荒木町をはしごする夜、ネタはなくとも心は錦
夜、荒木町にでる。
静かになってしまった町も、昼にはそれでも人がいた。けれど夜はさすがに静か。「あたぼう鮨」にやってくる。
実は昼間、この界隈をずっと歩いてそれぞれお店の営業状態を見回った。
そしたらこの店。いつもは夜しか営業しない店なのに、昼も営業。代わりに夜は8時閉店の通し営業。テイクアウトで寿司の盛り合わせなんかも対応はじめたと告知の看板。
そういえば最近寿司を食べてなかったと、お店に入って夜の予約をして帰ったのです。
それで夜にやってきたのだけれどお店は静か。ボクらだけ。
カウンターに座ったらいつもの癖で「貝をあるだけくださいませんか」とお願いをした。すると実は今日はつぶ貝とホタテくらいしか用意がなくて…、と。目の前のショーケースを見るとそこはガラガラ。お客様が来ないからいつものように仕入れられないんですよ…、って。
確かに足の早いのが寿司ネタです。
こりゃ大変だなぁ…、って思いながら、ならばあるだけ見繕って握ってくださいってお願いをした。
まずつぶ貝、ホタテ。
ゴリゴリ奥歯で砕けるような食感がおいしいつぶ貝。
噛んでるうちにどんどんとろけて磯の旨味が口に広がる。ホタテはなめらか、旨味が強い。
カウンターの中の職人さん、2人をボクらで独り占めです。ひとりがさばいて下ごしらえし、もうひとりがテキパキ握る。
早食いのボクも追われるほどに次々寿司がやってくるのがありがたい。
ヒラメにイワシ、アジにサバ。アジやサバは生と酢じめの両方を味わいそれから軍艦。ウニとホタルイカがやってくる。
ホタルイカは実はあんまり得意じゃなかった。生臭くって口がバリバリ砕ける感じがするのがちょっと好きじゃなく、でも今日のこれのおいしいこと。やっぱり鮮度なんだろうなぁ…、って思って味わう。ウニは甘くてとろけて消える。海苔の風味もまたオゴチソウ。
分厚い穴子をパリッとやいて甘いツメをほんの少々。サクッと歯切れてとろりととろける。ここのシャリはきっぱりとした酸味がおいしい。甘味控えめでネタの持ち味がたのしめるのが好みで旨い。
それからマグロ。赤身と中とろをひとつづつ。赤身の酸味のおいしいコト。どちらもしっかり熟成されてて、脂臭さがなく旨い。ピトッと舌に張り付くような赤身の食感、ねっとりとろけるトロの味わい。薄焼きにした玉子で田麩をくるんで仕上げた握りで〆にしました。お持ち帰りのお客様が数人やってきたことと、ちょうどボクらと入れ替わりで3人組が陽気に飛び込んできた。ちょっと安心、席を立つ。
家に帰ろうと歩いていたら途中のお店の人と目が合う。
気持ちよさそうなバーレストラン。こういうときははしごもいいかと、お店に入るとノーゲスト。
こういうときですから、うちみたいなお店で飲もうってお客様は少なくって…、とそれでも元気で微笑むご主人。
カウンターの後ろの壁には洋酒の瓶がズラリ並んで、メニューをみるとヒューガルデンも用意されてる。飲みすぎると足が痛くなっちゃうからとしばらくビールは飲んでなかった。
たまにはいいか…、とそれをたのんでのんびりと待つ。
お店の奥にはダーツマシンにテーブルフットボールのマシンが置かれる。壁に吊るした大きなモニタにはテーブルフットボールの試合の様子をおさめたビデオが流れる。スポーツバー的雰囲気も、お客様がいないとちょっとさみしい感じ。しょうがない。
ヒューガルデンと一緒にポップコーンがサービスでくる。コンソメ味でおいしくてパリパリ食べつつビールをグビリ。ハーブの香りが爽やかで、修道院で作られたこれはお薬みたいなものさ…、ってうそぶきながらゴクリでプハーッ。
ビールのお供はやっぱり枝豆。固めに湯がかれ塩がバシッときいた仕上がり。プチュンと指で豆を弾いて口に含んで指なめる。
それからピザを焼いてもらった。チーズたっぷりピザってメニューにかかれてて、見るとたしかにチーズたっぷり。生地そのものはおそらく凍った出来合いなんだろうけど、クラスとの中がチーズでみたされるほどたっぷりほどこししかもこんがり焦げて仕上がる。風味豊かでビールもおいしく味わえる。気に入りました、こういう夜もいいものです。
