エルトリートが終わっちゃう…。
本格的でなくていいからメキシコ料理を食べたくなった。
場所は新宿。
そうだ、エルトリートに行ってみよう…、と、テクテク歩いて新宿の南の外れ。渋谷の入り口にあるビルの一階にやってくる。
と…。
なんと、閉店しておりました。
茨城県に本部をおくカスミストアが1970年後半の外食ブームにのっかって、カリフォルニアにあるココスと提携。本格的に展開をして、その勢いを借りて続いて提携したのがエルトリートというこの業態。
メキシコ料理がまだアメリカでも一般的でなかった1980年初頭。
それまで低所得者の料理というイメージのあったメキシコ料理を、裕福な白人層に売るとしたらどうすればいいんだろう…、っていう試行錯誤の中でできたカジュアルなディナーハウスというフォーマットで一世を風靡し始めていたのがエルトリート。
鳴り物入りで連れてきたけど、最初に作ったお店の場所がなんと「つくば」。
ココスの本部がある街だからというのが理由だったのでしょうけど、玉砕しました。後に何軒店を作ろうと一度のブレークすることなくしんみり、日本での命を終えようとしてる。
この店に限らずアメリカからやってきてなんとか命をつないでいるのはファストフードやファミリーレストランがほとんどで、ちょっと高級な業態のチェーン化はむつかしい。
理由はアメリカと日本の食のスタイルの違いで特に「食のシーンにおけるアルコール」の扱われ方。
エルトリートといえばお店の中心にバーがあって、そこだけまるで独立した「小さな居酒屋」みたいな機能を発揮する。日本のように街中に居酒屋があるような国と違ったアメリカならではのこのスタイルが、日本にくるとまるで魅力に思えない。だから最近のエルトリートはメキシコファミレスになってしまってた。ファミレスの強豪は激しくて、だから競争力のないメキシコファミレスがなくなっちゃうのもしょうがない。
ならばランチをどこにしよう…、としょっと思案で思い出すのがフーターズ。
チアリーダー風の健康女子のお色気が売り物のレストラン…、って思われがちではあるけれど、アメリカ風のメキシコ料理を気軽に楽しむことができるレストランでもあってやってきてみる。
そしたらランチのメニューはほぼステーキで、メキシコ風でもアメリカ風でもなくなっていた。昔はあったタコスもエンチラーダスもファヒータもなく、そもそもやっぱりメキシコ料理自体が日本じゃむつかしいんだろう…、ってしみじみ思う。
TGIフライデーズとかエルトリートとかが苦戦する中、なんとか売上を作り続けていられるこの店。理由はお酒がしっかり売れること。売れる理由はお酒の種類でもなく料理でもなく、セクシーな女性スタッフがすすめてくれるからなんだろう…、って思ったりもする。
ちなみに今。
ミスフーターズを選ぶ投票がおこなわれてる。
投票用紙をひとり一枚。
エントリーしているスタッフは全国各店で80名。
今日のランチのシフトには4名がエントリーしているんだ、と説明受ける。
エントリースタッフ全員の顔写真入りのシートが一枚。みるとみんな白い歯むきだしの笑顔の写真で、「リカちゃん」的じゃなくここは「バービー人形」的な女子の花園…、ってにっこりします。
もし、女の子に生まれ変わることができ、そのときにまだフーターズがあったらフーターズガールになってミスフーターズを狙ってやりたい…、って思ったりする。まずはサラダとスープがくる。
和風ドレッシングのグレーンサラダも、玉ねぎの甘さが際立つポテトサラダも日本の味で、バービー風じゃなくリカちゃん風(笑)。
