素手は不潔でゴム手袋は清潔なのか…?

昼にISETAN。キッチンステージにやってくる。
人気のシェフのレシピで料理が作られる。しかも定期的にプロデュースするシェフが変わるというたのしいお店。
ところがシェフのレシピの料理の他に、キッチンステージのオリジナルレシピでハンバーグだとか煮込み料理が定番として提供されるようになってた。お店としての売り上げを上げたい気持ちがそうさせたのか。それともここで働くスタッフのプライドのようなものがそうさせたのか。
どちらにしてもこの場所の立ち位置を変える大きな事件。この場所が「お客様とシェフのレシピが出会うワークショップ」のようであるか、それとも「シェフのレシピ《も》たのしめるレストラン」であるかによって人の味方は変わってくるもの。ワークショップだったから許されることが、レストランでは許されない…、そんなことがたくさんあるのにって思って今日は食事をはじめる。

今日のレシピは「青山希須林」。かつて阿佐ヶ谷にあった軽やかで創意工夫が溢れた中国料理を食べさせる小さな名店。今ではすっかり青山ブランド…、つまりお洒落な女性が集まるお店になっている。
コース仕立ての料理の前菜。魚のサラダがやってくる。
カンパチを薄造りにしてサラダと一緒に味わう趣向。粗く砕いたカシューナッツやサクサクにあげた春巻きの皮。葉っぱ野菜を薬味のように使って味や食感変えて楽しむ料理。なかなか旨い。こういう料理をみると思い出すのが神戸に本店のある「海皇(ハイファン)」という店がおそらく、日本で初めて大々的に売り出した鯛の刺身のサラダのコト。

鯛を一匹薄造りして砕いたナッツ、千切りにした野菜と一緒に大皿にキレイに盛る。
それを目の前で調味料をかけまわしながら豪快に混ぜ味わうという臨場感に溢れる料理で、そもそも生モノを扱わないのが中国料理の鉄則と言われた時代に新鮮だった。
何しろイタリア料理のカルパッチョですら今のように有名ではない時代のことで、長らく海皇の名物料理のひとつと言われた。
なつかしい。

メインは3種類の料理の中からひとつ選ぶ。
黒酢の酢鶏かサンラータン麺、あるいは希須林飯と呼ばれる丼。そういえばお店の中には黒酢のにおいが渦巻いていた。ちょっと悩んで希須林飯。
ちょっと深めのお皿にどっさり、肉野菜炒めが入っているような姿になんだか食欲が湧く。肉は豚バラ。野菜はネギに青梗菜。キクラゲたっぷり、卵でフワッとやさしく閉じた炒め物。あんかけご飯のように見え、とろみ弱めでどちらかといえば具材たっぷりのスープかけご飯のような感じでやさしい。
食べはじめにはご飯はホツホツ食感があり、それが徐々にスープと一緒になってリゾットみたいな感じになっていくのがたのしい料理。

やわらかめに炒めてとろける青梗菜や、厚めの豚肉の噛みごたえ。少なめご飯の量が絶妙でご飯の料理というよりも、ご飯も具材になった野菜の炒め物…、って感じがするのもおもしろい。
サイドについてくる餃子も絶品。茹でてゴマだれかけて仕上げたなめらか餃子で、中には肉がぎっしりつまる。ご飯のおかずというよりも、これはこれで完成している料理な感じ。塩をキチンと抜いたザーサイもおいしゅうござった。
〆に寒天。ゼラチンにはないすべすべとした涼しい食感。最近は、むっちり、ねっとり肉感的なゼリーばかりが目立つけど、寒天の楚々とした凛々しい感じもまたオゴチソウ。海の香りもおいしくてそこにかかったお茶の風味の蜜もあまやか。さすが料理は感心します。

ただ、今日すごく気になったコト。
冒頭でいったココがポップアップだと思えば我慢できたかもしれない、でもレストランとして失格と思ったことがゴム手袋。
前菜のサラダを盛り付ける役目のシェフがブルーの手袋をずっとしている。
サラダをボウルの中で山状に整えて、箸に片手を添えてお皿に盛り付ける。それが素手だと不潔だろうと、ゴム手袋をしているんだと思うのだけど、その手袋で皿を持つ。調味料を入れた容器も無造作に持つ。あまつさえできた料理をゴム手袋をした手でもって運んでお客様に持っていく。
ついでにテーブルの上に手を置きます。
そこまで気づけばもう気になってしょうがなく、じっと見てたら顔を触るし髪の毛整えたりするのです。
結局40分ほどの間、一度も手袋を交換せず、その手袋でサラダを直に触って盛った。
彼だけじゃない。最近、飲食店の現場でよく見る「ゴム手袋さえしてれば清潔」という浅はかさ。素手は汚く、ゴム手袋をしてれば清潔と感じる食べ手の感度の低さ。
彼のゴム手袋をしてれば平気という堂々とした態度に、もしかしたら彼の肌は過敏でそれを保護するためにゴム手袋をしているのか…、と思ってしまう。でもそうだったらば、ゴム手袋を交換するか変えなきゃいけない。素手なら汚れたことに気づけて洗えるけれど、ゴム手袋は手の感覚を鈍くする。調理師学校からおそらく派遣されてる人たち。そこまで学校じゃ教えないのか…、って思ったりした。コトが起こったら迷惑するのはISETANなのに…、なやましいなと思う昼。

 

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コメント

  1. すうさん

    私もそう思います。
    手袋のまま客前に出るってズレてますね。
    せめてお会計をしないことを祈ります( ˘ω˘ )

