旬と手業を堪能した夜、雅味近どう

今日は岐阜。ひさしぶりに「雅味近どう」。
いつもの座敷に案内されて、おしぼりで手を拭いながら、あぁ、戻ってきたなぁ…、ってしみじみします。
オキニイリの店。
それにしても明るくなった。いつもと同じ時間の電車でやってきて、空がまだまだ明るいことに季節を感じる。
今日はこちらをご用意しましたと小さな水槽が運ばれてきて、鮎が泳いでいるのに再び季節を感じる。
見ると同時に「あぁ、おいしそう」と思ってしまう。なんと殺生なことでありましょう。そんな気持ちが伝わったのか、鮎がバシャッと暴れて跳ねた。せめておいしく食べてあげようと思うことにする。
そして前菜。青菜にホタルイカのぬた、そら豆の豆腐に小さなトマトのおひたし。鯛の肝の煮付けに鯛味噌、すっぽんの汁で炊いたおからにだし巻き。小さなそら豆。笹の葉の中には鯛の握りが入っておりました。昆布で〆た鯛がおいしくシャリの酸味でお腹が開く。

今日のお椀はカニの豆腐にじゅんさい。旬であります…、表面ぷるんとなめらかで、噛めばシャキッと歯ざわりがよい。上等な出汁、豆腐はふっくら、分厚いしいたけに出汁がしっかりしみておいしい。
刺し身が続く。鯛にイカ、エビが並んで大葉の後ろにマグロの切り身。一番、色が映えるマグロを隠すところが日本の料理のうつくしいとこ。大葉をめくるとハッとするほどの深い赤。ねっとりとして酸味が後味ひきしめるマグロらしさにウットリします。甘くてとろけるイカも上等。
ここの料理でたのしみのひとつがあんかけ饅頭。芯に蟹肉。饅頭の素材が季節で変わる趣向で、今日はごぼうの饅頭だった。ポッテリとした餡。力強いごぼうの香りに生姜の風味が彩り添える。お腹がフッとあったまる。

お待たせしましたと鮎が来る。
筒の中には炭が入って、煙と炭の香りが漂う。
ついさっきまでこの鮎が炙られていた炭の香りが食欲さそう。
串にさされた鮎はひとり二尾。
串をとりあげ、お皿に移すと鮎がお皿の上を泳ぐ。
じっくり時間をかけて焼かれた鮎は頭も骨もしっかり熱が入って食べられる。
頭はパリッ。
骨がコリコリ、砕けてちらかり身はしっとり、ふっくら。
鮎独特の緑の香りに炭の香りが混じってなんとも香ばしく、「香魚」と書きもする所以がわかる。おゴチソウ。
酸味がくっきりしたもずく酢に甘く煮付けたさつまいも、軸からそいだとうもろこしが甘くてこれまた季節を感じる。

そろそろ料理も終わりの手前。ホタテのステーキがやってくる。
ここでステーキ仕立ての料理ははじめて。出汁をかけながら焼き上げたのでしょう…、表面こんがり焦げ目がついてホタテの風味が凝縮された力強い味。タケノコやエビにもホタテの風味がついて、どこを食べてもホタテ味というのがたのしい。
そして〆。青海苔茶漬けを選んで食べた。
出汁がおいしいとお茶漬けですらごちそうになる。おろしたばかりのワサビの香りがまた鮮やかで、漬物、昆布の佃煮までもがとても上等。
食後の甘味はよもぎ餅にいちごのアイスクリーム。どちらも自家製。手を動かすのが好きな人の料理はたのしい。そしてなによりおいしくて、今日も堪能。ありがたい。

 

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