お芋の天ぷらはよろしくてよ!

月に一度の高松訪問。
仕事のついででごめんなさい…、っていいつつ母と食事をします。
いつものホテルで今日は和食。
中華料理ばかりが続いて、年明けだからたまには和食もいいでしょう…、と。
そう言えば母と一緒に日本料理を食べる機会があまりなかった。
母が作る料理も、どちらかといえば西洋料理系が多くて、さすがに年をとってからは日本的なる家庭料理を作るようにもなったけど、ずっと和食は好きじゃないんだ、と思ってた。
珍しいこともあるもんだ…、って思いながらも和食堂。
一般ホールは静かな様子。
けれど新年会でもやっているのか、奥の方から笑い声。にぎやかなのはステキなコトと、ボクらも乾杯することにした。白いワインがいいわねぇ…、と頼んだグラスワインが少々甘口で、飲んでたちまち渋めのお顔。思っていることがすぐ顔に出る。ボクも受け継ぐ悪い(笑)。

季節の御膳料理をもらう。
料理が次々やってくるコース仕立ての懐石料理と違って、料理のほとんどがお膳の上に並んで用意されてくる。
その方が、煩わしくなく話がはずむ。
だからこれが食べたかったの…、と。
この前、ココに昼食を食べに来た時、これを食べてみたかったのという御膳。
確かにニギヤカ。

固形燃料がついた焼き物。
サラダに刺身。小鉢があってご飯の上には鯛のそぼろ。そして味噌椀。
味噌椀の中にそうめんが入っているのが讃岐的。小豆島というそうめんの名産地があるからなのかしら…、季節を問わずそうめんをよく食べていた。
茹でるときには大量に。
食べ残したら冷蔵庫の中で保存していて、そのまま食べるわけじゃなく炒め物に使ったり、煮物の煮汁をにしめたり。あるいはこうして味噌汁の実にして食べる。だからなんだかなつかしい。
トロンとやさしい喉越しで、お腹にたまるところもウレシクありがたい。

小鉢の中には魚と野菜の南蛮漬け。刺身は鯛とマグロ。刺身がのっかる大葉の下には大根ツマの代わりに海藻麺が潜んでる。パリポリ壊れる海藻麺の食感がたのしくニンマリ。
固形燃料で焼かれた器の中で、一口大に切り分けたオリーブ牛がおいしい匂いを立てながらジリジリ、こんがり焼けていく。ポン酢に漬けてパクリと一口。脂がのっててこれがなかなか旨いのです。ザックリ歯切れる繊維が上質。噛むとひんやり、脂が滲んで唇まわりが涼しくなってく。それを母がニコニコしながら食べている。

なるほど、これが目当てでこれをたのんだなぁ…。肉食女子のはしりのような人で本当に肉が好き。特に脂ののった和牛のステーキに目がない人でだからココのこれだったのか…、と改め納得。
食べてる途中で揚げたての天麩羅がおいかけやってくる。
エビにシシトウ、茄子、さつまいも。エビを一口食べて、プリプリエビは好きじゃないわ…、と残りをボクの器に入れる。
戦争中に好きでもないのに一生分を食べたから…、と、さつまいもは口もつけずにボクの前。父はコレが好きだった。分厚く切ったさつまいもを天ぷらにしてウスターソースをかけて食べるのが好きで、食べ過ぎるから作らないってよくおふくろが言っていた。
ボクはあんまり好きじゃない。甘いおかずというのが苦手で、けれど最近、悪くないなとあれば食べちゃう。父が死んでから、生前父が好きだった料理を食べるとなんだかおいしく感じるようになった。不思議だなぁ…、不思議だけれどしょうがない。

生の葉っぱも母が苦手で、サラダも結局、半分以上ボクのお腹に収まった。
元気なときにはワガママをいう。
ワガママ聞いて上げると本当にうれしげで、こんな小さな親孝行がとてもうれしい、今日の夜。

おかずが随分なくなっちゃったね。
って心配したら、ご飯にお茶をかけてサラサラお茶漬けにする。
お供は昆布の佃煮で、出汁を取ったあとの昆布を原料にしたココの手作り。
こういうコトをしっかりとする厨房の中は昔ながらに真面目で正直。
だから無駄にしちゃいけないわ…、と、昆布で茶碗を拭うようにしてお腹の中にキレイに収める。

抹茶のアイスクリームに「お煎り」という讃岐のお菓子を飾ったデザート。
米粉を使った薄い生地を、焼いて膨らせ小さな玉状にした菓子で、噛むとパリッと儚い音を立てて壊れる。
小さいくせして香りはお餅。
とろける感じが優雅でかろやか。口がめでたい気分にひたる。
近況報告を互いにします。母は最近、歌の先生を変えたらしくて、前の先生がお年を召して引退されたのが理由。新しい先生は歌いやすい歌を歌えというらしく、歌いやすい歌を歌ってばかりいては進歩がないし、なによりたのしくないのよねぇ…、やっぱりジャズが歌いたい、って元気に話す。
歌をうたうのはお腹を使って息することで、背筋の伸びる。それからそろそろどこかに旅行をしましょうかって気持ち前向き。ホっとする。

コメント

  1. RHEIA

    「美しい女には、わがままが似合う」
    どこで聞いたか忘れましたが、そんな言葉を思い出しました。
    エスコートする紳士が困らない程度の、わがまま。
    それを笑顔で叶えてあげたい……と思うような、かわいいわがまま。
    年をとって気持ちや態度が頑なになる人も多いですが、サカキさんのお母様は、本当にしなやかで、お美しい。
    私もそんなふうに年を重ねていきたいものです。

    旅行に行きたい、と思えるほど、お気持ちが前向きになられてよかった。
    やっぱり美味しいものづくしの旅なのかしら…?(*゚▽゚*)

    • サカキシンイチロウ

      RHEIAさん
      長年住んだ東京で、友達と一緒にお茶を飲んだり美術館巡りをしてみたいわねぇ…、と、言っていました。
      そうなると桜のキレイな季節がいいねと、妹たちとも相談しながらたのしい旅行の企画をたてようとワクワクしています。
      ワガママを思う存分言ってもらえるシアワセを昨日はしみじみ味わいました。ありがたいです。

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