店の魅力と街の魅力。肉洋食か肉和食。

新宿まで移動して、ぶらりぶらりと街を歩いてぼんやり過ごす。
昼どきになり、そうだ、万世に行ってみようと旧メトロ食堂街にやってくる。
やっぱり静か。この場所自体がもうなくなってしまったみたいな静かさで「地図にない場所」ってこういうことをいうんでしょうネ。すぐ下のフロアには駅から溢れてきた人たちがたくさん歩いているのに、その人たちの気持ちがこちらに向かってこない。
「店の魅力」で人はくる。けれど一店舗の魅力よりも、「魅力的な店が集まる街」の魅力は数段パワーが上なのでしょう。街をなくしてしまうとさみしいことになっちゃうんだと、日本中で廃れる商店街を見るような気持ちになった。
ランチタイムが本格的にはじまると、近所で働く人たちやおなじみさんが次々店にやってきてちょっとにぎわう。ホッとする。

それにしても店はピカピカ。
遠からぬ将来。
必ず店が終わってしまうのがわかっていながら、お店は隅々までピカピカに磨き上げられ、テーブルの上も整っている。
日々、同じように。
しかも出来得る限りいい状態で。
それを守り続けることがよい飲食店のただ唯一の条件なんだ…、ってしみじみ思う。

いつものように和牛切り落としの鉄板焼を選んでたのむ。
おいしい香りの蒸気が鉄板の上に湧き上がり、ジュージューパチパチ野菜が焼け肉の脂が爆ぜる音がする。切り落としというコトだから肉の形は不揃いでいわゆる端材。けれど肉そのものは上等で程よい脂とガッシリとした噛みごたえのある赤身の肉。おいしい匂いが鼻をくすぐりお腹を鳴らすおゴチソウ。

肉の脂をまとった野菜がまたおいしそう。
玉ねぎ、キャベツ。
細切りにしたピーマン、ニンジン。
もやしがたっぷり。
ところどころに焦げ色がつき、もうそれだけで美味しそう。
胡椒をおろして風味をつける。
芥子醤油で食べるのが好き。
たまり醤油で醤油自体が濃厚な味。そこに芥子がたっぷりまじり嗅ぐと咳き込む。それがよい。
野菜や肉をトプッと浸してご飯の上にのっけてパクリ。
実はここにはカルビ風味のタレも用意されている。けれどここの上等な肉の風味、持ち味を心置きなくたのしむためには甘みや余計な旨味、香りをもたないそっけないほど単純な芥子醤油があっている。
食べるに従って肉の脂がタレに混じって、どんどんコクや風味がついてくるのもたのしい。今日もただただ味わい、たのしむ。

タレをまとった肉や野菜を次々のっけて食べたご飯。タレが染み込みどんどん美味しくなっていく。育ったご飯とでもいいますか。脂の甘みと醤油の辛味、そこに芥子の風味が混じって、ご飯だけでもおゴチソウ。
豚バラ肉に大根、ニンジンと具材たっぷりの豚汁もいい。味噌の風味といりこを感じる力強い出汁。やってきたときには熱々で、しかも豚の脂が表面に膜をはったおかげで熱さが持続するのもいい感じ。
ちなみにここ。メニューはステーキ、ハンバーグにこの鉄板焼。それからとんかつと素材はみんな肉ばかり。「肉洋食」といってもいいかなぁ…。あるいはご飯と豚汁がおいしく箸で食べることを想定してできているから「肉和食」に分類してもいいかもなぁ。わかりやすいから長続きする。こういう店こそ残ってほしい…、って思ったりする。腹いっぱい。

 

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コメント

  1. とんちゃん

    まだ、万世さん空いているのですね
    こんど新宿に行くときまで待っていて欲しいです
    私も鉄板焼が一番好きです
    また豚姫様、牛貴族さんに会えるかな。

    • サカキシンイチロウ

      とんちゃんさん
      万世の箸袋…、本当にかわいらしい。こういう部分にまで神経を使ってお金をかける。いい時代のお店だなぁ…、ってしみじみ思います。

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