間もなく春の、雅味近どう

岐阜に来ていつものように「雅味近どう」。
最近、立て続けの訪問で、けれど、今日もおいしい料理がたのしめるに違いない…、って期待が膨らむ。
夜になって岐阜の街は痺れる寒さ。お店の中に入ると空気があったかでまずホっとする。
季節を飾った一皿目。
雛飾りの形を模した蓋つきの器。蓋を開けるとお内裏様にはすっぽんのスープで炊いたおからが収まる。お雛様には青菜の胡麻和え。スタミナ系の料理がお内裏様に収まっているというのにニッコリ。
菜花のおひたし、イワシの梅煮。季節の料理がハマグリ方の器に並んで、お腹の準備をしてくれる。

汁が続きます。
いつもならばお椀の蓋に霧吹きでふかれた水滴がたまってやってくるのだけれど、今日は水滴がすっかり乾いておりました。
いつもに比べて今日はにぎやか。ほぼ満席という状態で厨房の中が忙しかったのでしょう。
とは言えお椀の中はまだ熱々で、器もしっかり温められていたから水滴が蒸発するのが早かったのに違いない…、って思ってフーフー。タケノコの穂先に小松菜、わらび、山菜をそっとどかすと下には豆腐。カニのすり身がタップリはいって出汁の旨味と混じりあう。出汁は日本料理の基本。それが旨いとホっといたします。腹も空く。

もう十数回は来ているお店。
板前さんが一人で厨房を切り盛りしていて、だから得意な料理、得意な素材が限られてくる。だからといって、それが退屈に向かっていくかというと決してそうでもなくて、むしろ、いつも同じリズムとストーリーがホっと気持ちを安心させる。
なにより一人でやっているというコトに甘えぬ仕事の見事にいつもウットリ。

例えば今日の刺し身にしても甘エビに鯛、マグロにイカと決して変わった魚ではない。けれど鯛は分厚くブリブリ感をたのしませ、マグロは細めの拍子木でさっくり歯切れるところが旨い。
イカには細かく包丁が入ってねっとり、とろける感じをふくらます。
サイズ上品。だからこれはご飯のおかずじゃなくて、酒の肴なんだよ…、って何も言わずともわかる姿がまた潔し。

それからココの名物料理。芋饅頭。すりつぶした芋をまとめて芯にカニのほぐし身を詰める。蒸したところに銀餡かけてその熱々を味わう料理。季節、季節で芋の種類がかわったりあんの風味が変わったり。今日は柚子の香りをまとわせ春の予感をただよわす。

それから焼き物。メインは葉っぱで覆った下にある。サワラの柚庵焼でねっとり。皮の粘ってとろける感じがなんとも旨い。
魚の上には酢蓮と田楽。自然な甘みの生麩の上に甘い白味噌をたっぷりぬってこんがり焼き上げ仕上げてる。ムッチリとした生麩がとろけてねっとり舌や歯茎を撫でる肉感的にウットリします。
四角いお皿の上の小さな器の中にはもずくとクラゲ。大きな塊でゴリゴリ歯切れるクラゲの周りにメバルもずくがまとわりついて、クラゲが粘っているような不思議な食感。酸味も旨い。
最後の料理がぶり大根。あら、珍しい。今日は油ものが出ない献立。しかもぶり大根という家庭料理の代表みたいな料理で〆る。オモシロイなぁ…、と思いながらも食べるとこれが上等な味。脂の乗った鰤のカマを丁寧に下ごしらえして臭みをとって、甘辛味に仕立てる。その味、旨味が大根に思う存分飲み込まれていて、感心します。

〆の食事にまず漬物と汁がやってくる。
そして続いて大きな土鍋。分厚い本体、重たい蓋。中が沸騰すると自然と自分で圧をかけてたかれる。蓋をあけると中に覗くのは色鮮やかなワカメの群れ。その合間に角切りされたタケノコの根っこに近い部分がゴロゴロ。
よくかき混ぜるとおこげがおいしげな香りを吐きつつ顔を覗かす。
季節の味です。ご飯につけた味はほのかで、タケノコの味や香りをたのしむための粋な塩梅。出汁のきいた味噌汁に、漬物お供にお代わりをする。
最後の水菓子がみかんと苺。このみかんが甘くてみずみずしいこと。しかも甘いだけでなく、酸味もキリッと際立って口を潤す。ゴキゲンな夜のオゴチソウ。

 

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コメント

  1. ボルテイモアのおかず

    可愛いお雛様に桃の一枝、一足早く春が来た、という感じの楽しいお献立ですね。これらを御一人でなさるとは、雅味近どうさんは、手品師でアーテイスト!?
    汁のお椀の意匠も毎回違い、今回は何でしょう?せりでしょうか—?
    (全て素晴らしいお品の中で、私が今回一番食べたいのがぶり大根でした)
    サカキさんご出張、どうぞお体お大事に。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      ボルティモアのおかずさん
      お椀の上には野芹の衣装。これもまた季節ですよね。
      献立を立てることから下ごしらえ、そして調理を一人でなさる。だからこそすみずみまで気持ちが行き届いた統一感も生まれるのでしょう。
      おっしゃるようにこの日の献立の中で、意外でありながらしみじみおいしいと感じたのはぶり大根。日本ってステキだなぁ…、としみじみ思いました。

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