秋の入口、雅味近どう

夜は岐阜でひさしぶりの「雅味近どう」。
とても丁寧な仕事と確実な技術、そして洒脱な創意工夫がうれしい日本料理のお店で、季節季節に来たくなる。さて、どんな秋が待っているんだろう…、とワクワクしながらやってきた。
まず一品目。虫かごの中に前菜。
パッと開くと、炊いたスズキの肝を収めた小さな器の周りにズラリ、色とりどりの料理が並ぶ。
穴子の寿司のおしのぎにだし巻き卵。菜っ葉のおひたし、卵豆腐にほおずきの実。どのお料理もしみじみとした味わいで、あぁ、秋がやってきたんだとしみじみ思う。
いつもはこれにお椀が続く。
霧吹きで小さな水滴をつけたお椀にすがすがしさを感じるのだけど、今日は代わりに土瓶蒸し。これまた秋のもてなしです。
土瓶の蓋の上にすだちがひと切れ飾られ、その蓋をとり内蓋あけると中にはぎっしり松茸、三つ葉。出汁の香りに混じって松茸の秋の香りがやってくる。中にはエビの真丈が浮かんでそれが風味を添える。
一口、そしてまた一口と汁を口に運んでいくにつれてお腹があったまり、食べる準備も出来上がる。

続いてお造り。脂ののった白身の魚にマグロに甘海老。白身がゴリゴリ、歯ごたえがありしかも脂がジュワリと口に広がっていく。海が冷たくなりはじめているからなんでしょう…、夏の魚と違った味わい。マグロはひんやり、酸味がおいしく海の力をじんわり感じる。
蓋付きの陶器の器。ここの名物の「あんかけ饅頭」だなぁと思う。
しかも今日は栗饅頭。蒸した栗を裏ごしし中にカニのほぐし身を入れて丸く丸めて蒸し上げる。たっぷり銀あんをかけまわしてハフっと食べると秋の味。栗のやさしい甘みに混じってカニの風味が口に広がる。トゥルンとなめらかで旨味たっぷりのあんもおいしく温まる。

秋鮭を吹き寄せ風にあしらった焼き物到着。
皮までバリッと焼けて、魚の皮が苦手なボクでもサクサクおいしく味わえる鮭。
しかもその鮭のイクラを醤油漬けにしたのが一緒についてやってくる。
小さい粒で、コリッと歯切れてプチュッと潰れる。
トロンと粘る汁がでてきて、あぁ、命を食べているんだなぁ…、ってしみじみ思う。
軽く煮付けたさつまいもの甘みがやさしく、感心したのが添えられていたすだちの種がみんなキレイにとられていたこと。
仕事が好きな人の仕事にウットリします。揚げたタチウオに出汁をかけた今日のメイン。これも脂がのっていて一緒に煮付けた丸茄子やししとうの食感、風味をたのしみ食べる。話もはずむおゴチソウ。

そろそろお食事。海苔のあんかけご飯を選ぶ。もち米を混ぜてやわらかく炊いたご飯の上にたっぷり青のりを混ぜたあんがかかって香りがおいしい。わさびも一緒にしっかり混ぜて食べると塩の塩梅がよい。お腹にやさしくしかも体があったまる。自家製の漬物はさっぱりとした軽い味わい。シャキシャキとした歯ざわりがぽってりご飯をひきたてる。
ぶどうとモモのコンポートを今日のお腹のふたしておしまい。秋もまだまだ入り口で、秋から冬の季節の移ろいを味わいたいな…、と思って席をあとにする。

 

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コメント

  1. ボルテイモアのおかず

    待ってました、雅味近どうさん、久しぶりですね!虫篭の前菜も一年ぶりですね。
    今回食べてみたいのは、栗のあんかけ饅頭で、お造りの器が初めて見るような。縁高の器にお刺身を盛るのは、珍しい感じがします。これも秋らしいですね。
    ほおずきは子供の頃、くちゅくちゅ吸って中身を取り出し、皮を口に含んで鳴らして遊びました。サカキさんもなさった事がおありですか?なつかしいなあ、思い出させて頂き、ありがとうございます。

    • サカキシンイチロウ

      ボルティモアのおかずさん
      ほおずきの皮をならすとき、唇がブルブルふるえる感触が大好きで、それがリード楽器をはじめるきっかけだったのかもしれません。
      近どうさんの料理に接すると、季節をしみじみ感じさせていただけます。あぁ、日本ってすばらしい国だなぁと背筋をのばしておいしい料理を堪能させていただきました。

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