いもやにグラン、神保町でオモウコト

「神保町のいもやが閉店しちゃいます」。
ブログにコメントもらってビックリ。しかも2店舗。とんかつのいもやと天丼のいもやが、3月いっぱいで同時閉店しちゃうんだという。
水道橋のオフィスに学生インターンとして通っていたときからよく行っていた。
だからもう40年近くのおつきあい。
ランチ時には行列ができる人気のお店。
ただ、働く人に苦労していたようで、天丼のお店は一年以上も休業していたりしたほどでした。
工夫と苦労の末にやっと一年ほど前に営業再開した店が、とうとう閉店。とんかつの店も…、ということは、本当に働く人が続かなくなっちゃったというコトでしょう。
それに募集をしても若い人がやってこず、このままどんなに頑張っても技術の伝承ができないから思い切ってという判断。
心配になって来てみたら、同じように心配する人がたくさんいるのでしょう…、いつも以上の行列でした。繁盛しているのに事業継続ができないという、やってる人も悔しいだろうなぁ…、と思う。なやましい。

 

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いもやの天丼でも…、と思ったのだけれど店の外の行列ばかりか店の中にも人がぎっしり。今日は天ぷらが揚がるおいしい匂いだけで我慢しとこう…、と、それで隣のグランを訪ねる。
ここも好きな洋食屋さんでして厨房が間近に見えるカウンターだけ。この界隈はこういうお店が多くてたのしい。メニューはハンバーグに生姜焼き、メンチカツにとんかつ、それらの組み合わせ。注文すると目印のプラスティックのチップをおいてく。ボクの前には明るい黄緑のチップに白い小さなチップ。黄緑色はメンチカツと生姜焼きの盛り合わせ、白いチップは半分ご飯という印。
家族でやってるお店です。サービスをするおばぁちゃんも、奥で料理を作る調理人も似た顔していて、ホっと安心。あったかい。

メンチカツと生姜焼きの盛り合わせ。
和柄のお皿に千切りキャベツにスパゲティーのケチャップあえ。生姜焼きとメンチカツ。
カメラを向けると一瞬レンズが曇ります。
メンチカツの上にたっぷりかかったソースが熱々。メンチカツも揚がったばかりの熱々で、熱々の上に熱々ソースがかかって油が瞬間、揮発する。油混じりの蒸気はしばらく料理の周りにスモークかける。
ご飯に味噌汁でひと揃え。
おいしい匂いも一緒にただよい、お腹をならす。

独特のメンチカツです。ひき肉とみじん切りの野菜、そしてパン粉が渾然一体。
そこにソースがからんでくるから揚げたて感はあるのだけれどみずみずしい。噛んだ瞬間は、前歯がカサカサ、パン粉を感じて、ところが舌の上にのっかった途端に今度はしっとり。ソースで濡れた感じがおいしい。
あぁ、なめらかだ…、と、思いながらもやっぱりどこかに揚がったパン粉のカサカサとした食感がある。口の中がとてもニギヤカな、唯一無二のオキニイリ。

生姜焼きもちょっと独特。分厚く、脂の少ない部位にたっぷり、タレをまとわせしっとりとやく。ケチャップ由来の酸味が強めで生姜の香りがよきアクセント。生姜焼きといえばどこか和風な感じがするけれど、ココの生姜焼きは洋風味。
ケチャップあえのスパゲティーも素直にケチャップの味がおいしく、シンプルだけどこれが食べたかったんだ…、って気持ちをくすぐるオゴチソウ。
練った芥子をメンチカツや生姜焼きにたっぷりのっけるように味わう。芥子の辛味や風味がやさしい料理にくっきり、輪郭つけてご馳走にする。半分ご飯じゃ足りなかったか…、って思いながらもお腹が満ちる。

