飲んで喰らって逝きし人を想う…。

中野の第二力酒蔵にくる。
タナカくんがこの上もなく愛した居酒屋。
そしてタナカくんはお店の人気者だった。だっておいしそうに食べて飲んで笑うんだもん。
気さくなお店のおばちゃんたちが「まりおちゃん、ひさしぶり」「まりおちゃん、何食べるの?」って近づいてきて、だからこの店ではボクは彼のオマケみたいな存在だった。
昼の2時開店。早い時間にいくと近所のじいちゃんたちが魚を肴に日本酒をちびりちびりとたのしんでいる。
年とって残り少ない時間を、こんなところで無駄遣いするのってなんて贅沢なことだろうねぇ。ボクらもあんな風にくたびれていければいいなぁ…、って来るたび言って笑ったものです。今日は仲のいい友だち誘って三人で。彼を一番かわいがってくれてたおかみさんに亡くなったことを伝えると、食べて飲んで冥福祈ってあげてください。私たちも偲んで今日は料理を作りますからネ…、って。

いつも絶対たのんだ料理をまず3つ。
これを食べるのをたのしみに来てた「煮豆腐」。魚を煮続けた煮汁でクツクツ炊いて仕上げた豆腐で、ふるふるなめらか。口に含むと魚の味が染み出してくる安くておいしく、しかもお腹があったまり酒をおいしくしてくれる。
それからホッキのバター焼き。粉を叩いてその表面がサクサクになるまで熱をくわえて仕上げる。味わい濃厚。ホッキの旨味を粉がもれなく吸い込んで、バターの香りもおゴチソウ。イカをサイコロ状に切り分けて、衣をチリチリさせて仕上げたかき揚げは濃い目の天つゆにたっぷり浸してハフっと食べる。衣が儚く崩れ、イカがクニュっと潰れて口に散らかる。今日もやっぱりおいしいよ!

青柳のぬたも好物だった。
2人とも付き合いはじめた頃にはぬたなんて食べ物がこの世に存在することを意識しないで食べていた。
それが40半ばで開眼し、ここ10年くらいは自分たちで作って食べたりもした。
でもお店で食べるのはやはり格別。
青柳のクニュクニュとした食感が引き立ちずっと食べていたくなるオゴチソウ。
土佐酢にトプンと浸された〆鯖。
脂が乗っていて口がひんやり、冷たく感じる。焼酎のお湯割と一緒に食べると旨いのなんの。
貝の刺身の盛り合わせもいつもたのんでおりました。
食べ物の好みが似ていたことが長く付き合うことができた理由のひとつだったに違いなく、互いの嫌いもその理由を含めてよくわかってた。だから食べることで喧嘩をしたり失望したりすることがなく思いやれたのがありがたかった。

赤貝、石垣貝の柱に小柱。どれもおいしく中でも赤貝のネットリぷるんな噛み応えに昆布にも似た粘りと旨味は格別。ウットリします。
岩牡蠣をひとり一個。今日付き合ってくれた友人とは、いつもいろんな企みを考えては盛り上がってた。今年の秋に個展をしようなんても言ってたし、いつかフランスに牡蠣を食べに行こうよ…、なんて言って互いを勇気づけあっていたんだけれど夢は未完で今日のここ。
イワシの塩焼きは腹まで旨く、タナカくんが大好きだった穴子の天ぷらは今日もさっくり、むっちりおいしい。

何を食べても一緒に食べたものばかり。
ここで一度もたのんだことがない料理たのんでみようと、イカの生干しを焼いたのたのむ。
一杯丸ごと。遠火でふっくら焼き上げて、切り分けた断面がブリンとそっくり返る姿がまずおいしい。
自然な塩のおいしさに、噛めば噛むほど口に広がる旨味にこれも酒をすすます。
一緒に食べたかったなぁ…。
イチジクの天ぷらは去年の同じ時期にここで食べて気に入った。衣がサクッと壊れてとろけるイチジクと混じり合う。プチプチ花が壊れる感じを強調するような天ぷら衣の歯触りに油の香りがなんともおいしい。あのときは調子に乗っておかわりしたんだ…、思い出す。
里芋の炊いたの、軽くぬかで漬けた水なす。そろそろ水なすの季節も終わる。そしたらなす田楽のおいしい季節。どこで食べよう、あるいは作るかってぼんやり思う。

2人のときはここで程々飲み、食べて寿司をつまみに中野の街に繰り出した。今日はお店の空気が心地よく、なんだか一緒にいるような気持ちがしたから長居した。
〆もここでと、鯖の押し寿司。脂ののったハラミのところにガリに大葉がさわやかで、〆のつもりがお酒がすすんで会話もはずむ。
それからしばらく思い出話を肴に飲んで、〆の〆をなめこ汁と梅干しのおむすびにした。とぅるんとなめらかななめこが喉を撫でまわし甘い赤味噌でお腹をホッとさせながら、すっぱい梅で口をスッキリさせて〆。
おやつどきにやってきて、お店を出たら日が暮れていた。たのしく時間を無駄遣いした。タナカくん、今日も君は人気者。

 

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