どんなお客様を大切にすると得するんだろう…。

連休中日の日曜日。新宿に出てランチをとった。
ひさしぶりにと「車屋別館」。一階にある鉄板焼きのお店を選ぶ。
歌舞伎町の中に昔から大きな館をもってて、日本料理や割烹スタイルのフランス料理で大切な人をもてなせる店。
その別館のココは鉄板焼きのレストラン。
六角形の変則的な形の鉄板。1辺4席。6辺あるから24席。ただ厨房に近い2辺が交わる頂点部分が厨房に向かう通路があって、1席それでなくなっている。だから都合22席という小さな空間。
鉄板の奥行きが狭くてどこかお好み焼きのお店のような気軽な雰囲気。鉄板焼きレストランとはいえ接待には適さぬ店でしょう。なによりどこに座っても向かい側の人の目が気になっちゃう。気になることを逆手に取って、人間観察をたのしみましょうとグルリ見渡す。

座って五分もたたぬ間に二組4人が帰ってテキパキ、カウンターが片付き次のお客様がくる。
ボクらがお店に入る前から、お店の前のメニューボードを見ながら迷いに迷った末にやってきた若いカップル。北京語喋る女性が2人。食事の準備を待つ体の大きな男性2人、そしてボクたち。食事をしているのは小学生くらいの男の子2人を含むファミリー4名。姉妹でしょうか…、中年女性二人連れ。ボクらも含めて彼ら14人は1100円のランチセットを選んで食べる。
奥さんサービスなのかご主人だけが異様にはしゃぐ中年夫婦。互いの関係性のわからぬ3人連れと明らかに夫婦ではない大人の男女、都合7人が4400円のランチコースを食べている。
さてこの人たちの誰を喜ばせるのが、この店にとって得するコトになるんだろう…、って思いながらサラダを食べる。

客単価から言えばコースを食べてる7人を大切にするのが順当。
コックさんもそうと思ってコースを食べる3組を密着接待。ご夫婦、三人組はうれしげにコックさんと話をするも、大人の2人にはそれがどうにもありがた迷惑。遠目にも、かまってほしくないオーラを発散しているにも関わらずずっと一生懸命話しかける姿がしょっぱい感じ(笑)。

そもそも果たして高い料理をたのむ人がお店の営業上、本当に貢献してくれているお客様なのか…、そこを考えないと見当ハズレになる。
ちなみに1100円のセットのメインディッシュはハンバーグとかハラミのステーキ、チキングリルとわかりやすい上、調理するのが簡単でしかも短時間で仕上げることができる料理が揃ってる。
座って注文を受けるとサラダがやってきて、5分ほどでメインディッシュが仕上がったらそれにあわせてご飯と味噌汁。ユックリ食べても30分で食事が終わる。
場所がよく、鉄板焼きとしては価格がこなれているから大繁盛。ウェイティングがずっと続く状態でもあり、おそらく一時間で2回転はするでしょう。
一方コースのお客様。前菜からはじまってまず野菜から仕上げてそれを食べてる間に、厚めの肉をじっくりと焼く。ご飯もガーリックライスが選べたりするから食事をするのに2時間ほどの時間がかかる。つまり2時間かけてたった一組。ひと席の売上高は2時間で4400円。
でも1100円で食事をすませる人が座る席は2時間で4回転。結局同じくひと席4400円稼げてしまうというコトになる。

さぁ、どちらのお客様を「より」いいお客様と考えるべきなのか。一度の調理で4400円もらえたほうが楽じゃないか…、と考えるもよし。
同じ時間でも何人もの人に楽しんでもらえば、それだけファンが増えると考えるのもよし。あとはひとりひとり、一組ひと組のお客様がまた来てもらえるお客様かどうか。あるいは、また来ていただきたいお客様なのかどうかをみながらサービスを使い分けなきゃいけなくなる。

すべてのお客様に等しくサービスをしなきゃいけない…、それが建前ではあるけれど、でも本音を言えば「得をさせていただけるお客様に得してもらう」。
それが商売。
例えば…。
若い人よりシニアのお客様のほうが、親切にされるとファンになってくれやすい。
若い人は流行に敏感な分、すぐにお店をかえるけどシニアのお客様は気に入った店を何度も使う。
なのに若い人の方が目立つし反応がいいから、シニアよりも若い人にやさしくしちゃう人が多い。今日もそう。

