2020年、新春のご挨拶

友人が描いてくれた絵。
月岡芳年という江戸の後期から明治時代にかけて活躍した画家の「名月やきて見よがしの額際」という作品をなぞって描いてくれたもの。
これがいたく気に入って「今年のボクの絵」にすることにした。

元の芳年の絵は、額に入れた剃りこみを月にもみせたい!と思う伊達男の気持ちを描いたもの。たしかにボクの額も見事に後退しはじめていてぴったりな絵かもしれない(笑)。
ただ後ろを軽く振り返りつつ、目はしっかと先を見据えて遠く輝く月をみつめる姿がどこか、今の気持ちや覚悟に似ている。
それで今年の絵にした次第。

50年ほど前に日本で生まれた外食産業。
ずっと守り続けた「システム」であったり「定石」であったりが経年劣化で壊れはじめた。
それが去年という年だったような気がする。
店を増やせば経営が安定する。
そう思っていきなりお店を作った会社がいきなり不景気になってしまう。
いつもどこでも同じサービスを提供することがチェーンストアがお客様から信頼をえる唯一の条件。
年中無休が当然だったのに年末年始に休みをとるチェーンが増えた。
人手不足にもかかわらず働き方が変わらないから、営業時間の短縮や定休日を設けないと店が回らなくなってしまっている。
家賃や経費は変わらないから、営業時間や営業日数の減少はそのまま売上低下につながる。
結局食材をケチるか人件費を減らすしかなく悪循環は止まらない。

人手をかけることができない外食産業は「価値販売」でなく「価格販売」の産業になる。安売りです。
体力のある大企業は安売りしても利益を搾り出すことができるけれど、真面目に営業している生業店も価格競争の影響を少なからず受けてしまう。日本の飲食店はどんどん貧しくなっているのです。
お客様の目も厳しくなる一方で、SNSや評価サイトを気にしなくてはいけなくなった。自分でこれでよいと思っていても、お客様がダメと言えば評価されたことにならない。自分で自分を褒めることができない状況で、どんな未来を描けばいいのかもうわからない。

それが今の外食産業の姿です。
しかも厄介なコトに、やることは全部やり尽くしている。にもかかわらずよくならないこの環境を良くするためには、外食産業の外から手を借りなくちゃいけないんだろう…、と昨年の後半しみじみ思った。
新しい出会いがいくつかあって、今年は飲食業にとってあたらしい仕組み、システム、環境を提案し現実のものにすることを仕事にしようと張り切っています。
外食産業50年目の大革命。
後ろを軽く振り返りつつ、目はしっかと先を見据えて遠く輝く月をみつめる。よろしくご支援お願いします。

コメント

  1. ちい

    明けましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。
    わたくし今年ちょうど50歳になります。外食産業と同い年。食べること、食べ物を作ること。ずっと大事にしていきたいことです。自分のゴキゲンを取りつつおいしいもの食べて作って、楽しく過ごせるよう精進します。

    • サカキシンイチロウ

      ちいさん
      今年60歳になるボクも50歳になったころから自分の好みに素直でたのしく食事ができるようになりました。
      人が生きる上で必要なことだからこそ、大切に、そして気持ちに素直に食事ができるいいなぁ…、と思います。
      今年もよろしくお願いします。

  2. マンダリン

    明けましておめでとうございます。
    美味しい話をいつもありがとうございます。
    外食産業50年目、日本マクドナルドからでしょうか?釈迦に説法ですが日本食堂という会社は1938年創立です。榊さんのお考えの外食産業とは別分類なのでしょうが。少々気になったので書かせて頂きました。申し訳ありません。

