アキノゴチソウ

気仙沼から秋刀魚が届いた。
今年は気仙沼に秋刀魚が一度だけあがったっきり、音沙汰ないんです…、って先日東北に仕事でいったときにそうおっしゃっていた。
気仙沼にいるお客様。
やっと船が戻ってきて、秋刀魚を運んで来たんですよ…、と。
発泡スチロールの箱にぎっしり氷を詰めて、蓋を開けるとキラキラしてる。
アルミホイルで包んだみたいなキレイな銀色の秋刀魚が全部で20尾もいて、秋がここまで泳いできたようなめでたい気持ち。
どう料理しようといろいろ考え、まずは素直に焼くことにする。

塩水作ってキレイに洗う。皮を傷つけないようにやさしく、そっと撫でるようにして汚れを落としペーパータオルで水気をとってグリラーで焼く。
炭があったらなぁ、と思うも外はあいにくの雨。炭があったとしてもベランダで焼くことかなわず、ガスでもおいしく焼けるよね…、って。火加減みながらこんがり焼いた。
旨いです。肉はしっとり、焼いているのにみずみずしくて皮はサクサク。脂がジュワッと口に広がる。部屋に広がるおいしい匂いで、ご飯を一杯食べられそうな秋のゴチソウ。アリガタイ。

お供のおかず、あれこれと。博多なすっていう大きく太い茄子をみつけて、それを使って炒め煮作る。和牛のサーロインを拍子木に切り、脂で炒めてそこに茄子。同じ拍子木に切ったの入れてそこに割り下。軽く煮込んで出来上がり。
不思議な茄子の食感で、ザクザク歯切れて噛んでるうちにとろけてく。沖縄で料理に使うヘチマのような食感があり、炒めた肉の旨味をしっかり吸い込みご飯がモリモリすすむ。
弁松さんの甘煮と一緒に、ニンジン、ゴボウと鶏肉で作ったきんぴら。これが上出来。鶏の唐揚げもお供に夜のお腹を満たす。金曜日。

土曜日の朝、ひさしぶりにサンドイッチを作って食べる。
オキニイリの素材を昨日の夕刻、買い揃え、それを使ってテキパキと。
パンはエディアールの角食を12枚切りにしてもらったもの。一枚の厚さは0.9ミリでにも関わらずしっかりとしたテクスチャ。
片面だけを軽く焼き、芥子を混ぜたマヨネーズを薄塗りしたら粗熱をとる。

一つは玉子焼きをのせます。
ミルクをくわえてふっくら焼いた玉子をのっけてケチャッププチュっ。粗挽きにした黒胡椒をほどこしパンで蓋してざっくり。
もう一組にはコンテチーズを薄切りにして、ジャンボンブラン。
カーリーリーフを軽く潰して乗せ、重ね、パンで蓋してこれまたざっくり。お皿に並べて朝ご飯。

甘み少きかっちりとした仕上がりのパン。焼けるとバターと小麦の香りが濃厚で中に挟んだ具材の旨味を支えてくれる。それそのものがおいしいのでなく、何かと一緒になってはじめて完成する。サンドイッチにピッタリのパン。
玉子はふっくら。ハムはムッチリ。挟む具材でパンが食感、風味をかえるようでたのしい。コンテチーズは最初はざっくり。噛んでるうちにどんどんとろけてハムやパンの風味とまじって調味料のごとき役目を果たす。素材の力を味わう朝。明るく涼しい土曜の日。

サンドイッチを食べていたら、ピンポンと玄関で呼び出し音。
岐阜から栗きんとんがやってきた。
多治見に住む友人が先日、加茂の八百津でワザワザ送ってくれたもの。
「緑屋老舗」という店の栗きんとんで、早速食べる。

姿形は岐阜の栗きんとん共通で、布で絞って仕上げた栗の形がかわいい。
しっとりしていてなのにホロリと芯の部分は乾いた感じ。
それがゆっくり唾液とまじりとろけてとてもなめらかになる。
ちょっと渋みが強いでしょうか…。
野趣に溢れた感じがするのが、中津川の栗きんとんとはちょっと違って感じる大人味。練った栗の中にホツホツ、小さな栗の実が入っててコツコツ奥歯を叩く感じが、栗を食べてるって実感くれる。
栗から生まれて栗よりも栗。場所やお店が変わっても栗きんとんはそういうお菓子。ありがたいかな秋の味。

秋の味を土曜の昼に料理する。
気仙沼からとんできた秋刀魚を使って昼ごはん。

パスタにします。
秋刀魚を3尾。ワタを抜いて頭と尻尾をとって塩をほどこしグリラーで焼く。
弱火でジンワリ。
秋刀魚が汗をかいていくのをみながらパスタの準備をします。

潰したにんにくをたっぷり5片。オリーブオイルと一緒に弱火の鍋でじっくり。
香りを出しつつあっためていく。
赤唐辛子とオレガノくわえて一旦火からおろしとく。
パスタは細いフェデリーニ。
ひとつかみ分の塩をくわえたお湯で5分。
茹でてる間に焼けた秋刀魚を取り出して背骨にそわせて包丁を入れ、半身をそぎ取り背骨を抜いて2つに開く。一尾はそのままにんにくを煮た鍋に投入。火をつけ崩してソースに仕立てる。残りの二尾は半身同士を重ねて再び秋刀魚の形に戻してパスタの上にのっける。秋のパスタの出来上がり。
基本の味はペペロンチーノ。秋刀魚の旨味がパスタにからんで口一杯に秋の旨みが広がっていく。今年の秋はおいしい秋と予感する。

コメント

  1. めるば

    アナスティアでもそろそろ秋刀魚のペペロンチーノが始まってますかね…年々人気になってるようなので、今年もありつけないかもと思ってます。

    • サカキシンイチロウ

      めるばさん
      先日、銀座にいったときよってみようかなぁ…、と思ったのですが、時間が時間だったので多分、並ぶだろうなぁと思ってやめました。
      今年は秋刀魚が不漁なので、一層、ハードルの高いゴチソウになっちゃうかもしれませんね。

  2. じゅん

    アナスティアさんの、確かお店は無くなったと思いますよ
    ビル立て直しとか

    あの秋刀魚パスタが気楽に食べれなくなったの、本当に悲しいです

    • サカキシンイチロウ

      じゅんさん
      あら、そうなんですね。銀座は裏路地にいたるまで再開発で忙しないですね。あの秋刀魚に対する手仕事。いつも感心していました。
      調べてみましたら、ケイタリングを中心としたお仕事をなさってらっしゃるようですね。

  3. 一杯調子

    なくなったと言えば、以前コメントさせていただいた早稲田のいもやも、閉店の貼り紙がありました。昨日せっかくの平日休みで、もしや…と思って行ったのですが、ご高齢のためでしょう。やんぬるかな、でした。

    • サカキシンイチロウ

      一杯調子さん
      あらぁ…、そうなんですね。
      いろんなお店が後継者がいらっしゃらないからと、事業の継続をあきらめてしまう事態が頻発してます。
      食文化の継続の前に事業の継続。なやましいですね。

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