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      すうさんさん
      こういう手袋は使うとしてもお客様の目の触れないところに限ってもらいたいモノですよね。お客様から自分がどのように見られているか…、それを感じることができないことが、なんともかなしい。

  2. Kei

    手袋の件、全く同感です。時折見かけますが、清潔にしていると言うパフォーマンスにしか思えません。そもそも怪我をしていたり生肉を触るのでなければ、すぐに食べるものを素手で触ったくらいで問題ないはずです。清潔にしているようにお客にアピールする工夫をするのは大事かもしれませんが、見え透いたパフォーマンスは逆効果でがっかりしますね。個人的には手袋で握る回転寿しよりも、綺麗な手で握る大将のお寿司の方が違和感なく食べられます。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      keiさん
      飲食店の調理衛生に関する勉強会で、一番問題になるのがこの手袋の問題です。
      手袋をしていれば清潔という思い込みが、食中毒を引き起こす大きな原因にもなるのですネ。
      手は汚れを感じる。
      けれど手に手袋をかぶせてしまうと汚れを感じない。感じないということがどれほど危険か。今日はみていてハラハラしました。
      ボクも人間の手が直に触れることで仕上がる料理が大好きです。

  3. M

    このゴム手袋、色も美的に美しくないですし、ゴムの匂いが移ってそうとか、表面の細かい粉が入りそう、とか色々考えてゲンナリ…見ながら待ってる間に食欲減退しちゃいますよね。

    念入りな手洗いとアルコール消毒をしっかりしてくれていたら良いと思います(逆にそちらを疎かにしている人が多そう)。

    あと、テレビの料理番組で著名な料理人の方でも、鼻など無意識に何度も触る人が多いの、私も気になっちゃいます。
    自分は、それが気になるくらい自分自身が嫌なので、絶対触らないようにしているので…。

    味見で同じ指やスプーンとか…料理人の人は平気でやってる人結構多いですが…素手よりそういう事の方が嫌ですね…。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      Mさん
      手を洗う。爪の中まで丁寧に洗うことから調理ははじまる。
      それを手袋をパックから取り出すことに変えてしまうと、もう料理そのものの有り様がすっかり変わってしまうように感じますよね。かつてボクの知り合いが鼻をくすぐるクセがあり、寿司屋を目指すときに一番最初に指摘されたのが、そのクセを直さないとカウンターの中には立てないね…、と言われたんだということを思い出しました。
      こういうコトって習慣。当然になるまで意識しなくてはならないのだろうと再認識いたしました。

  4. あーた

    これは…他のスタッフはなんとも思わないんですかねぇ。
    髪の毛を触るなんて、なぜ帽子をかぶるのか考えればしないのではないでしょうか。
    青い色がまた違う場所を思い起こさせます。

    あと、テレビの料理番組で、お肉等を触った手を布巾で拭くだけで次の作業にかかること。
    しょっちゅう見るので、大丈夫なのでしょうが、気になって仕方ないです。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      あーたさん
      よほど注意しようかと思ったのですが、周りの人たちが完全に受け入れているのをみて、いってもしょうがないんだなぁ…、って思いました。
      うちでは、肉用、魚用、野菜用、乾物用でまな板を使い分けています。手洗い用の石鹸や、消毒用のジェルも常備しないと不安でしょうがない。
      食べることが仕事の一部の生活ですから、お腹をこわしちゃ仕事もできない。だから基本的なことには気を使います。

  5. まぁ助

    以前、ケーキ工場でバイトを始めた時に、手洗い・消毒はもちろんですが、この手袋の交換の徹底を教えられました。ラインの準備段階でカートやボックスに触ると、手袋を替えてからじゃないとラインに立てない。ライン作業中もうっかりライン以外の物に触ると、ラインを止めてまで交換させられました。お客様の口に入るものなのよ!と、リーダーに教え込まれてたので、交換しないのはちょっとびっくりしました‥

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      まぁ助さん
      食品を製造するということはそれほど厳しいことなんですね。それに比べて「料理の調理」をする人たちの意識はまだまだ低かったりする。
      とは言え、手袋の交換くらいはちょっと考えればわかることと思いますよね。本当に残念な経験でした。

  6. セツモ

    私も全く同じことを疑問に思っていました。それから、居酒屋などで膝をつける接客。誰がはじめたのか、こうしてれば安心という、実に日本人的なオペレーションではあるかもしれませんが、決してもてなしではないですよね。なんだか、味よりも気になってきてしまって、もったいないなぁと思ってしまいます。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      セツモさん
      膝をつく接客…、ボクも苦手です。
      お客様とお店の人はあくまで対等に。たまたま役割が違うだけなのに、なぜあそこまで傅かなくてはならないんだろうって、気持ちが寂しくなっちゃいます。
      形ばかり気にするのでなく、本質をしっかりみつめて判断したいですよね。

  7. 食いしん坊

    こんばんは、私も手袋には違和感があります。手入れをされた手で作ってくれた方が美味しいと思います。それとは対極なのですが、おむすびは素手でむすんだのを母以外の人のはやはり食べることができません、苦笑。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      食いしん坊さん
      アメリカで寿司が今のように一般的な食品として受け入れられる随分前のコト。寿司バーと呼ばれる面妖な場所で、ゴム手分栗をして寿司を握る様子をみて、あぁ、国際化とはこういうことか…とビックリしたことを思い出しました。
      想像力を働かせる方向を誤ってしまうと、すべてのモノが食べられなくなりそうで、ときに想像力の翼を畳んで食事をすること…、ボクにもあります。随分、大人になれました。

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