キッチンステージの不完全燃焼分とく山

ひさしぶりのキッチンステージ。
伊勢丹の食品売り場の一角にあるポップアップのような場所。メニューをプロデュースする人やお店の人気によって、この場所自体の人気も左右されるという、厳しい場所でもあったりもする。
ココしばらくはちょっとハズレが多くって、がっかりばかり。
ところが今回。分とく山の野崎さんがプロデュースしたメニューで営業。
ご婦人方からの支持の多い、憧れシェフのレシピですからかなりの人気。ずっと満席が続く状態。
まずは先付け。グリーンピースをピュレにしてゼラチンで固めた豆腐に茹でた海老。桜型に抜いた山芋、生姜で飾る。べっ甲あんをたっぷりかけて味わう趣向。出汁のきいたあんがおいしく、ただまとわせると何を食べてもべっ甲あんの味になるのがなやましい。

4つのお皿がぎっしり並ぶ四角いお盆。
前菜、刺身の代わりの料理に、焼き物、それから揚げ物と、いわゆる略式懐石の体裁をとっている。
けれどひとつひとつの皿の上も、4つ寄り添う様もどちらも騒々しくて、機内食のようにみえてちょっと残念な感じ。
前菜は上新粉を使って作ったクレープで焼いた鰻にきゅうりを巻く。桜の風味をまとわせて、春のうなきゅうって感じのしつらえ。アサリの木の芽和えや甘エビを山わさびのジュレで覆ったものであったり、どれも春独特の苦味や香りがよきアクセントになっている。食欲さそって、お腹の入り口が開く感じのオゴチソウ。

刺身代わりの鶏の胸肉。霜降りにした胸肉を80℃きっかりの温度でゆっくり熱を加えてしっとり仕上げる。季節の筍と胡麻の風味のタレで味わう。冷えておいしく刺身の代わりになる…、というコトなのだろうけど、やっぱり刺身の方がいいなぁ。鮮度管理が難しいこういう場所だから…、あるいは原価の問題かって考えながら食べてしまう。煮物は牛すじ。圧力鍋でトロトロにしてすき焼き味に仕上げてる。案外タップリ分量があり、おいしいのだけどご飯が欲しくなっちゃうところがなやましい。
カニを芯にした磯辺揚げ。そら豆も一緒に揚げて季節をよそおう。この順番で食すなら、徐々に味が強くなってすべての料理がおいしく感じる。けれどズラリとならんだ提供方法だとあちらにこちらにと食べ比べする。料理を設計した人の気持ちどおりにならないとこがまたなやましい。

〆の一品がなんだか不可思議。
やってくるのはおこわだけで汁がない。
なぜなんだろう…、お椀ものは日本料理の華のひとつで、途中でお椀をだせないのならせめて最後に汁とご飯がほしかった。
しかもおこわの上に小さな穴子がたった二切れ。
塩だけで蒸して仕上げたもち米はさすがにおいしく、それだけ食べても十分おいしくあじわえるけど、お供がお茶となるとさみしい。小さな穴子二切れをおかずに食べると半分のこすほかなくて、半分残して終わりとします。
ひとつひとつはおいしくて、けれどなんでこんな料理の構成になったんだろう…、と考えてると味に集中できない残念。モッタイナイなと思う夜。

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