グランのメンチは日本一ってタナカくんが言う

タナカくんが好きだった食べ物のことを思うと、いろんなことを思い出す。
いろんな料理。いろんなお店。季節の味に地方のゴチソウ。
洋食で一番好きだったのは文句なしに神保町にある「キッチングラン」のメンチカツだったに違いない。
そう思って今日食べに来る。
本当は今度の月命日に食べに来ようと思っていたんだけど、その日は東京オリンピックの開会式。つまり祭日。お店が休みになっちゃうから、それで代わりに今日やってきた。
メンチカツとしょうが焼の盛り合わせ850円がいつもの注文。のんびり待ちます。
このお店が入ったビルには路地に面して洋食、ラーメン、日本料理の3つの店が並んでた。兄弟3人がそれぞれ店主を務めてて一番有名だったのは半チャンラーメンの発祥の店と言われたさぶちゃんラーメン。そこも含めて他の2店舗は廃業しちゃった。

実はキッチングランが一番最初に廃業しそうになっていた。
身内の方が引き継いで、めでたく再開。一番長命なお店になった。
体格のいい3兄弟でらっしゃった。
血を引く新しい店主も大柄な人。応援しなきゃね…、ってひとりでもよく来ていたみたい。
注文すると、カラーチップがカウンターの上に置かれる。
緑のチップはメンチとしょうが焼の盛り合わせ。白い小さなチップは半ライスの印でござんす。5分ほど待ち、料理の到着。
メンチカツにしょうが焼、スパゲティーのケチャップあえに千切りキャベツ。ご飯に味噌汁でひと揃え。こんがり揚がったパン粉はザクザク、歯ざわり軽快。メンチの中には粗切りにした玉ねぎたっぷり。ひき肉が蓄えた肉汁はうま味たっぷりで、揚げ物を食べているのに口が潤う感じがおいしい。

やさしい味のグレービーソースに中濃ソース、芥子をたっぷりのっけるようにして食べるのが好きだった。
しょうが焼も好きだったなぁ…、ちょっと厚めに切ったバラ肉がタレをしっかり吸い込んで焦がされ仕上がる。生姜の風味は最小限で豚の脂と醤油の香りが力強い。甘めのどこかすき焼き味って感じにご飯が進む。それで多分、好きだったんでしょう。
やわらかく茹で上げられたスパゲティーのケチャップあえ。千切りキャベツもどれもずっと変わらぬおいしさ。そういえばご飯の炊き加減がちょっとここのはやわらかく、硬めだったら完璧なのにって言っていました。今日のご飯もやわらかい。

 

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お昼の〆にさぼうるでお茶。
よく待ち合わせで使ったお店。時間に自由なタナカくんは待ち合わせの時間に間に合わないことがままあって、必ずボクが先の到着。
入り口の正面奥のテーブルでいつも待ってた。のっそり姿をあらわして、ボクを見つけてゴメン、ゴメンと頭を何度も垂れながらなのにニコニコしながらやってくるからボクもつられて笑顔になってた。憎めない人だった。
フレッシュジュースが好きでした。バナナジュースかいちごジュース。1:2くらいでいちごジュースが多かった。それで今日もいちごジュース。
甘くて酸っぱい。イチゴの繊維がまだ残っててとろとろ喉を撫でるようにしてお腹の中に収まっていく。
イチゴに練乳をかけて潰して「飲んだ」らこんな感じになるのかもね…、って笑ってた。お供についてやってくる塩ピーナツの塩加減がまた絶妙でポッテリとろとろ、飲むいちご練乳をゆっくり味わう。静かにちょっと泣きました。

 

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コメント

  1. 志乃

    こうやって偲んでもらえるタナカさん、幸せだと思います。

    • サカキシンイチロウ

      志乃さん
      こうやって思い出すことをたくさん残してもらったボクもシアワセです。

  2. マサハル

    いつも生唾を呑み込みながら楽しく拝見しています。
    キッチングラン。うれしいです。私が浪人生のとき、研数学館の食堂のカレーだけ食べて少しずつお金を貯めてグランやいもやに行くのがとても楽しみでした。
    キッチングラン。メンチ盛り合わせですね。寡黙な親父さんがもくもくとつくってくれる姿がとても印象に残っています。お味噌汁は湯せんにかけて。
    おかみさんの、まいどどうも~の送り出しがうれしかったりして。
    そう、キッチングランのメンチは日本一だと今でも思っています。
    想い出も味のひとつかな。
    宮城に引っ越してからなかなか上京する機会なく、東京に行ってもタイミングがあわず。
    でも、サカキさんの写真とコメントで美味しくいただけました(^^)。

    • サカキシンイチロウ

      マサハルさん
      白山通りに面したところにキッチングランと天丼のいもやが並んでいる景色。
      いくら食べても腹ペコにすぐなっちゃう食いしん坊にとっては天国みたいな景色でした。
      天丼のいもやさんが閉店したとき、たのむからキッチングランはずっとやってくれますように…、って祈るような気持ちでした。だからこうしてたまにやってきてお店がまだやってくれていることを確認するとありがたさとしあわせな気持ちで一杯になります。
      そしていつものようにお腹いっぱい。
      本当にありがたいお店ですよね。

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