ちなみにこの店の入った建物。一階部分の一番手前がこのグラン。一番奥には「近江や」という和食のお店。その両店ではさまれたとこに「さぶちゃん」という半チャーラーメンで有名だったお店があった。
やっていたのは三兄弟。「近江や」さんはまだご主人ががんばっている。たださぶちゃんは先日、ご主人のご高齢を理由に閉店。
このグランも一時期、閉店してた。ご主人が揚げ場に渦巻く油を吸いすぎ、気管支痛めての閉店で、けれど身内の方が引き継ぎ今に至ってる。
とは言え、サービスをしている方はご高齢。
大きな声で注文しないと耳に届かなかったりすることがある。引き継がれたときには若いと感じが今のご主人も、すっかり白髪で、そういうボクも間もなく60。このまま継ぐ人がなかったらどうなるんだろう…、って思いもします。

家業でやってる飲食店に行くと感じるコトがお店の高齢化。どんなに人気があっておいしく正直でも、続かぬお店が続々でてくるかもしれないなぁ…、としんみり今日はしてしまう。
しかもこういうお店の事業の継続に対してコンサルタントができる仕事はほとんどなくて、かつて豊かを誇った日本の飲食店が萎れていくのを看取るコトが仕事じゃつらい…、とまたまたしんみり。考えよう…。

 

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コメント

  1. nue

    ああ、「さぶちゃん」も閉店してたんですね。数年前、テレビの取材受けてたから安心してたんだけど。何だか愛想の悪い親父さんが懐かしい。半チャンラーメンももう食べられないのか…。
    グラン、さぶちゃん、近江屋のオーナーが三兄弟って初めて知った!!

    • サカキシンイチロウ

      nueさん
      炒飯とラーメンを食べるという文化が生まれたさぶちゃんも、炭水化物の食べ過ぎは体に悪いなんて風潮にも負けず頑張って、けれどお年にはかなわなかった。
      勿体無いお店をなくしてしまったなぁ…、ってしみじみ思います。
      3つのお店で働く人たちがみんな同じような風貌でらっしゃることに、日本はやっぱり家業、小さな会社や小さなお店が元気でないと…、と思って気合をいれていた頃がなつかしいです。

  2. nue

    さぶちゃんもお昼時にはサラリーマン風のおじさんたちが結構ならんでいて、予備校生風情には最初なかなか入りにくかった記憶が(笑) 無くなったとなると寂しいものです。ところで、40年ほど前のあやふやな記憶ですが、「いもや」は明治大学の方にも店がありませんでしたか?その隣にカレー屋もあって、大盛りは洗面器の様な大皿で、明大の格闘系の方が貪り食っていた覚えがあるんですが。いもやというと思い出すんですが…別の店だったのかしらん。

    • サカキシンイチロウ

      nueさん
      あったと思います。天丼のいもやではなくおそらく天ぷらのいもやだったと記憶します。60年ほど前に創業されてそれから20年位の間は破竹の勢いでお店を増やされていたと聞きますし、それもこれもお店をやっていた方々が若かったからということでもあるんでしょうね。

      • nue

        ああ、そうでしたか!!長年の混乱に終止符が。ありがとうございます。
        懐かしい店、残っているところをたまにはまわっておくことにします。いもやの傍なら…まずは北京亭かな(笑) 
        いつも楽しい記事ありがとうございます。

        • サカキシンイチロウ

          nueさん
          北京亭さんも、一度、代が変わったように記憶しています。この界隈。例えば喫茶店のエリーゼであったり復活してほしいお店が沢山あります。機会があったらスヰートポーズの饅頭が食べられる午後1時以降を狙ってみようかと思っています。

  3. nue

    北京亭も数年前?に久しぶりに行ったとき、昔の厳しい目つきの中国人のおじさんから、何人かの若い料理人さんに代わっていたような気がします。でも奥のテーブルにおじいさんがいたような?ラーチャンジャージャー麺、まだあるかしらん。スヰートポーズ、名前に記憶があるのですが入ったことは無かったような?今度行ってみます。ありがとうございました。

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