おいしい経験、の弥七の昼

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午前中の仕事を終えて、一旦四谷三丁目。
家に帰ってホッとして、そうだ…、ランチをどうしようかとちょっと思案してひさしぶりに「の夜七」に行ってみようと友人誘う。
とてもユニークな中国料理のレストラン。大きくはない。厨房の中の気配をどこに座っても感じることができる空間。それはそのまま厨房の中からお客様への気配りを心がけるコトができる親密でおいしい空間。オキニイリ。

noya zensai小さな窓から草木越しに見える景色が、四谷三丁目と思えぬおしゃれでのどかな景色で、気持ちものんびり。
お腹が空きます。

日本料理の飲食店に育ったご主人。
中国料理店で修行をし、独立を果たして作った店で、料理スタイルが独特なのです。
作られる料理はたしかに中国料理で、けれどベースに日本料理の世界観とか文化性が豊かに流れる。
結果、日本料理のテクニックや表現方法がアクセントとして、どこにもないオリジナルな中国料理になっている。和中折衷というのは簡単。けれどただの折衷ではない、日本人にしか作れない日本の人のための料理のように感じて、ボクは好き。
鳥からとったドッシリとしたスープで作った出汁巻き玉子。そら豆を軽く揚げたところにアオサをまぶした小鉢がまずはやってきて、アオサの香りに目が覚める。ポッテリとした卵スープは、ご飯のお供というよりもまず口をお腹を潤して食事の準備をしてくれる。お腹にポッと灯りが灯る。

noya ryourinoya butanikuご飯のおかずを3種類。
まずは鳥の黒酢炒め。
ぶつ切りにした鶏もも肉にレンコン、しめじ、エリンギに茄子。
黒酢の香りが甘やかでしかもツヤツヤ、見事なテリが食欲さそう。
食べるとフワッと明るい香りが鼻から抜ける。黒酢と大葉って中国人にはまず考えられない組み合わせ。
黒酢のドッシリしたコクとうねるような酸っぱい香りが、大葉の香りと風味でスキッと明るくなって味わいさわやか。黒酢のクセもおだやかになり、食べやすさがますよき工夫。

京都の甘酢を使って作った酢豚が二品目。
まず目にうるわしい。
すだちのように見える柑橘はライムの薄切り。確かにライム独特の甘みを帯びた爽快な香りが漂う。豚の肩肉を使ったがっしりとした肉の揚げ物。それをとろりとあんが包んでつやっぽい。
ところが食べると印象一転。がっしりしていて、顎にガツンと肉の食感が伝わってくる。豚肉らしい力強い匂いが漂い、その匂いをライムの香りがスッキリさせる。
歯ごたえ、味わい、香りに後味。どれもがまさしく豚肉の力強さと荒々しさで、なのに口の中に最後に残るのはライムの酸味とすがすがしさ。一口ごとに新鮮で、一口重ねるごとに味わい深くなる。途中で味の変化をと、ニンニクをくわえて作った辛子味噌がやってきてそれを乗せるとライムの酸味が甘みに変わる。オモシロイなぁ…、飽きずパクパク、たのしんだ。

noya mapo三品目には麻婆豆腐。
ココのすっかりスペシャリテになった料理で、これも独特。
挽肉ではなく牛すじ肉をコトコト煮込んでやわらかくし、それをホロリと崩して使う。
肉以外にはネギとこんにゃく。
むっちりとした肉の食感。
シャキシャキ歯切れるネギにムチュンと潰れる赤こんにゃく。
食感にぎやかで味わい多彩。
それらがすべて牛すじ肉のゼラチン質でひとつにまとまり、豆腐にからむ。

麻婆豆腐といえばとろみを味わうあんかけ料理のように思い込んでる、舌や頭がビックリするようななめらかさ。何がなめらかって煮込んだ肉がまずなめらかで、そのなめらかをまとった豆腐が恥じらうほどに肉がおいしくウットリします。
味わい濃厚。辛味に痺れもほどよくあるけど、味そのものはブフ・ブルギニョンの風味に味わい。中国料理を遥かに越えた牛肉料理のひとつの形。ご飯と一緒に食べるとご飯の熱さとともに、口やお腹を熱くする。

noya anin最近、昼の時間ばかりを狙って来ている。
昼の気軽な雰囲気が好きというのと、夜の予約がとりづらいということもあり、それで昼が続いてる。
でも、こういう料理を口にすると、昼の定食ではモッタイナイ。
いつか時間に余裕を作って、夜のコースをまた食べに来たてこのご主人の料理の世界に戯れてみたいってしみじみ思う。
ゴチソウです、オキニイリ。

食後のお甘味。杏仁豆腐。
季節のぶどうを2個浮かべてる。一個は酸味が強くて渋い。一個は甘みが強くてとてもみずみずしくて、麝香の香りがフワリ漂う。
豆腐自体はポッテリとして歯茎や奥歯にネットリからんで撫で回す。肉感的な濃厚タイプ。
それをスッキリ甘いスープと一緒に含むと、ドゥルンと喉をかけおりる。喉やお腹の位置がわかるような確かな食感に食後の気持ちが豊かに感じる。ほんの少しのお酒がきいてて、喉は冷えてもお腹あったか。ステキな食事のしめくくり。
また来なくっちゃ。しかも夜。いい言い訳を今からあれこれ考えて、にんまりします。さぁ、仕事。

 

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コメント

  1. ワイメア

    ここの杏仁豆腐は20年ほど前の、香港灣仔のグランドハイアットではじめてたべたマンゴープリンほどの感動があります。(脇屋さんも一時期厨房に行ってましたね)
    だけどね~
    どうしても中華に紫蘇がゆるせない。
    わがままな私です…。

    • サカキシンイチロウ

      ワイメアさん
      紫蘇、大葉は賛否両論わかれるところでしょうね。
      ボクは新しもの好きで、挑戦的な料理が好きなのでむしろオモシロイなぁ…、って思ってたのしめました。
      脇屋さんの杏仁豆腐。
      おいしいですよね。フカヒレの姿煮と杏仁豆腐だけでお腹を満たすことができればもっと頻繁に伺えるのにって思っちゃいます。
      わがままです。

  2. 茶碗交番

    昨今「雲子」を入れた麻婆豆腐を見掛けますが、の弥七さんでは「雲子を羮した雲子豆腐」を研究中とか。「鍋で煽っても煮崩れない位固く味も凝縮したいんです。お彼岸頃完成を目指しています!」っと山本調理長。特別に「白子豆腐」も出来るのかしら?(笑)

    • サカキシンイチロウ

      茶碗交番さん
      なんと、タラ菊の麻婆豆腐。どんなにふんわかで、どんなにトロリなんでしょうネ。
      お彼岸頃に雲子豆腐。ふぐのおいしい季節に白子豆腐。堪能するときはぜひご一緒に…、なんて思います。

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