もう一度、やってくるかどうかわからない海外からのお客様より近所の人。ドキドキしながらやっとの決心でお店を選んでくれた若い夫婦にちょっと親切に仕上げれば効果てきめんなはずなのに、ずっと注文を取りに行かなかったりする無関心がちょっと残念。今日はいろいろ勉強しました。オモシロイ。

 

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コメント

  1. はっち

    プロの方の見かたは深いなあと感心。
    確かに、そうですよね。
    今から思えば、学生時代や新婚ほやほやの頃って、本当にお金を掛けずに暮らしていたなあと思います。懐かしいやら恥ずかしいやら。。。

    • サカキシンイチロウ

      はっちさん
      お金が使えないのでなく、使う暇がなかったり、使う場所が違っていたりと人生のステージ、ステージで「お金の位置づけ」が違ってくるんでしょうネ。
      今は使わないけど、それは将来、有意義に使うための準備運動中なんだ…、と、学生時代や新婚生活中はそういうステージなのかもしれませんね。

  2. やまもみじ

    楽しくオモシロク読みました。客側から考えると、このお店に来た主たる目的が、お店の人に伝わったら、いいのですね。その情報を送って、受け取ってくれるお店が、いいお店なのかも。阿吽の呼吸が背立すると、足しげく通うようになりますね。外食って、楽しいです。人間観察も。

    • サカキシンイチロウ

      やまもみじさん
      自分はどういう人間なんだと、わかり易すぎる人は得すると同時に損をする。
      だって、お店の人から観察してもらえないお客様かもしれないから。
      ちょっとミステリアスな自分をレストランでは演出してみることがあります。損することもあるけれど、得することもあるから。レストランってたのしい舞台だと思います。

  3. koku

    私は性格が悪くてへそ曲がりなので、敢えて違う視点からw

    少なくとも日本の飲食店においては、「ランチ」は言うまでもなく「薄利多売を言い換えただけ」の言葉です。
    売上は同じでも利益はコースの方が上ですから、店側としてそっちを贔屓にしたいのも当然ではあります。
    人がゴミのような都会で、しかも立地の良いランチの場合、これはどの店もそうだと思いますが、黙ってても人は来るので一人ひとりの客を大切にする意義がない、というのも一利あります。

    例えランチに来た新客が憤慨して帰っても、また違う新客が来るだけです。つまりこれは都会の、しかも人がゴミのよう(二回目)な場所特有の現象で、これが地方や、都会でも各駅停車のみでしかも駅からちょっと離れてる店だったりすると、むしろ逆になるんだと思います。

    すなわち、ランチ時でも集客に苦労するから、大半の店は薄利多売でもいいから、何度も来てもらえるようランチの客にも細心の注意で目を配る。というか配らざるをえない。目が~目が~とか言ってる場合ではない。

    ま、しかし従業員がラクなのは間違いなく前者のほうです。手は忙しく動かさなきゃなりませんが、気を使ってサービスしなくていいんだから、精神的に疲弊しなくてすむ。従業員が精神的に疲弊しないということは、店がギスギスしないということでもある。

    日本は「サービスはタダ」という「精神的奴隷」市場の国です。私も数百円から1000円前後程度のランチをよく利用しますが、だからむしろ、親切な接客を受けた時はものすごく申し訳ない気持ちになる。ほとんど罪悪感に近い。
    それなら、もうちょっと値段を上げてくれ、と思うのです。忙しいランチ時なら、こちらから呼ばないと水も持ってこない程度にほおってくれた方が私はずっと居心地がいいですね。まあそんな人間は私くらいでしょうが(笑

    • サカキシンイチロウ

      kokuさん
      人がゴミのようとは、まるでラピュタのムスカのような…(笑)。ちょっと乱暴な物言いですが、そのように感じさせられることが都会ではよくありますよね。
      おっしゃることはたしかによく分かる。
      そしておっしゃるような「ゴミのようにお客様を扱うお店」と「ゴミのように扱われることを当たり前と感じるお客様」がたくさんあってしまったり、いらっしゃてしまうことも現実。
      さみしいなぁ…、と思うコトがとても多い。
      でもちょっとした気持ちの持ちようで、ゴミではなくて人に立ち返ることができる。それが飲食店という場所のよいところじゃないかとも思います。そしてその気になって探せば、ちょっとしたコストで「人と人とのふれあい」を実感させてもらえるお店はたくさんある。
      まだまだ日本の社会は捨てもんじゃないと思います。

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