    • サカキシンイチロウ

      マンダリンさん
      飲食業、あるいは食堂業と外食産業は別の仕組みで出来上がっているものというのが業界の考え方なのです。
      外食産業という言葉は1970年代以前にはなかった。したがって日本食堂は外食産業以前からあった従来型の飲食店の仕組みで出来上がった飲食店。外食産業店が成長続ける中でもしばらくの間は日本最大の飲食会社ではありましたが、10年ほどで外食産業の考え方で出来た会社の前にあっさりトップの座を明け渡してしまいます。
      外食産業のベースになっている仕組みが日本マクドナルドを中心としたアメリカからやってきた企業の仕組み。したがって外食産業の歴史は50年ほど。
      ただなやましいのが今にあっても「外食産業の考え方」で経営されている飲食店も、広義の外食産業に含まれてしまっているということ。なのでマンダリンさんが抱かれた懸念は当然のことと思います。
      ちなみに日本食堂につながる飲食店の仕組み、考え方は遡ると江戸時代までさかのぼってしまい、その歴史たるや世界でも最古のものといわれさえします。
      そしてオモシロイのが劣化してしまったのは外来の外食産業の仕組みであって、昔からずっと続く飲食業の仕組みは未だに頑丈で健在だったりする。しかしそんな頑丈な仕組みですら、外食産業の新しい仕組みに影響を受けること甚だしくなやましい状況に陥っている。
      外食産業も飲食業も両方同時に救おうとすれば、それこそ革命を起こさなくてはならなくなるのです。詳しくはこれから一年かけて、このブログでも紹介してきたいと思います。

      • マンダリン

        榊さん
        ご教示ありがとうございます。疑問が解決しホッです。
        日本食堂も全国展開のチェーン店でしたが、食堂業ということですか。「アメリカからやってきた企業の仕組み」の部分は漠然としたイメージでしか掴めませんが、その辺りはプロの分野でしょうから・・・。
        本年も美味しい話と興味深い内容で楽しませて下さい!

        • サカキシンイチロウ

          マンダリンさん
          誰にでもできるように仕組み化、マニュアル化するということと、職人性の排除。徹底した標準化と分業化というのがアメリカ的な仕組みの根幹となります。
          その権化がマクドナルド。
          同じようにアメリカからやってきたスターバックスはそこから少々逸脱するので、ボクは脱外食産業の典型と思っています。

  3. Wordsworth

    明けましておめでとうございます。
    「美味しいものが喰える」というきっかけであっちにふらふらこっちにふらふら…と旅ができるのは地元の方に指示されている飲食店の皆様がいらっしゃるから。サカキ様のご紹介に先導されて美味しい想いをさせていただいております。

    これからもいろいろ勉強させていただければ幸いです。どうかお身体ご自愛ください。

    • サカキシンイチロウ

      Wordsworthさん
      ボクも、産業店でなく飲食店だけとずっと付き合って行くことができればシアワセだろうなぁ…、と思います。ただチェーンストアのような外食店が健全でないと、産業の毒が飲食店にまで染み出して、色の産業全体が悪い影響を受けてしまう。
      だからチェーン店をまずなんとかしないと、豊かで多様な日本の食の産業が、薄っぺらで単純なものになってしまう。がんばりどころです。

  4. はっち

    サカキさん
     今年も美味しい話題を待っています。食べることは幸せで楽しいことですよね。ステキなお料理の写真を見て読んでいるだけでもワクワクします。ありがとうございます。
     外食産業って、まだ50年なんですか。意外と歴史が浅いんだなあと驚きました。これからも、どんな発展をするのでしょうね。

    • サカキシンイチロウ

      はっちさん
      飲食業の歴史は古いです。けれど大きな資本と知恵、システムを駆使してチェーンストアを多くの会社が目指し始めたのは本当につい最近のこと。
      にもかかわらず、それが唯一の成功の法則であるかのように未だに信じて必死になる人達があまりに多くて、それが今の食の産業の歪を作り始めている。
      飲食店の経営スタイルも、多彩で多様であるべきなのになかなかそうなっていかないところがもったいないなぁ…、と思うのです。
      世界に誇る多彩で多様な日本の食。
      それが100年先にも当たり前のようにたのしめるように、考え方や行動の仕方をちょっと変えなくちゃいけないなぁ…、としみじみ最近思います。

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