雅味近藤で、ひとあし先の春を味わう

岐阜に向かう新幹線に電話がかかって、「晩御飯に何食べますか?」と。おまかせしますって言ったら、ならばいつものお店。「雅味近藤」にいたしましょう…、って。
何度も来た店。けれど何度来ても新たな発見があって、だからワクワク。
座敷にあがって梅酒をもらって乾杯し、間もなく料理がやってくる。途端に「わーっ」って小さな歓声がみんなの口からこぼれます。

日本庭園の川にかかるような形に組み上げられた木皿の上に器が3つ。ちまきが一本、あやめの葉っぱをさして景色を作ってる。真ん中の器は兜の形をしていて、なるほど間もなく端午の節句。季節をまずは目でたのしみます。
左手のお皿の中には小さなトマトの出汁浸し。トマトだと思って食べるとかんだ途端に出汁の風味がほとばしり出て、ちょっとビックリ。サプライズ。
豆腐は新玉ねぎで作ったもので、これまた食べると口の中が玉ねぎの甘みと風味で満たされる。どちらの料理も見た目を裏切るたのしい趣向。

真ん中の兜をそっと持ち上げる。中には太ったホタルイカ。酢味噌と一緒に味わうと、プチュっと潰れて中からワタのほろ苦み。プルンとイカの身はあまやかで口の中を滑って消える。
左側の皿にはおから。すっぽんの出汁でまとめたココの名物。それに茹でたそら豆がつく。お皿の上の料理をキレイに食べるとそこには鬼の顔と桃太郎と笑顔が残る。お皿の柄がそうなっていて、真ん中の兜の器と一緒になってひとつの景色を作ってる。今の季節ならではこの組み合わせ…、感心します。
ちまきの中にはエビの寿司。キリッと酸っぱいシャリの上に茹でた玉子の黄身の裏ごし。プルンと茹でたエビが甘くてムチュンと歯切れる。どれも味わい軽やかで、お腹に空腹を思い出させるよき前菜。

汁が到着。
飛沫をまとった蓋を取ると、中にはたっぷり。
香り豊かな出汁でみちてる。
その中心にはすり身で作った四角い真丈。
その真丈のサイズに合わせた小さなしいたけ。ニンジン、木の芽が彩り豊か。

この真丈がワカメの真丈。
出汁にも昆布の旨みが混じり、口いっぱいに海の旨みが広がっていく。
ワカメと言えば今では年中手に入る素材ではある。
けれど冬を過ごして噴き出した「若芽」がもっとも風味豊かでおいしい季節はまさに今。春食べるべき素材をこうして汁にする。アリガタイなぁ…、とニッコリします。
良きリズムで次々料理が続きます。

まず刺身。今日の主役は真鯛の昆布締め。本来ブリンと歯ごたえのある鯛の切り身が、昆布に馴染んでネットリ、なめらか。強い旨みを歯茎をなでて絡みつくような歯ざわりにウットリします。上にのっけたウニも上等。
生のトリ貝、マグロの赤身と食感、味わい異なる刺身を従えて、口の隅々たのします。
焼いた魚は太刀魚で、皮目を無数に入った包丁の名残がキレイ。
皮はパリパリ、身はシットリと。もともと小骨を沢山もった太刀魚の、小骨をみんなキレイにとって、だからパクパク味わえる。強い旨みと入念な手わざを感じるすばらしさ。

それから小鍋。
クツクツ小さく沸騰しながらやってきて、具材にビックリ。
皮目をこんがり、揚がるように焼けた鶏肉。白菜にネギ、それから焼いた餅が入ってひと揃え。
出汁はカツオと昆布の出汁で、なのに鶏の脂が混じっただけでまるで、中国料理の上湯スープのような味わい、風味になってる。
ムッチリとした鶏のもも肉。甘い白菜、風味豊かな白いネギ。なにより焦げた餅の風味がスープにまじり、ネットリとした餅の食感もまたオゴチソウ。

今日のメインディッシュが稚鮎。
稚鮎というにはちょっと大きく、太った鮎であられをたっぷりまとわせ揚げる。だから表面バリバリとして、前歯をしたたか抵抗をする。

ところがパリッと歯切れると、中はフッカリ。ワタがトロリととろけて崩れ、苦味と渋みがビリリと舌を喜ばす。ふきのとうにコゴミがサイドに彩り添えて、それらそれぞれも渋み、苦味をたのしむ素材。春とはそういう季節でござる。
固くてけれど甘いトマトとおひたしにした菜の花で口を洗って腹七分。

コース料理はこれでひと段落。
あとは〆のお食事を…、というのだけれど、やはりココの名物料理を食べておきたい。
「饅頭」たのむ。

芋をふかして崩したモノを、まんまるにまとめて蒸してあんをトロリとかけた料理。中には必ずカニのほぐし身が入って仕上がる。
ただ饅頭の素材自体は季節にあわせて変わるたのしさ。
春の今日。
そら豆で作った緑の饅頭でした。
そら豆独特の香りがフワリと鼻をくすぐる。
その饅頭の上にパラリとからすみちらかり、そら豆自体の香りを魚卵独特の香りが引き立て塩味、旨みが口に広がる。
あんはなめらか。熱々で、ハフハフしながら味わうと自然を息を吸い込みながら食べることになる。その度、鼻から抜ける香りにウットリしながらお腹あったか。そして〆。

土鍋ごはんがやってきました。中にはワカメとしらすがたっぷり。鍋の蓋をとった途端に磯の香りが湯気と一緒にフワリ漂う。座敷の片隅でお店の人が茶碗にご飯をよそってくれる。汁と漬物、炊きたてご飯でお腹を満たすシアワセ、しみじみ。
ワカメの香りにしらすの味わい。三つ葉がシャキッとみずみずしさを発揮してふっくらとしたご飯の食感、引き立てる。
甘味が最後にやってきて、今日の〆。
甘いイチゴに自家製抹茶のアイスクリーム。きな粉のプリンが風味豊かでシアワセな夜に蓋をする。春を一杯たのしみました…、ありがたきかなオキニイリ。

 

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コメント

  1. かにっこ

    こんにちはサカキさん。岐阜にいらっしゃるんデスね。先日、冷やし中華の記事拝読しました。岐阜にゎ面白い冷やし中華、あります。普通の冷やし中華の横にこっそり添えられるものが。中部地方ならでゎの冷やし中華デス。キワモノと思われるかもしれませんが、ワタシにゎなくてはならないもの。答えゎマヨネーズ。夏の中部地方にお出掛けの際、ぜひご賞味あれ!
    食いしん坊のサカキさん。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      かにっこさん
      マヨネーズはおいしいですものね。東京でも冷やし中華のサイドにマヨネーズをチューブごと置いていくお店があったりします。
      日本全国、いろんな料理があるのがたのしく、痩せる暇もございません(笑)。

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