リブロース230gが今日、一番のおすすめだ…、とボクのテーブル担当のバービーちゃんに言われてたのむ。鉄板の上にジャージャーしながらやってくる。薄くて、添えられたソースも醤油の味わいで、こりゃ、しょうがないとおいしく食べる工夫をしてみる。
一口大に肉を切り分けご飯の上にのっけて上からソースをかける。肉そのものにパンチがないのでタバスコたっぷり。一口食べると、ご飯の上の緑の粉がパセリじゃなくて青海苔だった。心底、日本のお昼ごはん。
サイドについてたフレンチフライがよく揚がっていておいしかったこと。日本人が本来難しいと言われてる「フレンドリー」な笑顔とサービスがココにはしっかり息づいてること。悪くないな…、と思う昼。
エルトリート、正直言いますと店名すら知りませんでした。日本でメキシコ料理がウケないのは、知名度の問題もありますが、それ以上に「北米のイメージを下地にしてしまってるから」だと思っています。
本来、メキシコ料理は「南米料理」で、アステカ文明に由来するはず。だからアマランサスとかキヌアとか、食材は健康食ブームにかなり乗っかってるわけで、意識高い系には悪くない分野ではあると思います。
そうなるとあとは見せ方なんだけど、こういっちゃなんだけど大味で不健康なつまり北米のファストフードのイメージを下地にする、ようはハンバーガーの異種でトルティージャはどうですか的な店、あるいは「肉!とにかく肉!」なイメージの店ばかり(オフィシャルサイト見る限り、エルトリートもそうですね)で、誰をターゲットにしているのかシロウトから見てもいま一つ解りません。ステーキ食べたいだけなら他にいくらでも店はありますし。
タイ、ベトナム料理などアジア料理はそこらへんをちゃんと掴んでいる気がします。インド料理は、日本ではまだまだ「=インドカレー」だけど、中国の薬膳と同じく香辛料は薬でもあってカレー以外の料理も伸びてほしいなあとは思っています。
メキシコ料理は、だからこちらの方面で行くべきだったんじゃないかなあ・・・
kokuさん
飲食店と外食産業では売っているものが違うんですネ。
飲食店は料理を売る。
外食産業はコンセプトのようなビジネスモデルを売っている。
大きくコトを構えようと思うと、大きなビジネスモデルが必要でそのお手本のほとんどはアメリカにあるのですね。
例えばかつて日本のイタリア料理のほとんどは「アメリカ的なイタリア料理」のお店だった。外食産業がもってくるのはみんなそういう店だから。
彼らがお店をたくさん作ることで、イタリア料理(のようなもの)の認知があがり、その業界をサポートする環境も整う。そこで本物がやってくる…、というのが「外国の料理が日本にもたらされる手順」だった。
…、のだけれど、その手順、法則が通よくしなくなりはじめているのでしょう。
特にアジアの料理では、本物を食べて育って料理を作ることができる人が日本で料理を作ることが比較的カンタンで、だから外食産業をへなくても市場が育つ。
メキシコ料理の不幸なところは、本場から遠くに日本があるということなんじゃないかなぁ…。
とにかく、日本の中南米料理の環境はあまりに脆弱。産業が育てて来なかったからなんでしょう。なやましいです。
新宿のエルトリート、いつも並んでいるのに閉店とは!
クリスマスも行ったら並んでいたのに…
明大前店も なくなってしまい…
ただ、10月に池袋のエルトリートに行った際
呼び出しボタンはあるわ、お皿はチャチな柄もので
アボカドのパフォーマンスなどめんどくさいメニューも絞られて メニューブックもファミレスっぽくなってて
あれ?とは思っておりましたが…
フローズンマルガリータがある限り、行くお店ではありますが、新宿店が好きだったのでショックです!!
