尾張屋の天せいろ、家のなんちゃってミートソース

昼ご飯がちょっと控えめ。四谷三丁目に帰ったときにはお腹が空いてた。それでおやつに「尾張屋」による。
お店の前のショーケースをぼんやりながめて何にしようかとちょっと思案する。
いつもは何も考えず、いつもの注文。けれど今日はちょっと違ったものを食べようと、それでぼんやり。蕎麦屋と言えばまず天ぷらそばを相場は決まっていそうなもので、けれどここで天ぷらそばとか、天せいろをたのんだことがなかったよな…、と気持ちが決まってお店に入る。
お店にはいつものおばさん。テーブルにつくと同時に「天せいろそば」って注文を言う。
おばさん、それを聞いてびっくりした表情をするものだから「いつもと違った注文でびっくりした?」って聞いてニッコリ。「大抵かつ丼かカレー南蛮だからびっくりしました」って。今日はそういう気持ちなの…、って言ってズズッとお茶を飲む。

いつも一緒に来ていた人ね。
たまに一人でいらっしゃっててそのときは必ず天せいろを食べていたのよ…、っておばさんが言う。
そうだったんだ。
確かにタナカくんは天ぷらとそば。特に冷たい天せいろが大好きだったからここでも一人で食べていたんだなぁ…。
一緒のときはボクの好みに合わせてくれていたんだとしんみりしちゃった。
「ツルツルツルッって気持ちいいほど上手に蕎麦をすすっていました」って聞いたらなんだか目の前に座っているような気持ちになった。
さてやってきたのはたっぷりの量の蕎麦にたっぷり切り海苔。エビにかぼちゃに茄子にインゲンのてんぷらの盛り合わせ。絵に描いたような天せいろ。

ここは天ぷらがおいしいお店。それも天丼のようにして食べるよりそのまま食べるに値するしっかりとした仕上がりで、カレー南蛮にも海老天のせたりしたくなるほど。特にそのエビの大きく太く立派なことにはいつも惚れ惚れさせられる。
ブチッと歯切れてブルンと食感たくましく、甘くて香りがおいしい一本。
そういえばここで冷たいせいろははじめて。タナカくんの口の中にこの蕎麦、このタレ、この天ぷらがあったんだなぁ…、って思ってズルンとたぐってお腹に収めていった。蕎麦湯をタレに注いでお腹をあっためる。

 

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日曜日に使った伊府麺の賞味期限がそろそろ切れる。
使っておかなきゃと先日、伊府麺はミートソースにも合いそうですね…、ってコメントを頂戴していたのを思い出す。
ちょうど冷凍庫にその日に使い残したしゃぶしゃぶ用の牛肉がある。
それを使ってなんちゃってミートソースを作ってみようと、フライパンでオリーブオイルを温める。
ニンニクを入れて香りがでたら取り出して、そこに牛バラ肉のスライスを凍ったままで放り込む。
トマトを刻んで一緒に入れてステンレス製の泡立て器で肉をタンタン叩き続ける。
凍った肉は壊れやすい。熱をくわえていくと脂がとろけて千切れやすくもなるから肉はどんどん細切れ状態になっていく。
それと一緒にトマトがソースかしていって足りない風味は顆粒ブイヨンで足してやる。
ローリエ一枚。胡椒をたっぷり。クツクツ煮込んで時折泡立て器でトントン叩くと肉とソースが一体化。ミートソースというには少々肉が大ぶり。千切れてしまったビーフストロガノフのような感じになって、それを茹でた伊府麺にのっけて食べる。
思った以上においしくて、なによりソースで煮込んだ千切れた肉がたっぷり空気を含んでふっくら。ふっくらとした麺と相性抜群で、いいなと思った。よくできた。

コメント

  1. 鬼虎

    単に一顧客として、こちらのお店に行かれているんですよね。店員さんを、おばさん呼ばわりして、よいのでしょうか?女性蔑視?私が店員さんなら、あまり良い気持ちはしないかも。私も患者さんの診察がある日にこちらのお店の方に良くして頂いているので気になります。ご自身のお写真を頻繁に載せられていらっしゃるので、ご容姿に自信がおありなのですね。

