色黒系のとんかつ、焦げたパン粉が香ばしい

赤坂で朝の打ち合わせ。そして昼をとんかつ。「末吉」に来る。
オフィスビルの一階。ちょっと奥まったところに入り口があって、窓が大きく明るいお店。
カウンターが奥に向かって一本あって中がキッチン。キッチンの反対側にはテーブル席が並んで奥にも大きなホール。カウンターに一席もらう。時節柄でしょうか…、お店は静か。ただお弁当のテイクアウトが案外人気のようで、ひっきりなしにお客様がやってきて予め注文してあった料理を持って帰ってく。
ちなみにこの店。明日11日からしばらく休業。本当はもっと早く対応したかったけど、やっと準備が整ってという。
飲食業は古い蒸気機関車のような産業です。動き始めるに時間と準備を要し、動きはじめると止まろうにもすぐにとまることがむつかしい。
同時に飲食店は「し続ける」ことでお客様の信頼をえ、おなじみさんを手にすることができる商売。その飲食店がお客様に信用してもらうために営業を休止するという。なんと厳しく哀しいこと。

店単位で考えても大変なことが、今、産業全体がゆっくり止まろうとしているのです。再び動きはじめるときにどれほどのエネルギーを必要とするんだろうかと今から心配してしまう。とは言え、今心配してもしかたがないから、今日はおいしいモノを食べます。
サイド商品としてカニサラダがある。上野の井泉、あるいはそこから分かれたまい泉にもある、おそらく上野井泉の流れをくんだ店なんでしょう。
たのんでみると、まさに井泉のカニサラダ。薄切りにしたきゅうりにカニのほぐし身とマヨネーズを丁寧に塗り込めるようにして仕上げたサラダでなんとも贅沢。のんびりできるなら、これにビールでメインが仕上がるのを待つのもいいな…、と思って味わう。

カニサラダを食べ終わったタイミングにて今日のメイン。
特上ロース定食がくる。
衣がガリッと揚がった色黒系です。
最近は低温でじっくりと温め仕上げる色白系のとんかつが人気で、あたかもそちらの方が上等なとんかつのように言われがちだけれどそのどちらもが異なる魅力をもった別のとんかつ。
あちらが上でこちらが下というようなことはないのですネ。
ただ、肉そのものの風味や持ち味をたのしみたければ色白とんかつが適してて、この色黒系は揚がったパン粉の香ばしさや、口の中で散らかったパン粉が肉の食感をたのしむのによい。
ラードで揚がったパン粉は甘く、肉の脂は徹底的に削ぎ落とされて繊維もすっかり抜かれていくるから食感ふっかり。やわらかにしてさっぱりとした繊細な味。この繊細は肉の持ち味あればこそ、どっしりとした焦げたパン粉をおいしく感じる。

ラードで揚げているのに重たくないのです。だからザクザク味わえる。
下味がしっかりついているのでソースをかけずともそのままでおいしい。ソースはどんな味なんだろうとキャベツにかけて食べると風味豊かではあるけれどちょっと甘い。だからソースはキャベツ専用。とんかつには醤油をかけて食べてみるとパン粉衣の油気がすっかりきえてこれがおいしい。芥子をたっぷりつけると甘みがひきたち油の風味が膨らむ。
上新香がついてきます。ギュッと絞った白菜にきゅうりに大根、ニンジン、柴漬け、タクワンと盛りだくさんでそれぞれおいしい。大根が透き通るほどに煮込まれ味噌が染み込んだ汁も上等。お腹が満ちる。いい店でした。オキニイリ。

 

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コメント

  1. miatamore

    とんかつはこんがりきつね色に揚がっている方が絶対に美味しいと信じ、最近流行りという色白とんかつには食わず嫌いなのですが、色白とんかつにも良さがあるというくだりにハッとしました。歳をとると思い込みがますます激しくなって、自分で世界を狭くしてしまいますね。
    海の向こうの家に帰ろうにも飛行機が飛んでいなくて帰れないこの時間は、いろいろなことをゆっくり考える時間だと思うようにしました。周囲には飲食関係の友人知人が多く、確かに、一度止まったら再び始まる時にどれだけのエネルギーを必要とするのかを思うと、かける言葉も見つかりません。このぽっかり空いた時間で何かできることはないかを考えているのですが...難しいです。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      miatamoreさん
      多様性の時代…、と言われます。
      さまざまな世界にさまざまな多様性があり、けれど食の世界ほど多様性に満ちた世界は他にないのじゃないかと思います。だからたのしい。だからオモシロイ。
      歳を重ねると自分が好きなモノばかり食べてしまいがちになりますけれど、ときに自分の世界を広げてみるのもステキじゃないかと最近、しみじみ思います。
      飲食店を応援したくてしかたないと思いながらも、お店に行ってたのしむといういつもならば最高の応援の仕方がもしかしたら迷惑になるのかもしれないと思うと、本当になやましく感じます。
      早く笑顔でオキニイリの店を応援できる日がまいりますよう。

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