姫膳の鰻重だけを「殿」にしてみる、上野の伊豆栄

今年お初の鰻を食べる。上野界隈をぶらぶら散歩。お腹をすかせて不忍池のほとりにある「伊豆栄」に来る。
立派なビルです。一棟まるごと伊豆栄でこの地でずっと繁盛し続けた証を感じる。
今のような時代にあって、自前の土地の自前の建物。地域に根ざした専門店として営業しているってことのシアワセをしみじみ思う。
和服を粋に着こなす仲居さんたちの、キビキビしているんだけどたおやかで優雅な仕草にウットリします。
鰻だけでなく日本料理も多彩に揃う、かつては上野の旦那衆の会食や宴会なんかに重宝されたお店です。日本料理と鰻のセット。「姫膳」というのがここでのオキニイリ。円形の漆のお重の二段重ねでやってくる。一段目には季節の料理がぎっしり詰められ二段目にはうな重という料理なんだけど、そのうな重は量が控えめ。それでうな重だけを上うな重に変更をして作ってもらう。

丸いお重と四角いお重が仲良く並んで到着します。漬物の盛り合わせと吸い物がつきひと揃え。蓋を開ける前から鰻の蒲焼きの香ばしい香りがしてくる。さて、蓋をとる。
丸い器の中にはぎっしり、料理の数々。フキの煮物に炊いた飛龍頭。焼いた鮭のハラスにかまぼこ、甘い卵焼き。紅色に染められた酢蓮、尾頭付きのエビに、味噌を揚げた大葉で巻いたしそ巻き。椎茸、たけのこ、かぼちゃにししとう、麩の煮物。笹で巻かれた生麩の中には白味噌餡と多彩な味わい。
これに白いご飯で十分贅沢なゴチソウになる。けれどそれらのお供がうな重という、なんとシアワセでありがたいこと。

さてメインのうな重。
ご飯の上をほぼ完璧に覆っているのがまず贅沢。
タレの焦げ目がうつくしく、脂ががツヤツヤ輝いている。
何より匂いの香ばしいこと。
箸を垂直に入れて一口大に切り取るとススっとキレイに持ち上がる。
ご飯の盛り付け方がいいのでしょうネ…、固まらぬ程度にほどよく押して盛り付け、だから箸の上ではくっつきあって口に入った途端にほぐれて散らかる。むっちりとした鰻の食感をホロホロほぐれてちらかるご飯が一層おいしくしてくれる。
蒸して焼き上げたお江戸の蒲焼き。ただ蒸し加減は浅めでだからざっくりとした歯ざわりがよく、脂もジュワリと染み出してくる。タレはすっきりとした醤油の風味が際立つ味わい。ザバザバかけてハフハフ食べる。

鰻の蒲焼きとご飯をバランス良く食べられればいいのだけれど、どうしても蒲焼きを多めに食べてしまうところが悪いクセ。ご飯が残る。だし巻き卵や煮た椎茸、しそ巻きなんかをのっけてお重の中をにぎやかにする。
それにしてもしそ巻き。宮城や山形の名産品で、甘いのだったりしょっぱいのだったり、作るところで味が違って自分好みを見つけるたのしみがある。ここのはちょっとしょっぱ目でご飯のおかずにちょうどよい。東北の出入り口の役目を果たす上野の街らしいおもてなしだなぁ…、と思ったりする。
こわめに炊けたご飯がボクの好みでもありハフハフモグモグ、あっという間に器は空っぽ。鰻がおいしいだけじゃない店、元気も出ました、オキニイリ。

 

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コメント

  1. Leocco

    丸いお重の、一つ一つが綺麗でおいしそう!
    うなぎも艶々、ヨダレが….🤤

    いま帰国する飛行機に乗るところです。
    二週間の自宅待機が終わったら、食べに行こうかな

    • サカキシンイチロウ

      Leoccoさん
      鰻だけじゃないこういうお店ってあるようであまりなくって、このお店は重宝します。
      窓際の席からは通り越しではありますが不忍池が一望できて、日本情緒にしたることもできますよ。

  2. かよこ

    伊豆栄さん!!両親の知り合いが贔屓にしていて子供の頃…30年以上前ですが、立派なビルに行ったことを覚えています。牛肉と胡瓜のポン酢味のサラダがとても美味しく、母は家でそれをよく再現してくれました。
    本当に素晴らしいお店ですね。

    • サカキシンイチロウ

      かよこさん
      この時期にものびのびとした雰囲気で、なにより仲居さんたちのやさしい客あしらいにホッとすることができます。
      ありがたいですよね。

  3. ボルテイモアのおかず

    え~お笑いを一席申し上げます。
    朝起きてきたマイケル(夫)にブログのお写真を見せました。中程から初めはうな重のを「ワオ!」、次は丸いお重「キレイ!」、上に行って丸いお重と四角いお重が蓋をして並んでいるのを「ワビサビ!」—??!
    何でこれが侘び寂びなの?と聞いたら「茶色だから(これは英語で)」。
    オイオイ、君の日本文化の理解は間違っていないか—(泣)。

    • サカキシンイチロウ

      ボルテイモアのおかずさん
      今の日本の若い人たちにとってのワビサビも、マイケルさんと同じじゃないかと思って笑いました。
      日本文化は日々更新されている…、と思いましょう(笑)。

  4. よおぜふ

    姫膳!!
    次回の東京散策の予定に入れましょう!
    心地よいお店であれもこれもとは贅沢この上ありませんものね。
    またブックマーク店が増えていきます。
    どうか、素敵なお店達がこれからも輝き続けますように。
    そしてサカキさん、お身体お大事にしてください。(野菜食べてくださーい。アマニ油などいかがでしょう?)
    今年もよろしくお願いいたします。

    • サカキシンイチロウ

      よおぜふさん
      家ではほとんど野菜の食事になりました。
      炭水化物はどうしてもとっちゃうので、その分、オリーブオイルと散歩でなんとかしようと目論んでいます。
      今年もよろしくお願いします。

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