだけじゃ申し訳ないような気がして、スパイシーチリドッグを選んで注文。番号札を手渡され、客席で待つこととなる。

飲食店において、どんな状況においてもひとりで店を守るというのは大変なこと。寿司屋や屋台のようにカウンターひとつでやれる商売ならばなんとかできる。それでも病気になってしまったら休業です。
それを60席近くもあるような大きな店で、しかもチェーン店です。
おそらく今日、シフトに入る予定だった人が急遽来れなくなったんでしょう。1人になった。ひとりだったらできないからと、店を閉めてしまえばいいのに「お客様にした約束は果たさなくては」と律儀なのか、会社のメンツを守りたいのか。
それに対して、がんばりましょう…、と頑張ってしまう正直で責任感のあるスタッフが今の外食産業の異常事態をしのいでる。そろそろ限界がきてるのになぁ…、って思ったりする。ちなみに、申し訳ないからと注文したスパイシーチリドッグのせいで厨房の中がドタバタしました。

彼が作ってサーブする。その最中もお客様がやってきて、その注文もとらなきゃいけない。
結局、到着した商品についてきたレシートに8分と、おそらく提供時間のことでしょう…マークされてた。ファストフードにとってはいささかかかりすぎ的提供時間。

このお店にいる誰のせいでもないこの問題。
飲食店で働くことを魅力的に感じさせなくなってしまった、業界全体の問題であり、にもかかわらずいまだに次々、店を増やし続ける強欲のせいでもある。
その一方で、安さを求めると同時に「お客様思いであれ」とよりよきサービスを求める社会の風潮はいまだ変わらず、利用者の貧しい気持ちと行動が業界全体を貧しくしていく。
なんと残酷な時代でしょう。
そんな中にあっても、スパイシーチリドッグはなんら変わらずおいしいままで、でも今日のような状態でこれを昔と同じようにおいしく感じろ…、ということ自体が無理な相談。勿体無いな…、と思って席をあとにする。

ちょっと歩いて池袋駅前にある地下鉄会社のビルの一階に、ゴリラコーヒーのお店があった。
ブルックリンから連れてきて、渋谷にあったお店はあまりの営業効率の悪さに売り場が半分になった。おいしいコーヒーを売り物にしても結局、スタバのようになれるでなくお店の中はコーヒー好きではなくて、打ち合わせの場所を探してノマドするビジネスマンや仕事場がわりに使う人たちで満たされる。
カフェオレ結構おいしんだけど、勿体無いなぁ。もしここが「スタバゴリラ」とかって名前だったらなんとかなったに違いない…、って世迷いごとを言って笑った。外食産業はますます不思議な業界になっていきそう。ワカラナイ。

 

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コメント

  1. koku

    本当に、そうです。本当にそう思います。
    哀しい国になりました。

    • サカキシンイチロウ

      kokuさん
      哀しんでばかりじゃいけないとわかってはいるのですが、弱音を吐かないと毒がどんどん溜まってしまいそうになっちゃいます。

  2. 匿名

    低賃金、長時間労働、どこからも内定をもらえなかった人が働くところ。
    私たち就活生(私たちの親世代も)は「飲食業界は底辺」というのは誰でも思っていることです。
    サカキさんのような方がいらっしゃるのに、どうして待遇改善がされないのでしょうか。

    • サカキシンイチロウ

      匿名さま
      水商売と呼ばれた時代が長く続いた飲食業。
      お客様と約束したことを守れなくて当然。
      あるいは、お客様と約束すらしないお店が沢山あって、それじゃぁいけないということで、ひたすら産業化に向かっていったのが1970年代から90年くらいの20年間でしたか。
      上場企業が次々生まれて、産業としても認められるようになりはしましたが、どうしても「他の人が休むときに休めない」。
      「自分のペースで働くことができない」ことなど、産業としてはかなり特異な性格を持ち続けた果ての今の状態。
      ボクは外食産業の人たちほど、一生懸命がんばり、勉強もし、お客様のことを考えて働く人たちは他にないと思っています。思っているのですが、がんばればがんばるほど、「もっと賢く、そして楽に働きたい」と思う人達から敬遠される産業になってしまう。
      飲食業界は底辺なのではなく、お客様に翻弄される産業であるがゆえに、職場としては厳しく、本当に好きな人しか働けない産業になってしまったのだろうと思います。
      会社からの待遇は決して悪くありません。
      一部のブラック企業と呼ばれる会社は確かにありますが、それとて外食産業特有のことではなく、たしかにもっと、産業全体が改善に向かって努力すべきことはたくさんあるとは思います。
      けれどお客様からの待遇は年々厳しく、その改善がなされるかどうかは産業側ではなく社会側にあってしまっているのかもしれないと思うと、なやましくてしょうがなく思います。

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