    • サカキシンイチロウ

      鬼虎さん
      おばさんという言葉は蔑称ではないですよ。
      このお店の方を女性スタッフと呼ぶのはあまりによそよそしく、彼女を呼ぶときにも「おばさん」とボクは呼びます。おばさんと呼ばれた彼女はニコニコしながら、接客をしてくれています。
      落ち着いた年齢の女性のことをおばさんと呼ぶのは昔から当たり前のこと。それを女性蔑視と受け取られることがなにやら特定の年齢の女性に対する女性蔑視のように感じます。
      顔写真を出すのは容姿に自信があるからではなく、ボクをよく知って頂いている方にボクは元気でやっているというご挨拶代わり。それにこんなおじさんがこういうことを考えているんだよと実名性を高めたいから。
      このお店をご利用されるのであればボクと鉢合わせすることもあろうかと思います。写真をみてボクを知っているあなたはボクだとわかるけれど、ボクはあなたのことがわかりません。写真を公開するということを、そういう覚悟をもっているということ。何卒ご理解お願いいたします。

  2. 鬼虎

    よく利用され、仲良くなさっておられるなら、お名前で呼べばいいのに。ちなみに私の信濃町の同僚は食べログユーザーが多いので、貴方様の目撃情報をよく聞きますよ。意外と小柄な方とか。お目にかかったら、ご挨拶させて頂きますね。

    • キョーコ

      おじさんって呼んでも何も言われることはないけど、どうしておばさんはダメなんでしょうねえ?

      お店の方の呼び方って悩みます。
      よく行くお店の方で、顔見知りでも、名札をつけてらっしゃるお店ばかりではないから、お名前で呼ぶわけにもいかないし。

      いろいろ考えた上で使っている言葉を、全ての事情を知ってるわけでもない人からはあれこれ言われてもしまうサカキさんって大変ですねー。

      • サカキシンイチロウ

        キョーコさん
        アメリカ人でもないのに、いきなり名前で呼ぶのって気がひけますもんね(笑)。

    • サカキシンイチロウ

      鬼虎さん
      名前は存じ上げませんし、公の場でそれほど親しい友人でもない人を名前で呼ぶのは失礼と思う性格なもので。ボク自身もそれほど親しくない人から名前で急に呼ばれるとビクッとしてしまう小心者(笑)。
      ブログの世界は一方的な発信のネットワーク。
      Facebookのような実名ベースの場所は双方向のネットワークと使い分けているつもりです。

      みなさん、ボクが体格の立派な大食漢のように思われているようで実際に会われると、思ったよりも小さな方なんですねって驚かれます。
      最近は、パートナーロスで自律神経失調気味で、足を引きずってノロノロ歩いていますので、びっくりされないでくださいね。

  3. ヨウコ

    なんちゃってミートソースの作り方、斬新ですー!
    冷凍肉を叩いて荒めのミンチ状にするなんて。
    伊府麺、早く買いに行きたいと思いつつ、まだ行けてません。チゲ鍋のシメに使ったら、どうでしょうね?

    川口商店さんのちりめんは届きました。
    美味しいですー^_^
    昆布ちりめんは酢の物に入れたり、納豆に混ぜたりしても美味しかったです。

    • サカキシンイチロウ

      ヨウコさん
      昆布ちりめんと納豆の組み合わせ。
      不思議なことに納豆の糸の切れがよくなるでしょう…、旨味も互いを引き立て合うし。
      叩くのが包丁とか棒でなくて、泡立て器というのがコツなんです。ふっくら仕上がって、肉の食感は残ったまま。時間がかかるので、暇なとき限定のレシピです。

      • ヨウコ

        なるほどー!たしかに泡立て器だと、お肉がふんわり仕上がりますよねー。私も時間がある時に試してみます^_^

        大阪で「おねえさん」と知らない人から呼びかけられた時、気恥ずかしいような嬉しいような温かい気持ちになりました。
        標準語って、おっしゃる通り冷たく事務的な言葉ですものね。人によっては、気分を害される方もいるんですねえ。悩ましい。
        でも、コメント欄の皆さんのご意見が大人の感覚で色々参考になりました。

        • サカキシンイチロウ

          ヨウコさん
          「おばさん」のくだりに関しては、たしかに嫌な気持ちになる方もいらっしゃるだろうと反省しています。
          ただ、後半の部分がどうにもこうにも哀しくて、昨日は泣きながらあまり寝ることができませんでした。

  4. KA

    サカキさん
    はじめまして。
    日本語は素敵な呼びかけの言葉がなくて、いつも悩んでいます。
    英語だったら、ma’am, ladyがとても便利。私が今まで言われて一番うれしい気分になったのは、イタリアのスーパーで”Ciao, Bella”(こんにちは、美しい人)と店員さんに言われたときです。

    • サカキシンイチロウ

      KAさん
      大阪の友人が「大阪だったらおねえさんの一言で成人以上の女性はみんな大丈夫」っていっていました。
      関西弁って人間関係をやわらかに包み込むような表現が多い。それに比べて標準語って、どこか冷たくて杓子定規にできているなぁ…、って思いました。
      みのもんたさんなら「お嬢さん」で決まりなんでしょうね。
      はじめまして。うれしいコメント、ありがとうございます。

