森美術館・STARS展

森美術館に行ってきた。
今、日本の現代美術の世界を代表するアーティスト6人の作品を集めた「STARS展」というのが開催されていて、その1人。
奈良美智さんの作品が大好きなもので、それを目当てにやってきてみた。
小さな作品からインスタレーションのような作品まで70を超える作品の中でも圧倒的だったのが「Miss Moonlight」っていう2メートルを超えるアクリル画。
前に置かれたベンチに座って見入りました。

いくつなんだろう。
名はない。
誰でもない彼女はなんでこんなに不機嫌そうなんだろう。
彼女のことを誰もしらないから不機嫌なのか。
それともそれがさみしく、哀しんでいるんだろうか。どうなんだろう…。
もしかしたらボクの今のさみしい気持ちが彼女の表情をかなしく感じてしまっているのか。
人は自分をわかってもらおうと一生懸命、外に対して発信したり表現したりする生き物で、なのにそれを受け取ってくれる人が見つからなかったり受け取り損なわれ続けたりする。それがどれほど寂しくて、いっそのこと芽を瞑って外と自分を切り離してしまいたくなるほどに辛いことなのか。…、とそういうことを感じたりした。それでしばらくじっと見入った次第なり。

その作品が置かれた部屋。その空間すべてが実はひとつの作品を作り出していて、空間の真ん中に小さな小屋が作られている。
「Voyage of the Moon」という作品。今にも飛び立ちそうな造形。今回の展示物の中でも目玉のひとつと知っていても、これほどに大きく、しかもしっかりとした家の形をしていることにあらためてびっくりしちゃう。
しかも小屋の中には奈良美智さんらしい人形や小物が飾り付けられ、その小屋が飛んで向かっていこうとしている先に顔が描かれた月のような作品1点。「Lonely Moon」という作品で、宇宙を感じる。オキニイリ。

草間彌生。
李禹煥。
宮島達男。
村上隆。
奈良美智そして杉本博司がこの美術展の6アーティスト。
旧作もあり新作もあり、奈良美智さんもすごかったけど村上隆の作品群の力強くて、わかりやすくも奥深い、見れば見るほど惹かれる世界に感心しました。

商業主義の権化のように感じる彼の作品も、まず有名になって自分が言いたいことを多くの人に聞いてくれる状態を作り出さなきゃなにも出来ないと、その確信のもとに創作をしているんだと思うと見事。仁王立ちになる阿吽の二体の不思議なエロスを感じさせる肉感的なその造形の中に東北大震災への鎮魂と、復活のためのエネルギーをこめられている。なかなかだなぁ…、と思いいる。

最近、美術展や展覧会で音声ガイドが用意されていると借りることにしているのですネ。
ガイドブックや作品の横に書かれた小さな文字を読むのが面倒くさくてそれで音声ガイドを借りるのだけど、出来不出来があまりに激しい。
有名人を連れてきて、図録の一節を読ませただけでお茶を濁した内容だけの展覧会はサービス精神にかけるイベント。
今回の音声ガイドは聞かせどころが豊富で多彩。なにより実際のアーティストへのインタビューを上手に編集しているのがいい。
それにしても現代アートはコンセプトありきのアート。そしてそのコンセプトを誰もが考えつかない一言で置き換えることができた人がアートの世界の勝者になれる。いろいろ勉強いたします。

コメント

  1. ガブリエル

    毎日暑いですね。
    STARS展、もう少し涼しくなったら友人と行こうと思っていたところです。
    先日サントリー美術館に行きまして、そちらも昔の螺鈿蒔絵の調度品屏風武具甲冑等などと、現代美術とがコラボしてました。
    現代アートって何かからのパロディやデホォルメだ!と、対比してあることですごく鮮明に見えて、興味深かったです。
    音声ガイドは、スマホで聴けるようにならないかなぁとおもってるんですけど、どうでしょう。
    チケットもオンライン購入になって、スマホ見せて入場するのになぁ。
    あの機械を借りるのも煩わしく、数に限りはあるし、まして余計な接触は避けたいし。
    機械代がないとして、データだけで200円くらいでダウンロードできると、現地で聴かなくても予習できたり、復習できたりできるのになと。

    一見関係ないようで、ビジネスのヒントが転がってそうですね。

    • サカキシンイチロウ

      ガブリエルさん
      STARS展ではスマフォを音声ガイド代わりにすることができるようでした。ただその登録の仕方が洗練されていなくて、ボクの前の人が相当苦労していたので従来型の専用端末を借りました。
      チケットもスマフォに登録する時代。
      まだまだ応用できるところは沢山あるのだろうなぁ…、と思いました。

  2. よおぜふ

    奈良美智さん、今まであまりピンと来なかったんですが、サカキさんのお話で、なるほど〜そういう見方もあったんだーと感心しました。
    自分の感性で自信のない分野、馴染みの薄い分野は、やはり解説が要りますね。
    私のアンテナには、草間彌生さんの激しさがビビッときます。

    • サカキシンイチロウ

      よおぜふさん
      草間彌生さんの作品は、ニューヨークという街で彼女は何を感じ何をし、何かが壊れてそして生まれたんだろうな…、とそういうことがバンバンからの中に入ってきてしまって、気持ち穏やかでなくなっちゃうんです。それもまたアートの一部なんだろうなぁ…、とは思いますが。

  3. EIKO ISHIKAWA

    お隣の森アーツでやっていた「おいしい浮世絵展」に先日行っていました。こちらはご覧にならなかったでしょうか~食文化の歴史が興味深い展示でした。
    「音声ガイド、出来不出来の差が激しい」に全く持って同感です!浮世絵展の方は人気声優さんで、なんで…と思いましたが(浮世絵なんだからお得意の歌舞伎役者キャスティングでもよかったものを)内容もキャプションまとめで微妙でした。

    • サカキシンイチロウ

      EIKO ISHIKAWAさん
      浮世絵はタナカくんが晩年、よく書いていたので心穏やかに見れないかなぁ…、と思って見ずにすませました。今年は浮世絵関係の映画までつくられて、ちょっとしたブームなんですよね。

  4. 志乃

    東京芸大美術館で「あるがままのアート」展を見た帰りに、「遠山」さんで久しぶりにランチを頂きました。
    コンソメロワイヤル、変わらず美味しかったです。
    遠山さんも眼鏡のボーイさんもお元気そうで、忙しく働いていらっしゃいました。

    • サカキシンイチロウ

      志乃さん
      もうすこし涼しくなったら上野の森にでかけることにします。上野はおいしい洋食屋さんがたくさんあって、どこにするか悩んじゃいますネ。

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