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こちらの鮨屋さんは仕事で遅くなったときにたまにふらっと寄っていました。リーズナブルで美味しいお寿司が頂けて重宝してましたが、お昼やテイクアウトを始めたんですね、知りませんでした。今度テイクアウトしてみます。
・・・ちょっと迷ったのですが、書きます。もし、以下の内容が不都合を思われたら消して下さい。
私は中医学に多少心得があるので、このところの騒動についてあまりに「病気を見て、人を見ない」西洋医学の悪い面が出てきている節に疑問視せざるをえない部分がいくつかあり、そのうちの一つが飲食店に関する自粛です。
詳細はこのご時世、下手すると荒れる可能性があるので書きませんが、「店員・客問わず、至近距離の会話を伴わない飲食」に関しては、自粛する必要はないというのが私の考えで、支援する意味も込めて、できるだけお店で食べるようにしています。もちろん一人で。
重要なのは、黙って食べる、マスクせずに至近距離で喋るのがよくない、ということですから。人といると、どうしても人は喋りたくなる生き物ですからね・・・コロナはすごいです、人間の弱さを見事に突いた戦略。これが自然、地球の意思かと改めて畏怖します。
それにしても皮肉なのが、これまで富裕層やインバウンドやフーディばかりを相手にしてきたお店がどこも一気に苦しくなっていることです。逆に、市井の胃袋に日々の糧を提供し続けてきたお店は、今でもそこそこお客がいることが多い。お金や虚栄心で勝ち取るのか、信頼で勝ち取るのか。古今東西、世の常とはいえ、やはりこれが真実なのでしょう。
kokuさん
このご時世においての飲食店の立ち位置。おっしゃるとおりとボクも思います。
世の中の人たちは飲食店で働く人をなにやら危険な人のように見がちですけれど、飲食店の衛生基準の高さは一般家庭のそれに比べれば圧倒的な水準。むしろ飲食店の人たちが、お客様がなにか危険なものを持ち込みやしないかしらとビクビクしていると捉えるほうが正しいのだろうと思うのです。食中毒の問題も、そのほとんどは飲食店に落ち度がないもの。にもかかわらず責任を取らされるのは飲食店。
ボクもできる限り飲食店で食事をしたいと思います。
外食バブルに浮かれて調子にのっちゃった飲食店が苦労する今。それはしょうがないことでしょうし、この騒動をきっかけにして、本当の実力のあるお店がたくましく生き延びる、ステキな未来をイメージしながらがんばろうと思います。
あら♪
ご紹介くださったこのお寿司
食べたことあります。
お写真見てると
おいしい記憶が蘇ります。
こういうことが
やたらに嬉しいこの頃です。
今はただただ
お店に伺い
安心して食べられるお席があれば
頂く日々です。
コッソリ作戦
けっこう楽しいです。
けいたろうさん
お寿司屋さんのカウンターって、すごく安心できる場所だなぁ…、と思いました。
だって作りたてを味わうことができ、調理人の仕事には嘘もごまかしもない。向かい合って食事することがないから、食べ手同士の感染のリスクも少ない。だからもっと贔屓しなくちゃって思いますネ。
こっそり作戦…、応援します。
素敵なお寿司の数々で惚れ惚れします。
サカキさんの「貝をあるだけ下さい」、楽しい趣向ですね。一度真似してみたいです。
このご時世では荒木町の方まで足を向ける機会が作れるか分かりませんが、世間が落ち着いた折には
是非ともお邪魔させて頂きたいです。
タカハシケムヂさん
お寿司屋さんのネタの状態や仕入れに対する意気込みを試すのにいい呪文じゃないかと思って使っています。
発端は貝が好きでしょうがない…、という好みの問題だったのですけれど、いいお寿司屋さんを見つけるいい方法のように思って。
この時期、四谷三丁目という街に住んでいることに感謝すること甚だしく、こうして一生懸命がんばってくれている飲食店の方々に頭がさがる思いです。