  5. EIKO ISHIKAWA

    お店の方が教えてくれる知らなかったパートナーの一面なんて、食を大事にしていたお二人ならではのステキなお話で羨ましいデス

    尾張屋さんでカレー南蛮以外を召し上がってる!という驚きと、
    私も今日のランチ天せいろ!という共通のうれしさで既にコメント欄一杯なのに失礼しました~

    • サカキシンイチロウ

      EIKO ISHIKAWAさん
      天せいろをなんで食べる気になったんだろう…。
      日記を書いてても不思議でしょうがないほど、ここではずっとカレー南蛮かかつ丼でした。
      多分、タナカくんが食べたかったんでしょうネ。だとしたら今日の天せいろは2人で食べていたんだなぁ…、と思って今頃になってほのぼのしてきました。

  6. RYO

    伊府麺、わが家では残りの1食分を冷凍保存してみました。元々コシはないので問題なく美味しく頂けました♡

    字面で読むのと、実際に声に出すのとでは同じ言葉でも印象は変わりますよね。会話は眼差しや声のトーンもセットですから。
    お店の方との会話を拝読していると、サカキさんとの間には信頼関係があるので、悪い印象は持たれないのではないかなぁ、と感じました。人によって「この言葉は生理的に嫌」という方もいらっしゃるかもしれませんが、サカキさんはそのあたり繊細な配慮をなさっていると推察します。

    この界隈に住んで20年になりますが、尾張屋さんは未訪。チャレンジしてみます!

    • サカキシンイチロウ

      RYOさん
      ボクも柳町、市ヶ谷、四谷三丁目とこの界隈にもう30年近くも住んでいて、尾張屋デビューは10年ほど前のことでした。
      もっと早くデビューしておけばよかったと思うと同時に、この歳でデビューできたことが良かったのかもしれないなぁ…、とも思いました。
      お店の出会いも、人との出会いも、神様が準備してくれたタイミングというのがあるのかもしれないなぁって思いもしました。
      もしかしたらそろそろ尾張屋さんに呼ばれているのかもしれませんネ。

    • サカキシンイチロウ

      RYOさん
      ボクも牛込柳町をふりだしに市ヶ谷、そして四谷三丁目と気づけば20年以上この界隈ばかりを選んで住んでいました。
      だから尾張屋さんをずっと見ていたのですけれど、なかなか気持ちが向かわず、勇気を出して伺ったのが10年ほど前。
      もっと早く来ていればよかったという気持ちと、この歳になったからここの良さがわかるようになったんだと思う気持ちが半分半分。
      これからも長いお付き合いになるんだろうなぁ…、と思っています。

  7. 愛住町のおばちゃん

    初めまして。
    サカキさんのご投稿、いつもとても楽しみにしています。

    呼び名って難しいですね。
    でも、自分が年齢を重ねてからは、おばちゃんという言葉の、意外な優しさや丸さを感じるようにもなりました。

    いきなり体型を話題に持ち出す方が、ギョッとしてざらりとした感覚を覚えますけど、それも含めて人それぞれですね。

    タナカさんが旅立たれてからの記事は、血を流されながら書いていらっしゃるのではないかと思うことがあります。
    でも、どんな時も食べる楽しみと、作る人やお店への温かなお気持ちに縁取られていて。

    それまで何十回と通り過ぎていた尾張屋で、カレー南蛮そばを食べるようになりました。白河そばも大好きになりました。

    • サカキシンイチロウ

      愛住町のおばちゃんさん
      四谷三丁目って東京の都心にあって小さなちょっと田舎っぽい街。
      小さいのですよね。
      名前も知らぬ、でもいつも街で見かけるだけのなじみの顔がいくつもあっていつしかすれ違うときに自然と会釈をする間柄になれる街。
      いい街だなぁ…、と思っていたのですけれど見知らぬ人からいつも見てるよ的な投稿をもらうと、ここに住み続けてもこの街で食事したり買い物したりすることがおそろしくなったりします。
      むつかしいものですね。
      いっそもっとにぎやかで街に完全に埋没できる街に引っ越してやろうか…、なんてときに思うことがありますが、この街そのものがタナカくんのようで離れるわけにもいかず特に今、住んでいる部屋を離れると彼が帰ってくる場所をなくしてしまうような気もする。
      のんびりとのんびりと。
      静かに過ごしていこうと思います。

