100%とんこつ不使用ノーポークラーメンの一蘭

西新宿に今年の春にできた「一蘭」。
豚由来の成分を一切つかわずとんこつラーメンのような味わいに仕上げたラーメンの専門店。
見た目は見慣れた一蘭の店。
ところが看板には「No Pork Ramen」だとか「100%とんこつ不使用」だとか勇ましいメッセージが書かれている。軒下の提灯に至っては「とんこつ不使用ラーメン発祥の地」とたかだかに宣言されてて気合を感じる。
主に宗教上の理由で豚由来の食品を食べることができない人がたくさんいる。
けれど日本で人気のラーメンといえばとんこつラーメン。それってどんな味なんだろうという好奇心を満たせるとしたらニーズはあるに違いなく、その好奇心を充足させる対価は基本1150円。トッピングをしていくと2000円近くの出費になるけど、決して高くはないのでしょう。
24時間営業の店。朝の時間はさすがに静か。店に入ると券売機。チャルメラの音が響いて一人用のブースが並ぶお店の姿はここでも同じ。

昔、一蘭に初めて来たときには、なんてへんてこりんな店なんだろう…、って思った。ブロイラーのケージのような場所に閉じ込められて、ひたすら食べる。食事を終えたら卵一個産んでしまいそうになるよね…、なんて言っていたけどこのシステムがいろんな意味で良かったのでしょう。
スタッフとのコミュケーションは最小限。ほぼ日本語は必要とせず自分だけの空間、時間が保証される。食べることに集中してほしいというのが彼らの目論見だった。ところがそれが飲食店は写真を撮って投稿する場所という、SNSの時代にぴったりハマった。このコンセプトは未来をたぐりよせるコンセプトとして生まれたんだ…、ってしみじみ思う。

カウンターの前のスダレがサッとあき、うやうやしく差し出された長方形の陶器の小箱。
蓋を開けると見慣れた景色。
まずスープをズズっと…。
まぁ、びっくりです。
ぽってりとしたとろみに喉越し。
強い旨味に口を満たして鼻から抜ける独特の香り。
唇同士が貼りつくような脂の状態とどれをとってもとんこつラーメンのスープでしかない。
しかもとても上等で農耕なとんこつスープ。豚肉由来のものをまったく使っていないのに、とんこつラーメンの味がするということになってしまうと、一体、ボクたちは何をもってとんこつスープというものを認知しているんだろう…、ってなにがなんだかわからなくなる。

トッピングでたのんだ海苔とキクラゲをのせてズルンと麺をすする。
極細の麺にからむスープの状態も見事なもので、麺と麺がスープの力でくっついて、太い一本の麺の形を成したスープが口の中に流れ込み、一瞬にしてそれがバサッとちらかって口の中を騒々しくするさまにウットリ。とんこつラーメンを喰らう醍醐味が十分、これでも味わえる。
チャーシューの代わりに入れられた牛肉は、すき焼き風の味付けでちょっと独特。これはなくてもいいのかなぁ…、と思いもするけどラーメンというものに存在してほしいものをすべて代用品であれのせる。サービス精神旺盛なことに感心しました。勉強でした。

 

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コメント

  1. to22by

    宗教上の理由ではなくん、単に豚骨スープのラーメンを好まず、昔々の中華そばのような、ごくシンプルでクリアーなスープ、それでいて深い美味しいさのある醤油ラーメンを求める人はどうしたらいいのでしょう。知らなければ、「とんこつ不使用」と言われたら、間違いなくそれを期待して入ってしまうでしょう。だのに、食べてみたら、ポークを使用しないとんこつ味のラーメンだったら、とてもがっかりしてしまうと思います。それとも今の日本のラーメンはラーメン=とんこつ味が常識なのでしょうか。若干時代遅れな、そして場違いな質問なのかもしれません。

    • サカキシンイチロウ

      to22byさん
      一蘭のラーメンを食べたい…、という人たちが非常に多いのだろうと思います。
      クリーミーでポッテリとしたスープを飲みたいのだけれど、宗教上の理由でという人は、他の選択肢がなくそんな人達のために「一蘭なりの回答」をしたのがこのお店というコトなのだろうと思います。
      なので「とんこつ不使用のラーメン」でなく「とんこつ不使用の一蘭のラーメン」というメッセージなのだと受け止めることが正解なのだろうと思います。
      実はボクもとんこつラーメンはまり好きではなく、スッキリとした「中華そば」が好みなので、最近のラーメン=とんこつのような風潮はあまり好きではない。ただ、豚肉に対して禁忌を持っている人たちにとってこの中華そばこそが厄介なものだとも聞きます。骨を壊しコラーゲン質の力を借りてとろけスープを作るとんこつスープは見るからに豚スープということがわかりやすいけれど、スッキリとした透明のスープの原料の中にも豚肉や豚の骨がまぎれることがある。
      食の世界とは本当にむつかしいもの。
      今まで問われなかった製造の背景を明確にしなくてはならない時代がきたんだ…、と思うと、食べ手である私達の姿勢も問われる時代なんだと思います。

  2. 食欲

    私の同僚に通風持ちがおりまして、食べると必ず足が痛み出すというのがポーク。もちろんポークの料理は食べませんが、サカキさんがおっしゃる通り、スープやらスナック菓子にこっそりと入っていて、それを見分けるのが難しいそう。
    宗教上の理由ではっきりとポークのみが食べられないという方々と彼はまさに同じ。そしてそれでも食べたいというのもまた同じ。とんこつ不使用、いいんじゃないでしょうか。ポークを食べられる人達も、ちょっと罪悪感が減りそうでいいですよね。

    • サカキシンイチロウ

      食欲さん
      実はボクも今年の夏、痛風を久々発症しまして、エビと鶏レバーを食べぬようにと心がけています。
      フォアグラを食べることができなくなって、もうさみしくて、さみしくて。ただレバーを避けることは簡単なのですが、エビはむつかしい。粉、エキスとさまざまなところで風味、旨味を補う調味料として使われているのに今更ながらビックリしております。
      それでもたべたい、という気持ち。
      人間の性とでもいいますか…、それに対応することも飲食店の大切な使命のひとつなのかもしれませんね。

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