しろはなげさん
ゼンショーがマネジメントしていたときに、本来のカジュアルで大人のお店としての良さ、DNAをすっかりなくしてしまったのでしょうね。
メキシコ料理のお店には行きたいと思うけれども、メキシコファミレスには興味ない。
…、そういう人が多いのだろうも思います。
榊様
なるほど・・・盲点でした。
私はてっきり「メキシコのような中米は本来、南米よりの食文化(食だけじゃないけど)で、だけどアメリカに近いから取り込まれる感じで南米らしさを失い、それで『アボガド使った、もしくはスパイシーなアメリカ料理』にされてしまった」と思い込んでいました。
距離ですか・・・言われてみれば確かにそうですね。なんでこんな単純なことに気づかなかったんだろう。
欧州は遠い、欧州の人が気軽に日本に来て料理を作れない。だから企業がパワーで浸透させた後に、本物を持ってきた。しかもそれが上手くいってた時代だった。
アジア料理が、その方法論ではなく浸透していったのは、距離が近くて「本物を作る人が簡単に日本に来れるから」なんですね。もしくは日本人でも簡単に現地に触れることができるから、か。
でもメキシコは遠くて、本物を作る人が日本に簡単に来れず店が増えない、だけど、もうかつての欧州料理のように、パワーで広めて下地を作る方法も通用しない・・・そういうことですか。勉強になります。
そう考えると、単純に時代というかタイミングの問題で、運がなかったのですね。これだけネット社会になっても、やはり食は物理的・空間的・時間的要因、つまり「人」なんですねえ・・・
まさに地政学ならぬ、「地食学」です(笑
kokuさん
ヨーロッパにならどんなに遠くても出かけていった日本人も、中南米で料理を修業をしようとはなかなか思いつかない。
だから日本のヨーロッパ料理は深くなっていったけれど、中南米の料理は浅いまま。見よう見まねの料理がまかり通っていますから。
ただ、日本の若い調理人が海外に修行する機会がどんどん減ってきていて、海外で学んだ人に教えてもらって一人前と思い込んでいるシェフが多いのが、これからの新たな問題になるんじゃないかなぁ…、とも思います。
エルトリートは知らなかったのですが…
昔話ですが、新宿丸井の近くにエルボラチョというメキシコ料理を
食べさせてくれたお店がありました。
もっとも、夕方からの営業だったので、ファミレスでもなく飲み屋
さんという感じでしたが(汗
そこで初めてトルティーヤとかアボカドやタコスの料理を食べて、
メキシコ料理は陽気で楽しいなあ、と思ったものでした。
今、北関東に住んでいますが、メキシコ料理のお店を探すのは
なかなか難しいです。
やはり距離なんでしょうかね…
keikoさん
パプリカやピーマン、紫玉ねぎ。ハラペニョにアボカド、トマトに辛味の強い小玉ねぎと、生の野菜を組み合わせ、それをソースにして調理する。
メキシコ料理ほど新鮮でみずみずしい料理って他にないほど特徴的で、食べ慣れるとおいしく感じるものってないなぁ…、って思います。
もっとお店が増えてもいいなぁ…、って思うのですけど、おそらく飲食店を経営する人たちにとって一番遠い、経験のない料理だからハードルがたかいのでしょうね。
El Torito, グアカモレの器がある時から、安っぽいプラスチックのモルカヘテになって以来、行ってない…。
長い目で見ると、日本の労働力の流動化が進むにつれ、美味しいメキシカンもいつか…ということですね。
地方へ行くと、ブラジルやペルー(=日系移民が多い国)系のグロサリーや食堂がポツリポツリと育っているようですし。
今いるアジア系の人たちの長い奮闘がしのばれます。Front runners.
たばきちさん
中南米の料理って、日本人に会う料理だと思うんですよね…、メキシコにしばらくいたときも全然、食事のことで苦労をしなかったですもん。
でも。
本物がなかなかやって来ないんですね…、メキシコ料理=お酒のお供みたいになっちゃってしまっているのも、メキシコ料理にとっては不幸なところ。食堂っぽいメキシコ料理屋さんがもっとふえればいいのになぁ…、って思います。
一号店は、つくばじゃねえし💢
西葛西だし
ディープフライアイスクリームさん
そうだったんですね、不勉強で申し訳ありませんでした。
「一号店はつくばじゃなくて西葛西だった」のですね。
ご指摘ありがとうございます。
1988年エルトリート西葛西店でサーバーをしてました
西葛西店は現存なんですね嬉しくて懐かしい
トレイが大きくて肩に担ぐ感じで熱々のファヒータをお客様に運んだりアボカドをお客様の前でパフォーマンスしたり若かったので重いとか怖いとか辛いとか一切なくて楽しかった思い出ばかり。コマルでトルティーヤ焼いたりカクテルを作ったり今でも忘れる事無く家庭でも役に立っていて無性に当時のメニューを食べたくなります
タナカシズネさん
西葛西のお店が出来たときには業界の注目を浴びて、ボクも行った記憶があります。
カリフォルニアだったなぁ…、フレンドリーなサービスと情熱が溢れていてファフィータの鉄板も熱々。ファミリーレストランとは一線を画した新しいレストランが出来たんだ…、ってワクワクしたものでした。
なつかしいですネ。メキシコ料理ってなんで日本で広がっていかないんだろう…、って思い出すたび不思議に思います。