      はじめまして。ありがとうございます。愛住町のおじちゃんをこれからもよろしくお願いいたします。

  8. kiko

    ブログの写真を拡大して眺めていると楽しい気づきがあるので楽しんでます。
    普通に見たらただのメニューの写真も拡大すると魅惑的な「あさりバター」を発見したり、年季の入った美しい茶のテーブルとブルーのコントラストが素敵だったり。
    天ぷらの写真は・・まるで実物が目の前にあるよようで手を伸ばしちゃいそうです。
    女性の後ろ姿の写真からはあふれるようなサカキさんの温かい気持ちが感じられます。

    • サカキシンイチロウ

      kikoさん
      あさりバターのきしめんは和食ばなれしたまるでイタリア料理の一品の如き独創的な味わいでした。
      ちょっと贅沢な大きなカメラで撮っています。だから隠し撮りができないので、お店の方には理解していただき写真を撮らせて頂いています。
      その甲斐あって拡大してもキレイに写っていると思います。腕より機材(笑)。褒めていただくとくすぐったくなっちゃいます。

  9. すうさん

    天せいろはメニューでいうと天ざるですか?
    カラりと揚がっていて美味しそうですね!(^^)!

    • サカキシンイチロウ

      すうさんさん
      そうです。天ざるです。海苔がたっぷりのってますものね。
      ここの天ぷらの衣のザクッとしたところ。大好きなんです。

  10. 食いしん坊

    サカキさん、こんばんわ。食いしん坊です。尾張屋さんのお蕎麦美味しそうです。体調少しずつ良くなってきているようで安心しました。来月は新宿御苑でお花見後のサカキさんがどちらのお店で食べられるのか、楽しみにしております。

    • サカキシンイチロウ

      食いしん坊さん
      新宿御苑の桜。今年は早咲きなのか、遅咲きなのか。
      去年は結局、満開の桜を見ることなく哀しみにふけってしまいましたもので、今年は一層、桜が咲くのがたのしみです。

  11. はるけん

    サカキさん、こんにちは。
    ご自身の写真を載せるのは覚悟がいりますよね。私はその覚悟をうれしく思います。というのは、日本に帰って、ここで紹介されたお店に子供と行ったときに、偶然サカキさんをお見かけするかもしれないと楽しみにしているからです。そして、子供たちに英語または静かな日本語で、このお店に来れたのは、あのサカキさんのお陰なのよといい、サカキさんに声をかけてお礼を申し上げようか迷うというところまで、シナリオはできています。サカキさんの写真がなければ、その可能性はないですからね。よく寝て、ご自愛ください。

    • サカキシンイチロウ

      はるけんさん
      先々のことを考えず勢いでいろんなことをしてしまう性格で、顔写真も料理の写真も、空を流れる雲の写真も同じ写真じゃないかって感じで載せちゃってます。
      それに伴う面倒なコトは、起こった都度対処すればいいやって感じで。
      お目にかかりたいですネ。
      日本のステキなところをお目にかかって一緒におしゃべりしたいですネ。

  12. チキタン

    サカキさん
    尾張屋さん、いつかタイミング合えば行こうと思ってます
    だってこんな美味しそうな文章読んでたら 笑
    田中くんはとても思いやりのある優しいかただったんですね
    でもたまには僕の好きな物食べてよ
    って囁いてたのかも
    そう考えると可愛らしいなって思います
    そして毎回丁寧にお返事くださってありがとうございます
    もらい事故は気にされないで下さい

    • サカキシンイチロウ

      チキタンさん
      この日はそう思ってほのぼのしてました。
      そのほのぼのがすっかりすっ飛んでしまいましたけれど、それもタナカくんのぼやぼやしてないで一人でがんばるんだよ…、って言ってくれているんだって考えることにしました。
      あたたかいコメント、ありがとうございます。

  13. batten

    少しハラスメントに使い部分もあるかもしれませんが、何時もの店でなじみなら、おばさん、ねえさん、おっちゃん、オジサンでも構わないかなぁと思います。
    住んでる京成立石のモツ焼き屋では、私の事はオレと店員さんから呼ばれますが、それはそれで好きです。
    また、容姿スタイルは言いませんし言われたくない。メタボですから気にしちゃいます。
    いきつけの店での店員さんと客の深さの問題ですね。

    もしかしたら、田中さんは天婦羅でビールを楽しんでたのかな?と想像しました。

    • サカキシンイチロウ

      battenさん
      もう「おばさん議論」はご勘弁ください。あのコメントを読んだ瞬間のショック状態が思い出されてしまうので、終わりにいていただきたいと思います。
      これからおばさんと口で言っても文字にしないことにしました。
      天ぷらでビール。大人のたしなみ。それに比べてボクはおこちゃまです(笑)。

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