最後の晩餐候補を食べる…

明日は三度目の月命日。
もし彼が自分が逝ってしまうことを知っていて、最後の晩餐をとったとしたら3ヶ月前の今日のコト。
それで今日は、彼がかねがね最後の晩餐に食べたいと言っていたものを偲んで食べる。
場所は銀座アスターの新宿賓館。新宿伊勢丹の向かい側のビルの中。かつて地下に映画館の入ったビルの地上部分を全部使って営業してた。盆暮れの会社の打ち上げに決まって使っていた店だったのだけど、元気が過ぎた若い人たちが暴れて店の一部を壊し、出禁になった店でもあった。それでちょっとなつかしい。
ビルが建て変わって立派になって、のびのびとした上等な店に様変わり。大きな窓から伊勢丹を見下ろす景色もまた、おゴチソウ。その窓際のテーブルもらってまず中国茶。プーアル茶をポットでもらって昼のお腹をじんわり動かす。

今日のメインは時間のかかる料理です。だからじっくり、時間をかけて待つための前菜たのむ。
皮付きの豚肉を窯焼きにした香港式の焼き物料理。
広東料理は時間を食べる料理じゃないか…、と時折思う。フカヒレ、アワビ、ナマコ、それからツバメの巣と贅沢な料理はどれも乾燥したものを時間をかけて戻してキレイに掃除して、再び時間をかけて仕上げる。この焼き物も時間をかけて仕込まれたもの。売れ残ることにビクビクしてては作ることすらできない料理。ありがたい。
豚バラ肉を皮がついたまま焼いてくと皮がザクザク、自分の脂で揚がったように仕上がっていく。好きだったなぁ…、豚肉の皮が壊れて口にちらかり肉がむっちり歯切れてとろけるこの感じ。プラムの酸味と甘みを活かしたソースをまとわせ思う存分、脂を味わう。

そしてまもなくメインの到着。
フカヒレの姿煮一枚。
土鍋におさまりグツグツしながらやってくる。

なにかおいしいものに出会うと、必ず二人で「これが最後の晩餐にふさわしいかどうか」を話す。
世の中にはおいしいものが沢山あって、最後の晩餐にふさわしい食べ物を全部食べてたら何週間も死ねないネ…、なんてよく笑ってた。
でも「その中でひとつだけを選ぶとしたら何にする?」って質問には、ふたり揃って「フカヒレの土鍋煮込み」で答えは一致。
しかも新宿の維新號のが一番だよネ…、って言ってたその店は閉店し、それで代わりにこの店にした。維新號のそれに比べて少々上品。ヒレの繊維も若干ひ弱で女性的。一緒に食べてたザクザク歯切れるヒレの繊維にコッテリとしたソースの味わいは格別だった。

金華ハムをちらしたフカヒレ。上湯スープの上等な味。これはこれで十分おいしく、ふたりで食べたらもっとおいしく感じたでしょう。
ご飯をもらって一緒に食べると、ご飯の粒のひとつひとつが口の中でカラコロ転がるような食感。ゼラチン質をたっぷり含んだスベスベスープのスベスベが一層際立つ。おゴチソウ。
4月23日に天命をむかえるように神様が決めたとしたらしょうがない。しょうがないけど、その前日がわかっていれば一緒にフカヒレを食べられたのに。筑紫樓でも福臨門でも、紀尾井町の維新号でも好きなところに何軒でもつきあったのに。なんて悔しく哀しい現実。
ソースを一滴残らずご飯の茶碗に移してサラサラ食べる。彼の仇を討ってやる!

 

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コメント

  1. ワイメア

    ずうとずううとコメントでお悔やみを言えなかった…です。
    突然隣で同じ景色を眺めていた人を失った悲しみ。
    へたくそな感情を表現できない、伝えられないでいました。

    でも今日は…。
    最後の晩餐はサカキさんが作ったもの。
    それに勝るものはないのではと思います。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      ワイメアさん
      そうですよね。だから昨日の夜は彼の好きだったものを作りました。今朝は好きだったサンドイッチ。
      そう言えば彼が亡くなる前の日に、おうどんを作ってくれたんです。ボクの体の具合が芳しくなく夜食に食べて、おやすみなさいってベッドに入った。それが最後の思い出でした。

  2. ナリヒト

    フカヒレと言う食感と半透明で美しい美的な塊のことを、ハタチになるまでしりませんでした。高級であることを全然知らなくて 1口で食べてご飯を残したことを覚えています。楽しい食感食べたことのないのどごし、舌根部に数条の甘みを残して絡んで胃袋に落ちる。声がよくなったような気になって、帰りの電車の中でこっそりりんご追分を歌うと、おごってくれた外人にわらわれました

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      ナリヒトさん
      たしかにゼラチン質で喉がうるおいますよね。

      • よおぜふ

        サカキさん、毎食のセレクト、捉え方を疎かにせず、大事に愛しんで食事に向かい合われてましたもの(例え、あれ?と思う飲食店でも、良いところを必ず探して)。
        そういうお姿、ブログでずっと拝見してきました。
        最後が順番的に何であっても、そんな積み重ね程、贅沢なここちよいものは他にありません。
        、、、彼氏さん、幸せでいっぱいだったと思います。

        • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

          よおぜふさん
          一緒に食べている人。あるいはそのお店で食事をしている人たちに対しても、文句いうだけでは失礼ですものね。
          それにしても、何を食べるということよりも誰と食べるということがおいしく食べるためには大切なことなんだなぁ…、としみじみ思う毎日です。

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