天丼よりしじみ汁。知る人ぞ汁を売り物にする。

うちの近所にちょっとユニークな天ぷら屋がある。
「天春」っていうお店。古いビルの薬局の上というパッとしない場所なんだけど、結構、昔からあってずっと安定して流行ってる。特に昼には待ちがでることもあって、今日もほとんど満席だった。
カウンターに10席ほど。テーブルが4つほどあって、カウンターの中が揚げ場で並びの奥に厨房がある。
ご主人が揚げ場にたって天ぷら揚げる。揚げるだけじゃなくエビやイカ、野菜なんかの天ぷらネタをずっと仕込んでキビキビ働く。手を動かすことが好きな人がやってるお店って、いいなと思う。
昼は天丼が中心で、ランチ天丼が1250円。ほどよい値段でそれをたのむ人がほとんでしょう。ただこの天丼には普通の味噌汁と漬物、デザートの果物がつく。ただ半分以上の人が700円追加して「知る人ぞ汁」にアップグレードしているみたい。

「知る人ぞ汁」っていうのはここの名物、しじみ汁。
しじみがたっぷりはいった味噌汁なのだけれどしじみの量が圧倒的。はじめて食べたときには、冗談じゃないのか…、って思わず笑ってしまったほど。
大きなお椀に山盛りで、小さな木製のボウルが貝殻用にやってきて、どうぞ、身までしっかりせせって食べてくださいと圧が自然とかかってくる。天丼が出来上がるまで一個、一個、身をはずしペチンペチンと殻を捨てつつ食べていく。汁は熱々。指を焼きつつ殻を外して、汁を飲んだら舌を焼く。でもしじみの出汁がしっかりきいておいしいことったらありゃしない。

天丼がくる。ランチ天丼。
この天丼がまた潔く、野菜なんか揚げないのです。
エビに穴子にイカのかき揚げと魚介がネタの天ぷらだけが並んでる。
こなれた値段の天丼だから、天ぷらの種類や数は当然少なく、ならば野菜なんかより魚介類だけを使った方がお客様も喜ぶだろうって考え。
わかりやすくてボクは好き。
しかも原価をかけないで、ちょっとでも贅沢を味わってもらおうという工夫もしてる。
例えばエビの天ぷらは、小ぶりのエビを2尾並べ、衣でくっつけ一緒に揚げた筏揚げ。小さく細いエビが、太くて立派なエビのようにふるまって、口を満たす感じがうれしい。穴子の天ぷらは江戸前天ぷらの花形だから、厚くて太い穴子を半尾。角切りにしたイカがゴツゴツクニュクニュと、食感たのしく顎を使って食べるとお腹を満たす感じが味わえる。

ご飯がカチッと硬めに炊けてて、スッキリとしたタレもおいしい。
天丼を食べつつしじみ汁をひたすら食べる。一個一個食べるのでなく殻を外して最後にまとめて食べてやろうと、ただただひたすら。
殻が少なくなってくると汁に沈んでわからなくなる。だからお箸で底を探って殻が立てる音を聞き聞き。天ぷら職人が耳を使って揚げ具合を判断するように、耳を使って貝探す。
圧倒的な分量の殻。まるで貝塚みたいにつもり、お椀の中には貝の身たっぷり。それにしても砂がひとつも混じっておらず、殻がどれ一つとして壊れていないというのにいつも感心させられる。〆のフルーツはパイナップル。フレッシュのパイナップルをみると酸っぱいんじゃないかって、まだフレッシュパイナップルが珍しかった昔を思い身構える。今日の甘くてホッとした。

 

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