ぽん多本家、上野で創業110年

ponpon silver野暮用を終えてちょうどお昼にほどよい時間。
とびきりの洋食を食べてやりましょう…、と、「ぽん多本家」にやってくる。

明治38年創業。今のご主人で4代目。
100年以上続く老舗で、日本にはこういうお店が沢山ある。古いからと言って枯れるのでなく、時代をこえてみずみずしくあり続けるお店がたくさんあるというのはすばらしきコト。

この店も大繁盛です。
12時前という時間にはほぼ満席で、いつもは使わぬテーブルを整えてもらってめでたくありつく。
ちなみにココの2階に向かう階段に、キチッとじゅうたんが隅から隅まで敷き詰められてる。つなぎ目のないこの階段のために誂えられたじゅうたんで、こういうところに、老舗ならではの贅沢感じる。

上野御徒町という場所柄もあり、おちついた年齢のお客様が多い中、若い人たちもやってくる。こうして次の時代につながっていく。
いいな…、と思った。とんかつが有名ではあるのだけれど、実はとんかつ屋ではなく洋食屋。とんかつ類はロースカツだけ。だからお箸だけじゃなくナイフフォークが並んだりする。この特別に気持ちがアガる。まずは穴子のフライをもらう。

pon anagopon ana江戸前の魚を使った料理がココの主役のひとつ。
ホタテの柱のフライであったりエビフライ。
キスやハマグリと、食材の種類だけをみるとまるで天ぷらのよう。
どれも新鮮。活きた素材で、その持ち味を壊さぬようにフライにしたり、バターでソテして仕上げたり。ボクらの隣のお客様が、アワビのバター焼きでビールをのんでぼんやり昼をたのしんでいる。大人なお店でございます。

ちなみに穴子。肉厚、しかもふっくらしていて、パン粉がカサッと口に散らかる。穴子のネットリした食感を引き立て揚がったパン粉の香りも香ばしい。
ウスターソースをかけて食べます。
自家製の胡椒がヒリヒリするソース。キャベツにかけるとそのヒリヒリが直接口にやってくるけど、フライにかけると辛さが油でごまかされ、パン粉衣を甘くておいしくしてくれる。レタスをフレンチドレッシングでドレスさせた付け合せがパリパリ、シャキシャキ、とても上等。

pon mainspon katutanメインを2種類。カツレツ、それからタンシチュー。

ロースの肉の芯の部分だけを使ったカツレツは、脂をほとんど持ってない。
むっちりしていて、サクッと歯切れる。
しかも肉汁ほとばしり出るゴチソウで、さすが時代を超えてお客様に愛される味。
低温の油でじっくり揚げたのでしょう…、色白衣はサクサクで肉はまるで蒸し上げられたような味わい。
油で揚げていながら油を感じぬステキ。ウットリします。

タンシチューはまさに洋食。
分厚いタンに横に包丁をそっと入れ、切り離さぬよう、けれど芯まで熱が入っていくようにする。
そしてじっくり、デミグラスソースでコトコト煮込んでとてもやわらか。
ナイフがついてくるのだけれど、ソーススプーンをそっと押し付け力を入れると、ホロリと崩れる。舌の上でもとろけるようになめらかで、しかも繊維がバッサリ散らかる。
タン独特の香りと旨み。濃厚味のデミソース。
一口食べては目を閉じて、手間と時間と入念に目を閉じ感謝したくなる味。サイドに置かれたしいたけがソースをたっぷり吸い込みトロンとなってるところもまたオゴチソウ。

pon sarapon shokujiそれにしてもお皿の豪奢でうつくしきこと。
手洗いでしか洗えぬこういう食器を未だに使えるところ。
素晴らしいなぁ…と感心します。

お食事セットが用意されてる。
ご飯に漬物、そして汁。ご飯は固めで口の中でカラコロ転がるような食感。けれどほどよくみずみずしくて、パン粉衣を邪魔せぬおいしさ。

そこにタンシチューをそっと置く。
ソースを垂らして一緒にご飯をパクリと食べると、あぁ、ありがたや。とても上等なハヤシライスのような味わい。
お米の粒のひとつひとつがソースをまとって、口の中を滑るよう。
西洋料理と洋食のただ唯一の違いはおそらく、ご飯のおかずになるかならぬか。だからココの料理はすべて、ただしき洋食というコトでしょう。
タンにたっぷり芥子を置いて、再び食べると芥子の香りが鼻から抜けて、ソースの風味が鮮やかになる。あぁ、旨い。
汁は赤出汁。中にはなめこ。たっぷり山椒が振りかけられてて、油や脂で疲れた鼻をリセットさせて、今日の昼餉の幕を引く。

 

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コメント

  1. いにしえ

    こちらで拝見した数日後に、丁度朝から上野に行く所用があり、早速お昼どきに伺ってみました。
    一人でしたのでカウンターに通されて、すぐ向かいが揚げ物の鍋でしたがまったく空気が油っぽくない! 3人のおじさま方が粛々と働かれているのも見られてカウンター席の役得でした。
    カツレツをお願いしましたが、あのサイズで最後まで飽きずに食べられるというのは、私にとってはなかなかないことでして、なんとも美味しかったです。
    隣の席の方が召し上がっていた、小柱のフライがとても魅力的で次回はこれを目指して参ります。上野に出かけた際の定番となりそうです。
    こういった筋の通ったお店の数々が東京の東側の底力ですね。
    ありがとうございました。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      東京の西側に住むボクにとって、東側にでかけるコト自体がワクワク、ウキウキに満ち溢れています。
      大人のお店。
      昔から変わらないコトを選んだ上、お客様からも変わらなくていいよと言われる、シアワセな店がたくさんあることに羨ましくなる。
      このお店。
      おっしゃるとおり、揚場の前に座っても油の香りが服につかない。なのに油のおいしさを堪能できる。すばらしいなぁ…、と思います。
      小柱のフライ。
      ビールを一杯飲みたくなりますね。

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